高良健吾 撮影/吉岡竜紀

「自分をイメージして脚本を書いてもらえたことは、すごくありがたいです」

 笑顔を見せた高良健吾。朝ドラ『おひさま』や『べっぴんさん』、ブルーリボン賞主演男優賞を受賞した映画『横道世之介』など、数々の作品で存在感を残してきた。

 その彼が新作『アンダー・ユア・ベッド』で演じるのは、ベッドの下に入り込み愛する女性の行動を見守る男・三井直人。「イケメンを汚したい」という理由でオファーをしたという監督の話を聞く前に、自分に三井のような印象があるのかと不安にならなかったか尋ねると、

「それはないですね。三井と僕は違いますもん(笑)。だけど、ちょっと複雑ではあります。こういう役に合うと言われるのは(笑)。それでも、ありがたいことです。僕自身、演じるうえで役にそんなに共感する必要はないと思っています。ただ、理解することは必要で、純粋すぎるがゆえに暴走してしまう三井を理解はしています」

グレーゾーンの演技がいちばんの魅力

高良健吾 撮影/吉岡竜紀

 親にさえ存在を認めてもらえなかった三井の名前を、ただ1度呼んだ女性・千尋。11年前の彼女とのその一瞬の幸せな時間を取り戻すために、家庭を持った千尋の家の近所に引っ越し、彼女の家に侵入する三井。そこで見たのは、夫に暴力をふるわれる千尋の姿だった。

白と黒に分けることはせず、グレーゾーンをすごく大事にしました。最後に三井がどんな表情をするのかが、僕自身も楽しみでしたし、オファーを受けたときに感じたこの作品のいちばんの魅力でもあったんです。見る人によって、いろいろな感想があると思います。でも、ただただ痛い映画になってほしくない。経験として、痛みから感じることってあるじゃないですか。そうなってほしいです」

 歪んだ愛の、執着のカタチを描く極限のラブストーリー。三井の持つ“純愛”を100としたら、今の高良が持つ愛の大きさは?

「三井くんは愛にあふれているので……。僕の理想になってしまいますが、お互いの存在を楽しめて、認め合えて、許し合えたら最高なんでしょうね。この映画でもそう。何があっても相手を肯定することは大切なんだなと思う。難しいことでしょうけど。でも、理想は持っていないと」

ちょっと日常から離れたい時は?

 作品を通して描かれているのは“人から認められる”ということ。

今の僕は、俳優として確実に人に評価を下される立場。だから、認められる、認められないがついてまわります。10代や20代のころは、そういうことに少しイライラを感じたりしていました。ただ、30代になって、自分の人生の半分はこの仕事をしていて、これからもそうなんだなと思うと、以前抱いていた感情がなくなりました。あっ、ないって言ったら嘘ですけど(笑)」

高良健吾 撮影/吉岡竜紀

 評価がつきまとう仕事の重圧から心を解放してくれるのは“旅”だそう。

「周りに旅好きが多いんです。その人たちが行ったところで面白いところがあると、行ってみようかなと。海外に行くと、ただただ普通の男になれて心地いい。認知していただいていることは、非常にありがたいことなんです。でも、僕以外の俳優のみんなも旅に出るのはそういうことなんじゃないかなと思います。ちょっと日常から離れたいなっていう。日常から離れる仕事なんですけどね(笑)

三井を演じて印象に残っているシーンは?

 演じている僕だからか、そこまでやる? ブレーキないなという三井が、ちょっとかわいく見える瞬間がいくつかあって。オムツをはいたり、千尋を助けられなくて自分を傷つけたり。三井って、そういう男なんです。

次に旅行に行くなら?

 中学生のころからお世話になっている先輩がモロッコにハマっていて。写真を見せてもらったり、いろいろと話を聞いたりすると、すごく面白そうで。僕の好きな映画にモロッコが舞台のものもあるので、年内には行きたいですね。

寝つきはいい?

 最近、すごくいいと思います。気絶するように寝ています。ソファで寝ちゃうと、うれしいですもん(笑)。20代のころは、常にいろいろなことを考えて、不安で寝つきが悪いときがあったんです。そのときは、朝も起きれなくて。今は、休みの日でも遅くとも9時前には起きます。得した気分になるんですよね。掃除したけど、まだこんな時間だって(笑)。

『アンダー・ユア・ベッド』テアトル新宿ほか全国順次ロードショー
配給:KADOKAWA
『アンダー・ユア・ベッド』 (c)2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会