プラスの意識を持つだけで、気持ちが楽になります

 こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ(R)」の大野萌子です。

 友達に自分の悪いところを指摘されたとき、「バカにしているのかな」「失礼だ」ととらえれば、気分が下がると思いますが、「自分のことをよくわかってくれている」と思い、あえて言ってくれたととらえればどうでしょうか。

 私たちがストレスを感じるのは、この「とらえ方」が大きく影響していて、同じ出来事に遭遇しても、その出来事のとらえ方によって、気分が上下します。

バスに乗り遅れてしまったら?

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 運がいい悪いも同じで、「運がいい」と思う人たちは、起こった出来事から自分にプラスになる目的を見いだし、反対に「運が悪い」と思う人たちは、マイナスの目的を見いだす傾向があります。

 バスに乗り遅れてしまった。あーあと思った次の瞬間。

・プラスの思考
「まぁいいか。歩いて運動不足を解消できると思おう。風も気持ちいいし気分転換にもなりそう」

・マイナスの思考
「帰りがけに○○さんが話しかけてきたからだ。ほんとあの人は空気読めない人だわ。嫌になる」

 といった具合です。

 もちろん、すごく急いでいるときや状況によっては、プラスの気分になれないことはあるかと思います。

 ただ、日常に起こりうることであれば、プラスの意識を持つだけで、気持ちが楽になります。そして、気持ちが楽になればなるほど、プラスに考えられる機会が増え、よいスパイラルを招きます。

 このような思考グセは、性格や身を置いてきた環境に左右されることも多いのですが、意識的に変えていくことが可能です。

 物事には多面性があり、すべてのことによい面と悪い面が存在します。よい面を見るようにする、自分にとってよい解釈をする、これがよかったのだという目的を見いだすといった意識が大切で、最初のうちは「とはいっても」と自分に反論したくなることもあると思いますが、続けていくことが肝心です。

「べき」思考を再考する

 もう1つ、私たちの心を不快にさせるとらえ方が「べき」思考です。言葉のとおり「○○すべき」「こうあるべき」という強い呪縛のような思考のことです。

 自分を責めるタイプの人は、この思考が自分に対して働きます。「○○すべき」「こうあるべき」と自らの行動に対して、必要以上にプレッシャーをかけ、がんじがらめになってしまいがちです。

 その結果、思いどおりにならなかったときに、さらに自分を責めてしまうという繰り返しになり、苦しむ傾向があります。

 また、他人を責めるタイプの人は、「他人」に対して、この思考が働きます。すると、思いどおりにならない相手に対して、腹を立てたり、批判的になりやすいものです。

 いずれにしても、物事に対しての融通が利きにくく、気持ちのゆとりがありません。

 相談業務の中で、婚活の相談を受けることもあるのですが、女性の場合は、「べき」に苦しんでいる方が多くみられます。

「子どもが欲しいので、できるだけ早く結婚すべき」だと思い、そのためには、出会いがないので、「結婚相談所に登録すべき」だと思っています。

 でも、すごく抵抗があって悩んでいる。悩んでいても時間が過ぎていくだけで何も変わらないので、「行動を起こすべき」だといろいろ調べているのだけれど、どうしても先に進めない。

 親にも言われているし、自分でも「結婚はするべき」だと考えてる、でも「本当は婚活なんてしたくない」と涙ながらに訴えられることも少なくありません。

「べき」思考にとらわれて、自分の気持ちに向き合わないので、自分自身の中での整合性が取れずに心のバランスを崩しているのです。

 悩みごとの多くは「やるべき」ことはわかっているのだけれど「やりたくない」「やる気が起きない」という思考と感情のギャップです。

 気持ちがついていかないと行動に移すのは、至難の業です。反対に、気持ちがあれば、行動を起こすことなんて簡単です。何かをしようとするときに「仕方がない」という理由付けや、できない「言い訳」を考え始める時点で、それは「やりたくないこと」「気が向かないこと」なのです。

 たとえば、予定のないお休みの日に友人から会わないかと連絡が入ったと仮定します。これから身支度をするのが面倒だなと思いつつも、会いたい気持ちが強ければ、即行動に移すと思いますし、そうでなければ、「明日早いから」とか「今週は疲れているから」などと、即座に断る理由を探し始めるでしょう。

 もちろん、仕事をはじめ、やらなければならないことはたくさんあります。だからこそ、取捨選択が必要なのです。迷いは、自分の心からのメッセージだと思って、迷ったら「本当に自分に必要なことなのか」と自分の気持ちに向き合う機会にしましょう。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

自分の本当の気持ちに向き合う

 そして、「やるべき」ことだけど、「やらなくてもよいこと」に過剰なエネルギーを注ぎこまないことが大切です。

 たとえば、専業主婦の立場で、家族には手料理を作るべきという強い思考があれば、お惣菜を買うことに罪悪感を覚えます。同じように妻に対して夫が同じ思考を持っていた場合に、妻が買ってきたお惣菜を見て「手抜き」だと腹が立つわけです。

「べき」思考は、気持ちのゆとりを奪い、あたかもほかに選択肢のない正論のように自分自身、そして相手を追いつめやすいものです。

 自分の気持ちを大切に、そこまでして「すべき」ことなのかを、自分の心に聞いてみてください。そして、少しずつ「べき」思考を手放していくことが重要です。

 ちょっとしたとらえ方の差が、気持ちのゆとりに大きな違いを生んでいきます。ぜひ、思考グセを「プラス」に、そして「柔軟」にシフトできるよう意識することを試してみてください。


大野 萌子(おおの もえこ)◎日本メンタルアップ支援機構 代表理事 法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。公式HP。コラムサイトでも執筆中。