動物園では、アフリカゾーンなど「ゾーニング」を意識した展示も(写真はイメージ)

 夏休みシーズン突入で、あれこれ計画中のみなさん。生き物をただ展示するだけでなく、知って、学べて、ときに触れて、なんといっても魅力的に見せてくれる動物園や水族館が増えているのをご存じだろうか。

 上野動物園の元園長・小宮輝之さんによると、

「特に水族館の展示方法に感心することが多いですね。珍しい生き物の生態を魅力的に見せる手法もとても上手です」

 最近の水族館の展示手法は凝っている。新たに生き物を入れなくても、テーマや演出次第で、新鮮な気分で見られるよう随所に工夫が凝らしてある。

 なかでも目につくのが「深海魚」や「淡水魚」など、専門性を打ち出した水族館。

「サンシャイン水族館が素晴らしかったですね。ゴライアスガエルという世界最大のカエルなど、ちょっと変なものに会えるのは新鮮です。“珍種”や“カエル”などテーマを決めた企画が凝っていて、おもしろいんです」

 動物園だって負けてはいない。例えば、群れの動物は群れで、家族で暮らす動物は家族で、など自然に近い環境をできる範囲で再現。動物の故郷や生息域の保全に関心を持ってもらう取り組みも行っている。

 また、アフリカゾーンを設けて、ライオンを主な生息地であるアフリカの動物として展示するといった、「ゾーニング」を意識した見せ方を展開する施設もある。

 教育の一環として学校でウサギやニワトリなどを飼う動物飼育は、全国的に減少傾向にある。そんななか、触れ合いを通した学びの場としても、動物園・水族館は注目されている。

「宇都宮動物園のように、キリンのえさやり体験ができる遊園地的な楽しみを売りにしたところも評判。人間側だけでなく、飼育動物たちにもいい刺激になっているようです」

上野動物園の元園長・小宮輝之さん

 生き物を扱う施設に求められるのは、エンタメ的な要素だけに限らない。絶滅の危機にある野生動物の命を守り、次世代につなぐ役割も担っている。円山動物園(北海道札幌市)が来園者の目標数を掲げるのをやめて、学びと“種の保存”に力を入れる方針を打ち出したことは話題を呼んだ。

種の保存で特筆すべき施設は、8月18日にオープンする新潟県長岡市の『トキと自然の学習館』。公開施設のチェックに出向きましたが、ここでは絶滅寸前のトキの人工飼育や、全国で分散飼育する取り組みが進められていました。多摩動物公園やいしかわ動物園、出雲市トキ分散飼育センターで飼育して、無事に育ったら佐渡に集め、選抜した個体を野生に戻すプロジェクトです。すでに動物園生まれの個体は200羽以上はいるはず

 分散飼育をすることで、鳥インフルエンザなど感染症による絶滅のリスクを低減できる。

 子どもの自由研究のネタ探しに出かけるのもよし、生き物との触れ合いを体験するのもよし。

 この夏、動物園・水族館へ出かけてみよう!


小宮輝之さん◎多摩動物公園の飼育係、元上野動物園園長。著書に『いきもの写真館2 シマウマのしまはサカナのほね』など多数。