雨の中、お弁当を買って自宅マンションに帰宅した有森と片嶋監督

 9月下旬の夜8時過ぎ、雨がしとしと降る中を寄り添って歩く男女が現れた。ふたりが入ったのは、有森也実の住む都内の高級マンション。長髪を後ろで束ねた渋めの男性が先導してエントランスに入り、手慣れた様子でオートロックを開ける。男の正体は、映画監督の片嶋一貴氏だ。

「昨年公開された片嶋監督の『いぬむこいり』は、過激な濡れ場シーンで話題になりました。主演したのが有森さんで、全裸の体当たり演技には驚きましたね。監督はこれまでに『たとえば檸檬』『TAP 完全なる飼育』といった作品でも彼女を起用しています」(映画ライター)

 映画での活躍も多いが、有森の名が広く知られるようになったのは'91年に放送された月9『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)だろう。柴門ふみのコミックが原作で、最終回の視聴率が32・3%を記録した大ヒットドラマだ。

放送直前の'90年に行われた『東京ラブストーリー』の制作発表。左から江口洋介、有森、鈴木保奈美、織田裕二、千堂あきほ

「織田裕二が演じる地方出身の優柔不断な会社員・カンチと鈴木保奈美が演じる奔放な女性・赤名リカの恋愛ドラマです。バブル真っ盛りのイケイケな時代で、リカの“カンチ、セックスしよ!”というセリフが流行語になりました。

 この伝説のトレンディードラマが、10月期のフジ月9『SUIT/スーツ』で織田さんと鈴木さんが27年ぶりに共演するのに合わせて、再放送されました。いま見ると、ハイレグ・ワンレンで肩パッドという当時のファッションが懐かしいですよ(笑)」(テレビ誌ライター)

 若いOLの心をつかんだドラマだったが、有森の演じた関口さとみは“損”な役柄だった。カンチに思いを寄せるリカのライバルで、女性たちから総スカン。

「あのころはリカみたいに本音を隠さない自由な生き方が憧れだったんです。さとみは清楚でおとなしい性格なんですが、カンチを横取りするやり方がズル賢いと反感を買いました」(スポーツ紙記者)

 今でもツイッターには《有森也実、大嫌い!》というツイートがあるくらい、さとみ役は有森のイメージを決定づけてしまった。

「NHK朝ドラ『半分、青い。』でも、さとみのエピソードが使われていました。ヒロインの幼なじみが結婚した相手を“おでん女”だと指摘するシーンがあったんです。

 リカに会いにいこうとするカンチの前におでんを持って現れ、逢瀬を邪魔したさとみのような女だという悪口ですね」(前出・テレビ誌ライター)

 ただ、有森自身の性格は、さとみとはまったく違う。

有森、実はサバサバ系

有森

「おしとやかどころか、仕事がなければ昼から酒を飲んじゃう酒豪。サバサバした性格で、どちらかというと男っぽい。ただし恋愛には積極的で、50歳になるまで独身なのが不思議なくらいです」(テレビ局関係者)

 テレビ番組でぶっ飛んだ恋愛エピソードを語ったことも。

《仕事が終わって彼氏の家に行って、彼氏と24時間、唇が腫れるまでキスをした》

《彼氏が骨折で入院したときに、有森が毎日長文の手紙を送り続けて彼氏がストレスで胃潰瘍に。結果、入院中の彼をさらに病院送りにした》

 好きになるとのめり込むタイプのようだ。

 もともと結婚願望はあったが、片嶋監督との出会いですべての意識が変わったと、ある雑誌のインタビューで語っている。

《以前は情熱的に『この人と一緒に暮らしたい』とか、『この人の子どもが欲しい』って、自分が選んでいるという意識があったんですけど、この作品を通して、そういうことじゃないんじゃないかって思うようになりました。

 結婚とか離婚とか、家族とか夫婦とか、最終的には動かされるようにして動いていく。理屈じゃなくて縁としかいいようがないものがあるって、今はそう思うんです》

 『いぬむこいり』は人身御供として犬に婿入りするという伝説をモチーフにして、愛と性の深層を描いた作品だ。

『東京ラブストーリー』以後、ヤクザの女や覚せい剤依存など、有森さんはさまざまな汚れ役に挑戦してきました。

 それでもこの作品はちょっと度を越しています。“犬男”と交わるシーンまであります。女優として肉体的にも精神的にも追い詰められたようです」(前出・映画ライター)

 片嶋監督は故・若松孝二さん、井筒和幸氏などの作品で助監督を務めた後、'95年に監督デビュー。歪んだ愛やテロリズムなど、エッジのきいたテーマに取り組んできた。

「中でも『いぬむこいり』はおどろおどろしい民話を下敷きにしてパンクな物語に仕上げた集大成的な作品。ペテン師や革命家、インチキ政治家などが登場し、カオスな世界が繰り広げられる4時間超えの大作です。ヒロインを演じた有森さんは、監督の世界観に強く影響されていました」(前出・映画ライター)

 有森はついに、人生をともにするパートナーを見つけたのだろうかーー。ふたりの交際について有森の所属事務所に問い合わせると、

「大人なのでプライベートのことは本人に任せています」

 との回答。片嶋監督本人に聞いてみると、

ん~、交際についてはノーコメント。ですが、僕の映画に4本も出てくれていますので、よき仕事のパートナーであることは事実です」

 どちらも独身で結婚への障害はない。『東京ラブストーリー』では最終的にカンチを射止めたのは、さとみだ。有森の“ラブストーリー”もハッピーエンドを迎えるか。