瀬戸康史 撮影/佐藤靖彦

婦人科は僕にとって未知の世界で、なんとなくポジティブなイメージを持っていました。でも、実際に今作で(産婦人科医を)演じてみると、影の部分が“当たり前だけど、あるよな”というのを改めて知り……。主人公のアオイちゃんのセリフにもありますが“いろいろな命の交差する場所”というのを身にしみて感じています」

 放送中のNHKドラマ10『透明なゆりかご』で、産婦人科の若き院長・由比を演じている瀬戸康史(30)。人工妊娠中絶や母体死亡など、命が生まれる喜びと同じだけ存在する、重く悲しい現実をありのまま描く本作で、爽やかなルックスの瀬戸の存在はある意味、視聴者の癒しのひとつかもしれない。

「アルバイトの看護助手・アオイちゃんの周囲の人たちは、ドラマのために(同名の)原作漫画をもとに肉づけされたキャラクター。漫画だと、院長の由比先生は色黒のおじさんなんです(笑)。患者さんや赤ちゃん、一緒に働く人と同じ目線に立つことができるのが由比先生。そして、誰に対しても真摯に接する人でもある。演じるうえで、それはすごく意識しています」

 劇中、赤ちゃんを取り上げるシーンがたびたびあるが、実際に新生児を抱いてみた感想は?

「リハーサルを精巧に動くロボットの赤ちゃんでしていて、十分にリアルを感じているつもりでした。でも、本物の赤ちゃんは全然違います! 重みが違うんです。命の重みというか。最初は怖かったんですが、いまはもうバッチリ。抱っこの仕方さえ覚えれば、そんなに臆病にならなくても大丈夫です」

 もし、それが自分の子どもだとしたら?

瀬戸康史 撮影/佐藤靖彦

「全然、想像がつかない! 自分の子どもをこの手で取り上げる……ことはないと思いますが、先生と同じ側には立てる。そのくらいの気持ちで撮影に臨んでいます。女性の妊娠中のストレス、子育ての大変さなど、いろいろ勉強させてもらいました。不妊も、女性だけではなく、男性の問題でもあることがわかりました。僕が父になるとしたら、そういうことがわかるぶん、協力的でいたいと思います。ひとりでは乗り越えられないことってたくさんあるので。

 20代のころは、漠然と“結婚したいな”“子どもが欲しいな”と思っていましたが、30歳になって今回のような作品に触れ、改めて結婚や出産をリアルに考えると“まだ、僕には無理だな”と。親になる責任の重大さをひしひしと感じています」

記録的な猛暑日が続く今夏。やってみたいことは?

「う〜ん、BBQですかね? 今年はまだ、っていうより毎年してないです(笑)。あまり夏らしいことってしないんです。ドラマの撮影で海に行くくらい。仕事で外出することが多いので、プライベートはかなりインドア派。家でゆっくり過ごします。と言っても、家で台本を読んでセリフを覚えていることが多いですね」

今年、30歳になった瀬戸くん。ズバリ、30代の目標は? 

「特にないんです(笑)。30歳だからこう! みたいなことより、これまでどおり、焦らずに自分が関わりたい人や作品とじっくり向き合っていけたらと思います。実は、まだあまり30代という実感もないんです。32歳くらいになったら「30代って」と思えるようになるかもしれませんね」

<取材・文/村花杏子>