供養にもさまざまな方法が

 ペットを大切な家族の一員として位置づけるようになった昨今では、人間同様の供養方法や、在りし日を偲(しの)ぶサービスが増えてきているそう。宗派にとらわれた堅苦しい決まりはないというから、自分たちなりの納得した方法で思い出を温められるというメリットが。そんな最新事情をご紹介します。

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 たくさんの愛情を注いで、一緒に暮らしてきたペット。しかし、いつの日か必ず別れが訪れます。

 悲しいけれど、旅立ったあの子を、心を込めて送り出してあげるのが、飼い主さんができる最後の親心です。

 かつては、ペットが死ぬと家の庭や近くの山に埋める家庭もありましたが、最近はペットをきちんとした形で供養してあげる風潮が高まっています。

 しかし、「ペット供養って何?」「死んでしまったら、何からしてあげればいいの?」という人も多いはず。

「明確な決まりはありません。ですが、いろんな情報を知れば、自分なりの納得のいく方法をしてあげることができるともいえます」と語るのは、最近のペットとのお別れ事情に詳しい『キャットシッターmedel(メデル)』 代表の今村かなえさんです。

人間の場合は、法要や納骨など、宗派によって供養の細かな決まりごとがありますが、ペット供養はそういったルールがないので、飼い主さんの納得いく形で送り出すことができます

 一般的には、ペットの死亡を確認した後、適当な大きさの箱にタオルやシーツを敷いて、その上に遺体を納めます。その際、遺体が傷まないよう、保冷剤を入れること。

「保冷剤がなければドライアイスなどで代用しても大丈夫です。そして、しかるべき施設に行き、火葬します」

納骨をしないで自宅供養もあり

 その後、ペット霊園に納骨する場合もありますが、「納骨しないという選択肢もある」と、今村さんは言います。

ペットのお骨をどうするかは、飼い主さんによって異なりますが、手元に残しておく手元供養を選ばれる方が多いです。人とペットという関係性上、手元に置いておく、そばにいてほしいという感情が強いのだと思います。それを、ペンダントにしたりジュエリーにしたり、お家の中に祭壇を作る方もいます。飼い主さんとペットが同じお墓に入ることは、現状ではなかなか難しいのですが、ペットのお骨を手元に置いておいて、『いつか一緒に入れる日を待つ』という方もいますね

 ペットが死んでしまった直後は、悲しみとつらさで冷静な判断ができない飼い主さんがとても多いそう。なので、「どうやって供養するかを落ち着いた状態で決めてほしい。また、ペットが元気なうちから『その日』が来ることを、ネガティブにではなく前向きにどこかで考えていてほしい」と、今村さんはアドバイスします。

 しかし時間がある程度、経過しても一向に悲しみから抜け出せず、ペットロスに陥る人も少なくありません。

毎日、朝起きると同時に涙が流れるんです。それが数週間続きました」と語るのは、漫画家のかなつ久美先生。自らをイヌバカと自称するほどの愛犬家であるかなつ先生もペットロスに苦しんだ経験を持ちます。ポメラニアンのりんごちゃんが2016年、突如、旅立ちました。その日から、かなつ先生のつらい日々が始まります。

「りんごちゃんはわが子同然の存在でした。いつもそばにいてくれた子がいないという現実が毎朝襲ってくるんです。街で同じ犬種のわんちゃんを見るのもつらかったです」

 ペットロスは一時的に終わることもあれば、何年も苦しみ続ける人もいます。ペットロスが原因で、精神的に弱り、自ら命を絶ってしまう人も現実にいるのです。

 しかし必ず乗り越えられると、かなつ先生は言います。

「私が当時、実際にやったことは思い切り泣くことです。毎日声をあげて泣きました。我慢せずに泣きまくることで、苦しみが和らいでいきます」

仲間たちからの情報に救われる

いつか必ずくるペットとの別れ。なくなった子にしてあげられることは、どんなことがあるのでしょう?(写真はイメージ)

 また、つらい時期は周りの人に頼ることも大事だと、かなつ先生。

「祭壇作りやお悔やみの仕方には、同じくペットを亡くすという経験をしている犬友たちがたくさんアドバイスをくれました。りんごちゃんへのお花や、お悔やみのグッズでいっぱいになった部屋を見て、あの子はこんなに愛されていたんだと実感し、同時に誇らしい気持ちにもなりました」

 やがて、かなつ先生の気持ちにも変化が。

「私が毎日泣いている姿を見たら、誰よりも悲しむのはりんごちゃんだと気がついたんです。愛されたペットは、飼い主の幸せを誰よりも望んでいます。そう思うようになってから、少しずつ立ち直っていくことができました」

 以来、かなつ先生は保護犬を引き取って育てる活動を続けています。ペットロスを解消するには、次の子を迎えるというのもひとつの選択肢だといいます。

「保護犬を引き取ることで、自分の癒しにもつながっていると感じています。旅立ったあと後悔しないように、今ある命を全力で可愛がってあげれば、ペットロスの予防になるのではないでしょうか」

 かなつ先生のように、ペットを手厚く供養してあげることも、ペットロス解消の糸口になります。ペット仏具を扱う『ディアペット』では、仏壇や棺、ユニークなロウソクなどペット専用の仏具が豊富に取りそろえられています。

「ペット専用といっても、サイズがコンパクトなだけで、良質な素材で作られた本格的な仏具です。安心して供養していただくことができます」

 こう語るのは店長の関口真季子さん。仏具の数はなんと1000種類以上。なので「うちの子のイメージにぴったり」と思える仏具がきっと見つかるはずだと言います。

「可愛いペットには、可愛いもので供養してあげたいという飼い主さんが、非常に多いんです。なので当店では、もこもこの生地で作った骨袋や、猫ちゃんの大好きな黒缶そっくりのキャンドルなど、思わず“可愛い!”と言ってもらえるような仏具が充実しています」

 来店するお客さまの中には、堪えきれず涙を流す人もいるそう。でもご安心あれ。お店のスタッフは全員ペット飼育経験orペットロス経験者。悲しい気持ちも、恥ずかしがらず相談してほしいと関口さん。

 旅立ったペットたちは、虹の橋のたもとで元気に遊んでいると言われています。大好きなあの子が安心して遊べるよう、心を込めた供養で送ってあげましょう。

供養は、四十九日がひとつの目安に

『ディアペット』を訪れるタイミングは人それぞれだといいますが、その多くは四十九日の前に来ているそうです。

「ペットの場合、約8割の方がお骨を手元に残す手元供養を選ばれます。お仏壇を用意して、四十九日のときにお骨を納める方が多いですね」(関口さん)

 死後、数年たってから改めて供養したいと訪れる飼い主さんも。

「ペット供養は、いつどんなタイミングでしていただいてもかまわないと思います。心の整理ができたときに、飼い主さんが最もよいと思える形で送ってあげてほしいです」(関口さん)

■ディアペット
ペット仏壇・仏具の専門店。東京・大阪など全国に4店舗を構え、ネットショップも展開。今回取材したのは青山店。東京都港区南青山3-8-9 http://pet-inori.com/

<プロフィール>

今村かなえさん◎キャットシッターmedel(メデル) 代表。愛玩動物飼養管理士1級。豊富な経験と細部まで心のこもったシッティングで多くの顧客が信頼を寄せている。
キャットシッターmedel http://catsitter-medel.jp/

かなつ久美先生◎漫画家。神奈川県出身。代表作はドラマ化もされた『ОLヴィジュアル系』。美容漫画家、犬好き漫画家としても知られる。著書多数。

【取材・文/中村未来(清談社)】