イベント『長野市中条の魅力伝えます!』に参加した大桃

 7月29日に東京と信州を繋ぐアンテナショップ『銀座NAGANO』で行われていたのは、『長野市中条の魅力伝えます!』というイベント。ジビエ肉料理や西山大豆味噌の試食会、中条に移住したアーティストたちのトークショーなどで同地の魅力を伝えた。

農業被害を地域おこしに

 中条地区は人口が1816人、市街地から車で30分ほどの中山間地域にある長野市のベッドタウン。豊かな大地を活かし、西山大豆やかぼちゃ、大根、にんじん、きゅうりなど農作物を名産品としているが、シカやイノシシなどに作物を荒らされる被害にも年々悩まされてきた。

 長野市地域活動支援課 地域おこし協力隊中条地区担当の村松聡さんは、現状をこう話す。

「平成28年度の長野県の農業被害額は約9億2000万円。シカやイノシシにより畑を荒らされてしまう被害が多いために罠を仕掛けたり、電気柵を張らなければならないほど農家の方は困っていますね」

 これまで駆除してきた有害動物のほとんどは土に埋めることで処理をしてきたが、そこには問題点も潜んでいるという。指摘するのは長野農林部 いのしか対策課長の山崎千裕さん。

「シカ、イノシシは埋めるのが難しく、それが大変な負担になっているんですね。埋めかたが不充分だと、カラスやタヌキ、ハクビシンなどほかの野生動物が集まってきてしまうという悪循環に陥っています」

 昨今、中条が抱えるこのトラブルを打破しようという動きがある。“ジビエ肉の食用化”だ。「住む場所によっては、庭にも出てくる」というシカやイノシシ。地元の人たちの間でも、その肉を食べる習慣はあまりないそうなのだが、

せっかくいただいた命なので、美味しくお肉にしてみなさんに広めて、中条の特産品にしていこうといった働きを行政でしています。現在、捕獲したイノシシやシカを食肉化する加工処理施設を建設中です。この施設は今年の3月に農林水産省にモデル指定を受け、最先端の衛生管理も目指していますね」(山崎さん)

創作ジビエ肉料理や有機野菜

 この日のイベントスペースに集まった大勢の来客者には『しし肉の甘酒ほおば巻』、『シカ肉と夏野菜のラタトゥィユ』といった創作ジビエ肉料理や、有機野菜スティックに西山大豆のみそをディップして提供するといった、長野づくしの食材が振る舞われた。

イベントにて振舞われた『しし肉の甘酒ほおば巻き』

 単なるアンテナショップではなく、“長野県と首都圏の人をつなぐ場所”を目標に建てられた『銀座NAGANO』には東京や神奈川、埼玉から集まった人も多く、

「シカの肉は初めて食べましたが、思っていたより柔らかく臭みもない」(50代女性)

 といった意見や、

「調理次第でいくらでも美味しくなる可能性があると思いました。もっといろんなメニューが食べてみたい」(60代女性)

 との声も聞こえてきた。発酵させた年数の違う3種類のみそについても、

「1年もの、2年もの、3年ものとで色も栄養素も違うというお話は初めて聞きました。味もはっきりと違っていますね」(40代男性)

シカ肉と夏野菜のラタトゥィユ
発行年数の違う3種類の味噌を有機野菜スティックで味わう
イベントでは地元で獲れた野菜をその場でカット

イベントには著名人も来場

トークショーに耳を傾ける小澤征悦、八木沼純子、大桃美代子

 イベント会場にはタレントの大桃美代子、俳優の小澤征悦、元フィギュアスケート日本代表の八木沼純子ら、中条にゆかりのある著名人も来場していた。大桃に話を聞いてみると、

「中条地区に知りあいがいて、“ジビエ食べに来て”くらいの感じでお誘いをいただいたので伺いました。今日はいろいろなお話を聞いて勉強になりましたし……美味しかったです! 

 中条地区の方々は団結力があって、人がいい方が多いんだなと感じましたね。ソウルフードも多いためか、長野の方は食の話をすると盛り上がるんです。そこも面白いところですよね

イベントで地元の有機野菜をもらう大桃

 ジビエを食肉化する施設は来年3月に完成予定のため、肉を実際に供給できるのは来年の7月以降になりそうだ。イベント後に山崎さんは、

「本日お出ししたジビエ料理が首都圏でどのように受け止められるかの反応も見たかったのですが、思ったよりよかったのでうれしいですね」

 と顔をほころばせた。中条産のジビエ料理が全国を席巻する日も近い!?