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 婚活ブームの火つけ役、少子化ジャーナリスト・作家の白河桃子さんは、イマドキの結婚したい男女について「需要と供給のバランスが悪すぎる」と警鐘を鳴らす。

非現実的な“優良物件”を求めがち

 明治安田生活福祉研究所の調査によると、結婚相手に求める年収として、未婚女性の約5割が500万円以上、約3割が600万円以上を望んでいるという。

「ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で星野源さんが演じた、平匡さんのような男性に憧れるのはわかりますが、“年収600万円以上の30代未婚男性”に該当する彼は、20~30代男性のうち、11・8%しかいないということが明らかになっています。なのに、多くの女性が“優良物件”を求めてしまう

 では、より現実的な400万円まで下げると?

「30代未婚男性では約37%ですが、20代では約15%にすぎない。今の時代は妻を養える、または養う気のある男性の数が少なすぎるのです。

 加えて未婚女性の9割が、子育てをすることで仕事ができなくなってしまうのではないか、と仕事と子育ての両立に不安を覚えています。不安を解消してくれる男性を求めるのは当然。結婚が生存戦略である以上、そのギャップは埋まらないでしょう」

 同研究所の「結婚をコストパフォーマンスで考えたことがあるか?」というアンケートに対し、20~40代の未婚男性の38%、女性では45%が「考えたことがある」と回答しているように、損得勘定と結婚は切っても切れない関係。

男性が家計を支える大黒柱型の結婚は崩壊しています。子育てをしながら女性が共働きという選択をした場合ですら、パートで100万円程度しか稼げない人が多い現実がある。

 育児、家事に加え、仕事まで背負うとなると、あまりに女性の負荷が大きすぎますし、女性が専業主婦を選んだ場合、男性の年収は1200万円以上でなければ成立しないというデータもあります。コストパフォーマンスで考えてしまう人が多いのも無理はありません」

双方が納得感を抱けるように

 だが、きちんとパートナーに向き合ってその合理性を伝えることができれば、「新しい結婚の形を作ることができるかもしれない」と白川さん。その指針となるのが、ドラマ『逃げ恥』の平匡と、新垣結衣が演じたみくりの生活だ。

『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』白河桃子、是枝俊吾=著(毎日新聞出版)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

「ドラマではみくりが、家事をはじめとした無償労働は、仕事で稼いできた有償労働と同等に扱われるべきと、家事に対する労働力や家計費を“見える化”し、対価を算出しました。

 夫婦という関係は共同経営責任者であり、同等の議決権を持つという新しい結婚の形です。週1回は会議を開いて、お互いが安心感を覚えるために問題と向き合い、合意を得る。家庭に対する不満や不安を予防するために“見える化”すること、納得感は大切です

 希望する年収に満たなくても、夫が家事時間を増やすなど問題解決ができる関係を作れたら、“結婚したいけど不安”という人の背中を押す可能性は高い。

「結婚相談所などは、年収や趣味の項目以外に、育児や家事に対する理解度を測ることができる項目を増やすべきでしょう」

 そして、行政は“男性の育休の義務化”を真剣に考えなければいけないと白河さんは続ける。

「既存の結婚観が通用しない時代ですから、新しい結婚の形に対応できるシステムを作る必要があります。三重県では県庁の職員さんが、子どもが生まれる際は、男性が2年間の育児参画計画書を提出する決まりがあります。

 職場が理解をし、双方にとって不都合がないようにあらかじめ把握する。そして、男性が計画書を作ることで、“パパも働き方を変えて子育てする”という意識も生まれるそうです。新しい結婚の形を社会が寛容に受け入れていくことも、婚姻率の向上には不可欠でしょう」


〈PROFILE〉
白河桃子さん
ジャーナリスト・作家。慶応義塾大学文学部卒業後、住友商事などを経て現職。'08年に発表した、中央大学教授山田昌弘氏との共著『「婚活」時代』(ディスカバリー・トゥエンティーワン)がベストセラーに。以後、数々のメディアで活躍。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、相模女子大学客員教授なども務める。