不適切動画を助長させるのは「ギャハハ女子」!?
 連日ニュースを賑わせている“バイトテロ”が止まらない!  なぜ若者たちは不適切動画をSNSにアップしてしまうのか、この騒動に終わりはないのか……。放送作家でNSC東京校の講師も務める野々村友紀子がぶった斬る! 

* * *

 枯れることのないバカの泉から湧き出るかのごとく、毎日毎日溢れ出すバカッターにバカスタグラムのバイト君たち。

 え? 世の中って、こんなにバカが溢れてたっけ? こんなに連日ニュースでやっているのに、なんで? この子達の家にはテレビがないのかな? それとも、想像力がないのかな? おいおい日本、大丈夫か? と、思わず首を傾げてしまう日々ですね。

 メディアでは賢い人たちによって「どうすればこのような行為は減るのか」という議論が繰り広げられていますが、賢い人はきっとこんなことをするわけないので、その心理もわからないんじゃないでしょうか。私もいろいろ考えましたよ。バイト採用者には、お店側から「万が一不適切な行為をして店に損害を負わせた場合、即裁判、きっちり損害賠償払ってもらうからな! ええな!」という内容の誓約書にサインしてもらってからシフト組む、とか、携帯スマホはロッカーに必ず入れて仕事場に一切持ち込めないようにする、とかね。

 まあでも、そうしたところで結局、ああいう行為自体は絶対減りはしないんですよね。あれはもう、ただの若者の行き過ぎた「悪ノリ」ですから。もし今回、損害賠償を支払うことが現実となれば、SNSにあげるバカはさすがに減るかもしれませんが、こっそりとしょーもないことをやるバカは後を絶たないし、動画も撮り続けますよ。

 だってこんなにテレビで連日やってて、今熱いんだもん。バカバケツリレーみたいなもんです。彼らにとっては、バカな行為も、SNSの炎上も、バイトをクビになるのも、青春の1ページくらいにしか考えていないですよ。そんな誰も得しない、しょーもない青春の1ページのために、企業が今まで必死になって積み上げてきた信頼を一瞬にして壊されてしまうなんて、たまったもんじゃないわ!

持ち前のサービス精神が大爆発

 では、こんなことをしてしまう彼らは、ものすごくバカで悪い人間なんでしょうか? きっと普段はそこまでじゃないはず。もしかしたら、意外といい子が多いんじゃないかな。調子乗りではあるけど、友達が困っていたら助けてあげたり、妹や弟にも優しい、好き嫌いもなく何でもおいしそうに食べる、人付き合いを大事にする人気者なんじゃないかな? いや、だからと言ってあんなことやっていいってわけじゃないよ! やったことは完全にアウト! あかんもんはあかん!

 ただ、「若さ」と「バカ」は常に背中合わせ。中には、場の空気にのまれて「お仲間ハイ」で「一時的バカ」になってしまっただけの子もいるはず。誰だって経験のある「お仲間ハイ」。なんだか仲間でワイワイしていたら、テンション上がっちゃって、突然、身体の奥底から湧き上がるあの変な無敵感。しかもスマホでカメラを向けられてしまったらもう、「なんかしないと! なんかおもしろいことしないと! お仲間たちのこの期待に応えたーい!」と、持ち前のサービス精神が大爆発。

 やらんでいいのに、しょーもないことをして、しょーもない伝説を残してしまう。マリオでいうスター状態ですわ。あの時って、足はめちゃくちゃ速くなるけど、冷静に周りが見えてないから、アホみたいに「ワーッ!」て走り過ぎて、すぐ谷に落ちるでしょ。そして一瞬の静寂の後、「…テレッテテレレレ〜」いくら後悔しても、時すでに遅し。ゲームオーバーです。

「一時的バカ」は、本当のバカではないので、己のバカさにある時ふと気づいては消えていくでしょう。しかし、若者がいる限り、また新たな一時的バカは現れるのです。だから絶対数は減らないんですね。

 そして断言しよう。バカスタグラム動画につきものの、「ギャハハ女子」が存在する限り、バイトテロ男子は減らん!

 ある時はスマホを男子に向け動画を撮りつつ、ある時は男子たちを遠巻きに見ながら「ウケるw」「こいつバカなんだけど!www」と、下品な笑い声を加えることで、バカスタグラム動画としての完成度をワンランクアップさせる「ギャハハ女子」は、バカな男子の目立ちたい欲をグングン上昇させ、とことんバカにしてしまうのです。

“スゴスタグラマー”になればいい

 一番悪いのはもちろん、やっている本人。でもはやし立てる周囲が同罪のときもある。どうか女子の皆さん。もしバカッターやバカスタグラムに遭遇したら、そこは1ミリも笑わず、冷静に、死んだカナブンでも見るような目で一瞥(いちべつ)くれてその場を無言で去ってほしい。そうすることで、一時的にバカ男子の魔法は解けるはず。バカ男子を一撃でシラけさせるには、いつの世も女子の冷たい目線が一番効く。それが世の中のバカを減らす最速の方法かもしれない。

「若さ」と「楽しい仲間」は時に人をバカにしてしまいます。もっとも、青春の日々は、多少のバカによって彩られた方が楽しいのかもしれません。しかし、それらが何度も思い返したくなるような甘酸っぱい日々になるか、二度と思い出したくないような苦々しい日々になるかは、自分の行動次第。

世の中には、やっていいことと悪いことがある。人に迷惑をかけない。食べ物で遊んじゃダメ。お友達が悪いことをしていても、一緒にやらない

 結局、幼稚園で教えてくれることは、ずっと正しい。私も、あらためて子どもたちに教えようと思います。そして次世代の一時的バカを減らすためにも、世の中のお父さんお母さんは、バイトテロの報道があるたびにしっかりとテレビを指差し、「ええか?こんなバカになったら終わりやで」と子どもたちに教えてあげましょう。

 せっかく自由に自己アピールができる場でもあるSNS。どうせならバカアピールじゃなく、コンビニですっごいダンスしながら綺麗にパン補充する高校生バイトとか、高速暗算で計算する人間レジバイトとか、回転寿司で大根を飾り切りでサグラダファミリアにする包丁さばきとか、凄すぎて笑えるバイト動画でも撮って、スゴッターやスゴスタグラマーとして名を上げたらええのに。そしたら企業の株も上がって、時給あげてくれるかもよ。その方がみんな楽しいのにね! えっ……ダメ?

 残念ながらバイトテロをしてしまった子たちは、まずは心から反省して、これからは何らかの形で自分が貶めた企業の信頼回復に努め、社会の役に立ちながら、自分自身の信頼も少しずつ取り返してほしいですね。


プロフィール

野々村友紀子(ののむら・ゆきこ)                      1974年8月5日生まれ。大阪府出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の芸人、2丁拳銃・修士の嫁。 芸人として活動後、放送作家へ転身。現在はバラエティ番組の企画構成に加え、 吉本総合芸能学院(NSC)の講師、アニメやゲームのシナリオ制作など多方面で活躍中。著書に『あの頃の自分にガツンと言いたい』『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』(ともに産業編集センター)『パパになった旦那よ、ママの本音を聞け!』(赤ちゃんとママ社)がある。