遺棄現場近くでエサを食べる猫。地域のボランティアが不妊手術をしたり、エサをあげて共生している

『週刊女性』の短期集中連載「動物虐待を許さない!」、最終回となる第4回で取り上げるのは、千葉県の狭いエリアで相次ぐ猫の惨殺死体遺棄事件。身体の一部が見つからない、皮がペロ〜ンと剥がれている、内臓が飛び出ている……。むごすぎる仕打ちはいったい誰が、なんのためにーー。

〈連載の過去記事はこちら〉
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犬22匹の白骨死体と糞尿まみれの“虐待ハウス”、ご主人さまの次なる狙いは

ウジがわいた三毛猫の皮が……

「えっ、また近くで似たような猫の虐殺事件が起きたんですか? 恐ろしいというか、怖いですよ」

 と女性は声を震わせた。

 今年5月6日、千葉県船橋市本中山のマンションの敷地内で三毛の子猫の頭部を発見した女性である。近くのアパート敷地でも同日、頭部がなく内臓が飛び出たグレーの子猫と、尻尾を切断されたグレーの子猫の死体が見つかっている。この2件計3体の遺棄事件は、千葉県警船橋署が捜査に当たっている。

 ほかにも、同市と、隣の市川市の狭い範囲内で1年以内に少なくとも4件の類似事件が起きていることを週刊女性6月5日号(5月22日発売)で報じた。その記事が出た6日後のこと……。

 先の船橋市のマンションから約キロ離れた市川市大洲の住宅街で5月28日午後5時半ごろ、民家の主婦が、自宅の庭の隅でとてつもなく奇異な猫の死体を見つけた。

三毛猫の皮を剥いだ毛皮だけが、平たくペタッと貼りつけられていたんです。すでに乾いていたけれど、ウジがわいていました。血はまったく出ていませんでした。

 私たち家族は数日前から旅行に出かけていましたので、庭の隅は1週間ほど見ていなかったから、その間の夜間にでも遺棄したんでしょう。毛皮は、頭と手足の部分がありませんでした」(第一発見者の主婦)

 大きさはA4用紙2枚ぐらい。大人の猫とみられ、一部に背骨のようなものがついていた。主婦は手袋をして、新聞紙を幾重にも重ねておそるおそる、その皮をつかみ、くるんでおいたという。

 異様な犯行なので無視してはいけないと判断した主婦は翌29日、県警市川署に110番通報。同署生活安全課の制服警官と私服の刑事数名がすぐに駆けつけた。

民家の庭の隅に猫の毛皮が遺棄され、ウジがわいていた

「猫が通りそうな庭の端など家の内外を3時間近く捜査されていました。刑事さんは“塀の外から投げ込まれたんじゃないか”とおっしゃっていましたけれど、私は違うと思う。だって投げ込んだら、あんなにきれいに平たく貼りつくはずがないもの」(同主婦)

 被害宅の庭では、もうひとつ異変があった。

「毛皮のそばに止めていた孫の自転車の後ろのタイヤが、事件のあとでパンクしていることがわかったんです。犯人がパンクさせたんじゃないかと思って」(同)

下半分だけがない、子猫の死体

 さらに、この現場から北東に約800メートルのJR高架そばの駐車場で6月4日午後5時ごろ、別の猫の惨殺死体が発見された。この地域で野良猫にエサをあげたり、不妊手術をして地域猫にする活動を続ける女性ボランティアが話す。

「駐車場の隅の車のところで、頭のない生後3か月ほどの灰色のアメショ(アメリカンショートヘア)柄の猫が横たわっていたんです。野良猫ですから、たぶん雑種でしょうけど。内臓が飛び出していましたが、出血はありませんでした」(女性ボランティア)

 別の場所で殺害し、血抜きをしたうえで遺棄したのだろうか。女性ボランティアは地域猫にエサをあげようとして、むごい死体に気づいたという。仲間が前日午後7時ごろ、同じ場所でエサをあげたときには死体はなかった。

事件後、駐車場には犯罪防止を呼びかけるポスターが

「事故や猫どうしのケンカなどでそうなったのではなくて、明らかに人間の虐待によるものだと思ったので、市川署に110番通報したんです」

 と女性ボランティア。

 県警市川署は、何者かが猫の死体を遺棄したとみて、近くの防犯カメラの映像をチェックするなど捜査を続けている。

「駐車場の子猫の死体は頭部の上半分は残されており、下半分だけがなかった。首にかけての肉もないなど、ひどい死体だった」(捜査関係者)

この女性ボランティアは通報後、市川市議の宮本均氏(59)に連絡を入れた。

「野良猫のいる町が、日本の原風景」

  宮本市議が振り返る。

女性ボランティアが“猫が、猫が……”と悲鳴をあげていたので、行ってみると、本当にむごい殺され方をしていました。市川市には熱心な女性ボランティアがたくさんいらっしゃって、不妊手術活動(地域猫活動)に取り組まれていますので、なんとか私も力になろうと思って」

 同市は8年前、野良猫の不妊手術に助成金を出す制度を設けた。地域をあげてかわいそうな野良猫を減らし、地域猫を見守る制度だ。昨年度は236匹が不妊手術を受け、地域猫に認定された。宮本市議は現場に立ち会った後、市環境保全課に一報を入れた。

「動物虐待は県の管轄ですが、今回の2件は把握しています」(市環境保全課)

 死んだ子猫には5匹のきょうだいがおり、うち黒猫の1匹は、今回の事件の約1か月前に事故かカラスにでも突つかれたのか、目から血を流して絶命していた。

「丁重に火葬してあげましたけれど、もしかすると、人間の手による可能性もゼロではありません。5月下旬にはこの地域で、別の猫の顔と首の横の皮がペロ~ンと剥がれていることもありました。刃物で切られたんだと思います」

 と前出の女性ボランティア。

ボランティアらが使う猫の捕獲器。奥まで入ると扉が閉まる

 動物虐待問題に詳しい石井一旭弁護士は、

「飼い猫を殺すと器物損壊にあたり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。野良猫を殺せば、動物愛護法違反で2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金。初犯の場合、おおよそ罰金刑になります」

 ただし、飼い猫を殺害した場合は、民事訴訟の損害賠償の対象にもなる。

「猫の購入価格や、どのくらい一緒に生活したか、精神的苦痛の度合いにもよりますが、賠償額は慰謝料を含めて多くても数十万円。野良猫の死体などを家に置かれたケースで、民事で精神的苦痛を訴えて慰謝料を請求した事例は聞いたことがありませんが、清掃代は請求できると思います」(石井弁護士)

 先の宮本市議は言う。

「野良猫がいない都心部のようなところもありますが、私はあまり好きではないんですね。野良猫がいる町が、日本の原風景のような気がしているんです。人間でもそうですが、障害者やお年寄りのような弱者が生活しやすいところは、一般の方も生活しやすい。同じように、野良猫が生活しやすいところは、住民も生活しやすいと思うんです

 同感である。

(フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班)


〈PROFILE〉
やまさき・のぶあき 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物などさまざまな分野で執筆している

※石井一旭弁護士のコメントを一部訂正しました(2018年7月20日20:15)