寺岡呼人 撮影/佐藤靖彦

 JUN SKY WALKER(S)がデビュー30周年を迎える今年、ベースの寺岡呼人(50)はソロアーティストとしてデビュー25周年を迎える。肩書は、それだけではない。ゆずやK、藤木直人、八代亜紀などを手がけるプロデューサーであり、ミスターチルドレンらに楽曲も提供。まさに音楽シーンを自由自在に泳ぎ続けている。

ジュンスカ内ではいちばん意見を言わない存在だった

 ジュンスカの最新カバーアルバム『BADAS(S)』の選曲時、若い世代の曲も入れるべきだと提案したのが寺岡だったそう。

「もちろん、自分たちが通ってきた世代のものだけでも十分可能というか、意味があるんだろうけれど、世代を越えたもっと下のアーティストの曲もやったほうがいいんじゃないかと思ったんです。どうせやるなら、そのほうが面白いかなと。案が“通らない前提”で新しいものをあげました。結果、採用されたので、言ってみるもんだなぁと(笑)

 いまでこそ、名プロデューサーとして数々の作品を世に生み出しているが、ジュンスカ脱退後、プロデュースを手がけるようになる前から積極的にアイデアを出すほうだったんだろうか。

「いや、まったく。全然です。ジュンスカ内の順列を階級制度にたとえると、いちばん下の層にいたので。というのは冗談ですけど(笑)。いちばん、意見を言わない、言えないくらいの存在でした。というのは、もともと彼らは弟の学校の先輩。広島から上京して、金魚の糞みたいにメンバーについて回っていたのが僕。それでメンバーになれたんです」

 いっぽうで、ジュンスカのオフ期間中に、当時、プライベートでもよく釣りをして遊んでいたという、ユニコーンの奥田民生とライブユニット“寺田”を組んだり、デビュー前の桜井和寿(ミスターチルドレン)も参加していた『寺岡呼人&ヒズフレンズ~かわいい子には旅をさせろツアー~』を行うなど、早い段階から音楽仲間とのコラボレーションを楽しんでいた。

友達になったら一緒になにかやりたい

好奇心が強いんですよね。せっかくだったらやろうよという感覚が子どものころからあって。誰かと友達になるだけではちょっと寂しいというか。フィーリングさえ合えば、なにか一緒にやったら楽しいかも! と思うことが常だったんです。そうやって出会えたのが、ジュンスカだったり、ユニコーンの(奥田)民生くんだったり、桜井だったり。案外、計算しない縁のほうが、長く付き合える気がしますね」

 昨年話題となったお笑い芸人はなわの『お義父さん』も寺岡がプロデュースをしている。誕生のきっかけは、10年来の友人であるはなわから、奥さんにサプライズで歌をプレゼントしたいと相談されたことから。

彼に会って、話を聞いているうちに、奥さんが、1度も会ったことのないお義父さんの曲がいいんじゃないかと思えてきて。そんな曲、今までの日本にないよねって話したんです

寺岡呼人 撮影/佐藤靖彦

 寺岡のプロデューサーとしてのスタイルは、アーティストとコミュニケーションをとる中で、その人をいちばん輝かせることができる表現を探していくというもの。はなわの『お義父さん』、植村花菜の『トイレの神様』という大ヒットソングがまさに、その例だ。

 今年、ジュンスカ30周年、ソロ活動25周年に加え、さらに自身も五十路を迎えた。

「幸せなことですよね。この間も、シンガー・ソングライターのKANさんと、あとどれくらいできるか全然想像できないから、今のうちやりたいことをやっておかないと後悔をするよねって話になって。もちろん20歳のころのように“なんとかなる”という気楽さはないので、ひとつひとつを楽しみながら、“まだまだいけるでしょ!”っていうトライアルを続けていきたいなと思います。

 もう僕らの年齢だと、いいものができたら……なんて考えていたら、永遠に出せないと思うんで、とにかく作ることだなと。常に“青臭さ”を意識していきたいですね。僕、やんちゃでいたいんです

これからの時代はフィーチャリング落語

 そんななかで、1年半ぶりにソロ・アルバム『LOVE=UNLIMITED』が発売された。

1年6か月ぶりのソロニューアルバム『LOVE=UNLIMITED』発売中(3000円+税)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

僕、ロックって、その年代のリアルを伝えることがじゃないかと思うんですね。ティーンエイジャーのころに、学校でのことや、恋を歌う曲に共感したときと同じように、50歳や60歳でも、現実と闘ってるんだな、悩んでいるんだな。ということを伝えるのが大事だと思う。『LOVE=UNLIMITED』は、いまの僕の世代や、その下の人たちにも共感してもらえる曲に仕上がっていると思いますよ」

 新たな縁が生みだした曲もある。「フィーチャリングがラップの時代はもう終わりました!(笑)。僕、カフェで行う落語会をプロデュースしているんですが、それがきっかけで(春風亭)一之輔さんと知り合って。『仕舞支度』は五十路を過ぎて“終活”を意識する男の歌ですが、落語と出あわなければ生まれなかった曲。ぜひ聴いていただきたいですね

■取材後記
今年、30周年、25周年、50歳と3つの節目のタイミングを迎えた寺岡。本人曰く「人見知りで」を感じさせないトークからは、彼の音楽に“仲間”が欠かせないことが伝わってきた。

<プロフィール>
寺岡呼人◎1968年生まれ。JUN SKY WALKER(S)のベース担当。ソロミュージシャン、プロデューサーとしても活躍。再結成後のアルバム『LOST&FOUND』『FLAGSHIP』は寺岡がプロデュースを担当。幅広い人脈と、視野でバンドを支えている。ソロニューアルバム『LOVE=UNLIMITED』発売中。ソロツアー『寺岡呼人ツアー 50歳/50祭 プレミアム』が3月24日からスタート! 詳細は公式サイト http://www.yohito.com/

(取材・文/杉本真理)