オレオレ詐欺に騙されないためには

 俳優の鈴木亮平主演のNHK大河ドラマ『西郷どん』。1月7日の初回が放送されると、NHKには「方言がわかりにくかった」という声が数多く届いたという。

 ネット上でも、“薩摩ことば”の聞き取りにくさを指摘する書き込みが続々。正月のクイズ番組では、鹿児島県で振り込め詐欺の被害が少ない理由として、方言が難しく本人になりすませないから、という回答が紹介された。

「ないごっじょ?(どうしたの?)」といった難解な方言もあるが、鹿児島県警生活安全企画課の担当者は、

コテコテの方言を使うのはご年配の方です。他の地域とちょっと語尾が違ったりする方言もあるので、聞き取りにくいようなこともありますね。若い方が使うのは少ないので、逆に若い人に方言を教えましょう、という取り組みも、地元ではあるようですけどね

 と鹿児島弁の難しさを語る。

 ニュースサイト『しらべぇ』が調査した『方言が難しい都道府県ランキング』を見ると、鹿児島は全国で第6位にランクインしている。それほど、難しさが知られているのだ。

 方言の難しさに加え、振り込め詐欺に騙されないための全国的な取り組み『合言葉作戦』も実施している。

「親子間で取り決めをして、合言葉を決めて本人かどうかを見極めるものです。標準語の人と話すときは方言が飛び交うことはないかもしれないですが、家族であれば方言で会話をする。ならば合言葉自体を方言にしてみてはどうかということですね」

 と、前出の県警担当者が言葉によって本人かどうか見極めるための取り組みを明かす。

 先ほどの『方言が難しい都道府県ランキング』で、堂々の1位に輝いたのは青森県だ。

どんだば!(びっくりした!)」と言われても、聞きなれない人にはピンとこないが、青森県警生活安全企画課の担当者は、

「方言での対策は、当県では取っておりません」

 とのこと。それでも、振り込め詐欺対策専用電話の設置は効果を発揮していると、同県警はみている。

「2016年の10月から運用しています。電話がかかってきたときに、呼び出し音が鳴る前に“この電話の内容は録音されます”という案内が相手に流れます。それで切ってくれればよしですね。

 大変だぁ〜ボタンというものもついていて、通話中に怪しいと感じたときに押せば、登録先に“緊急事態発生”という音声を流せます。4件まで登録できて、近所の人を登録しておけば、直接、家に駆けつけてくれたりしますよね」(青森県警担当者)

 情報サイト『ALL About』の防犯ガイドで、安全生活アドバイザーを務める佐伯幸子さんは、

「方言も有効だと思いますが、そもそも電話に出なければ、被害に遭わずにすむんです」

 と、狙われる高齢者に自覚を促す。

「ご高齢の方は、電話がかかってくるとうれしいんですよ。ただし、電話機は被害の入り口です。常時、留守電にして相手を確認してから出る。または“迷惑電話フィルタ”“迷惑電話防止機能つき電話機”を設置すれば、不審な番号からの電話は呼び出し音すら鳴らないので安心です」

被害額は'14年にナント560億円を記録!

 警察庁のデータによれば、特殊詐欺(不特定の相手に電話やFAX、メールを使って行う詐欺。振り込め詐欺と振り込め類似詐欺に分かれる)の被害件数は、'08年が約2万件と最も多く、被害額は'14年が約560億円と最も多い。

「これは特殊詐欺の手口と密接に関係しておりまして」

 と、警察庁特殊詐欺対策室の担当者が明かす。

「'14年は1件当たりの被害単価が高かった。宅配業者を利用して送金させる送付型が多かったことが原因だと考えています。金融機関の振り込みでは振込金額の上限がありますが、宅配便で送る場合、制限はなく高額な被害が発生する可能性は高い」

 その後、宅配業者、コンビニエンスストア、郵便局と協力態勢を敷いた結果、送付型の詐欺は減少したという。

 とはいえ敵は、手を替え品を替えの詐欺集団。コンビニでプリペイドカードを購入させ、そのIDを教えるように要求したり、キャッシュカードから個人情報が漏れていると騙し、暗証番号を聞き出してカードを奪う手口もある。

警察庁の発表をもとに『週刊女性』作成。未遂の振り込め詐欺も含まれる

 警察庁の調べによれば、'16年の特殊詐欺被害者の78・2%は65歳以上の高齢者。

仕事から遠ざかり、家にいることが多く会話が少ない人にとって、詐欺の電話内容は非日常の世界。パニックになってのまれたら負け。詐欺は弱肉強食の構図です。お金を奪う人がいて、自分は奪われる側だから詐欺電話がかかってくるのだと自覚してほしい。受話器を取る前に警戒できれば被害を寄せつけません

 と前出・佐伯さん。

 振り込め詐欺認知件数が全国一少ないのは宮崎県。鹿児島県の隣接県だが、防犯と方言は関係ないという。

「標準語の電話であれば、本人ではないと見破ることもありますが、絶対的な阻止になるとは思わない」(宮崎県警生活安全企画課の担当者)

 と、多方面で協力を取りつけ被害を未然に防ぐ抑止政策を展開しているという。

金融機関で高齢者が高額の金額を引き出した際は警察に連絡が来る仕組みになっています。宅配業者とも協定を結びました」(同担当者)

 方言が詐欺撲滅に役立つ場合もある。しかしすべての特殊詐欺が防げるわけではない。

 騙されないためには、普段から警察の注意喚起やニュースが伝える詐欺の手口を注視することが有効だ。