「最近は“第一発見者になりたくない”“事情聴取がめんどくさい”という理由で、なんとなく異変に気づいても通報しない人が増えています」。この現場も亡くなってから発見までに時間がかかったため、布団に広がった体液の色は、茶色くどす黒い 撮影/齋藤周造

 茶色く汚れた布団、血で真っ赤に染まった風呂場、大量のゴミで埋めつくされた床――。目を背けたくなる衝撃の光景だが、これ、実は「孤独死」や「ゴミ屋敷」をミニチュアで再現したものだ。

 制作したのは遺品整理クリーンサービスで働く小島美羽さん(26)。国内最大規模の葬儀・埋葬・供養の専門展『エンディング産業展』で展示されると、SNSなどでたちまち話題に。

“グロい”と言う方もいれば、“本当にこんな現場があるの?”と驚いている方もいました。日本って平和じゃないですか。信じられないかもしれませんが、現実で起きていることです。これをみんなに知ってもらおうって思ったときに、写真は見せられないし、“じゃあミニチュアならどうだろう”と、最初は思いつきからのスタートでした」

 予想以上の反響の多さに、とても驚いたと小島さん。今は3か月かけて3つの作品を同時進行で手がけ、仕事を終えた後の時間を使い制作に励んでいる。

 ここまでリアルに作れるのは、数多くの経験を積み重ねてきたからこそ。孤独死の現場は月に5回ほどあるという。

「マイナスなイメージがありますよね、この仕事って。よく人から“呪われるよ”って言われたりもします。でも、自分が死んだ立場だったら、わざわざ片づけてくれる人を呪わないですから。それよりも誰かを亡くしてぽっかりと心に穴があいた方の話を聞くなどして、少しでも楽にさせてあげることができたらいいなと思ったんです

“父の突然の死”を経験して

 そもそもこの仕事にたどり着いたのには“父の突然の死”が関係しているそうで、

「高校生のとき、父親とは別々に暮らしていたんですが、家を訪れたら玄関先で倒れていて。ヒートショックだったようで、すぐに病院に運ばれましたが、意識はありませんでした。最後に家族みんなで声をかけてあげると、涙を流して、その30分後に亡くなりました。それからしばらく後悔の念に駆られて。失ってから気づくことってあるけど、それでは遅いと学んだんです。そんなことを考えているうちに遺品整理の仕事があることを知りました

 本当に自分がやりたい仕事か試すため、数年は違う職業に就いていたと小島さん。それでもあきらめきれず、念願だったこの仕事に就いたという。

ミニチュアについて説明する小島さん。「この部屋の奥で、ゴミに埋もれるようにして女性が亡くなりました」。失恋、仕事の悩みなど、精神的ダメージによって誰にでもゴミ屋敷になりうると話す 撮影/齋藤周造

 入社して今年で5年目。小島さんが仕事、そしてミニチュアにかける思いは熱い。

問題は“孤独死”そのものよりも、見つかるまでの期間だと思います。大事なのはコミュニケーションをとること。例えばゴミ捨てのときに挨拶をしていれば、姿が見えなくなったときに“最近見ないけど大丈夫かな”と周りの方が気づいてくれるかもしれない。おしゃべりまでいかなくても、ひと言の挨拶だけでもいいんです。

 最近は孤独死する若い人も増えています。ミニチュアで表現したことは他人事ではなく、誰にでもなる可能性があること。その現状を知ってもらい、みなさんにも気をつけてもらいたい。そんなメッセージが伝わればいいなと思っています」

仕事に込めた、もうひとつの思い――

「私がこの仕事を始めたとき、業界では悲しみに打ちひしがれ疲れ果てた遺族につけこむ、悪徳業者がはびこっていて。許せないんです。私はお金のために働いていません。“(悪徳業者を)絶対つぶす!”というのをひとつの目標に、今の会社に入りました