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「毎年9月から10月にかけては女性頭髪専門外来の患者さんが増えるんです。特に抜け毛や薄毛に悩まれる方が多いですね」と話すのは、長年、女性の発毛治療を行っているクレア―ジュ エイジングケアクリニック総院長の浜中聡子先生。

猛暑のせいで秋に薄毛が進行する!?

 なぜ抜け毛が増えるのか、原因は2つあるという。

1つは、夏の暑さから体力が奪われて体調不良になる、いわゆる夏バテが原因です。体調を崩したときの後遺症として、抜け毛の症状が現れることがあります。髪の毛が栄養不足に陥ってしまい、抜け毛が進行します。2つ目の原因は、夏の強い紫外線。頭皮が紫外線に直接当たると、皮膚と同じように日焼けをします。炎症を起こして頭皮に負担がかかってしまうのです」(浜中先生、以下同)

秋に薄毛が進行するのは“夏”のせいだった!

 最近では女性の薄毛も治療できることが知られ、患者数も増えているという。

「当院の女性頭髪専門外来を受診する患者さんは、この10年で2.5倍に急増。年代別で見ると、40代以上の人が約8割を占めています」

クレアージュ エイジングケアクリニック総院長の浜中聡子先生

 季節の変わり目以外にも、加齢による髪の変化に気を配る必要があるという。

「女性の多くはうねりなどの髪質の変化や、抜け毛が生じます。閉経で女性ホルモンの分泌量が低下すると、症状を進行させることがあるのです。また、年齢とともに頭皮の血流が悪くなることで、髪の毛を作る細胞の働きも鈍くなり、髪のボリュームが減ってしまいます

 縮毛矯正はカラーリングよりも頭皮に負担が大きい。縮毛矯正を1年間に2回以上繰り返していると、薄毛につながるので注意が必要だ。

女性に多い頭頂部が薄くなるタイプ

 女性の髪の毛の太さやボリュームは、30代後半でピークを迎える。それ以降は抜け毛などによる髪の変化が起こり、年齢とともに進行する。

「患者さんは抜け毛や薄毛のほかにも、さまざまな悩みを抱えています。例えば、額が広くなった、髪の分け目が目立つなどの悩みがありますが、実は女性の薄毛には、男性と異なるいくつかのタイプがあります」

 女性に最も多いのは、頭頂部を中心にすだれ状に薄くなる「びまん性脱毛症」。髪をまとめて結ぶ人に見られるのが「牽引(けんいん)性脱毛症」で、髪が引っ張られることで起こるタイプだ。

女性に多い脱毛症はこのふたつ イラスト/はやかわくにこ

高血圧の薬だった発毛成分ミノキシジル

 髪の悩みがある人は、頭皮の専門医がいるクリニックを受診するのも1つの手だ。

「クリニックでの薄毛治療では、ミノキシジルという成分が入った薬を使います。この薬はもともと、血圧を下げるための血管拡張薬でしたが、服用した人たちに発毛効果が見られたため、現在は薄毛改善に応用されています」

 まずクリニックでは、頭皮の状態を検査し、血液検査や問診を行う。薬を処方する場合は、ミノキシジルの濃度を変えた6段階の薬のうち、その人の症状に合わせて処方する。部分的な治療であれば塗り薬を使い、全体的な治療を行うときは飲み薬を使う。

 自由診療にはなるが浜中先生のクリニックでは、1か月の費用は塗り薬のみで1万
6500円(税込み)だという。

クリニックで治療した例 画像提供/クレアージュエイジングケアクリニック

 これからの季節、自宅で行う薄毛対策で、心がけたいポイントは?

「通常でも毎日、100本ほどの髪の毛が抜けるといわれています。抜け毛が怖いからと、2日に1回しか頭を洗わない人もいらっしゃいますが、それで抜け毛が減るわけではありません。なによりも頭皮を健やかに保つことが大事なので、洗髪の回数を減らさないようにしましょう。1日1回洗髪をすれば、頭皮の汚れを防ぎ、清潔に保つことができますよ」

 髪を洗った後は、濡れたままにせずに、すぐにドライヤーで乾かすことが大切。このとき意識したいのは、最初に髪の根元の頭皮を乾かすこと。頭皮がいつまでも濡れていると、かゆみやにおいなどの皮膚トラブルが起きて、抜け毛に発展してしまう。

「アンチエイジングの基本ですが、よい生活習慣を取り入れることも必要です。十分な栄養をとり、無理なダイエットは行わないように。アルコールやタバコもなるべく控えましょう。また、質の高い睡眠をとり、朝型の生活を送ることが望ましいです」

自宅でできる薄毛予防法

食事

 髪の毛の原料であるタンパク質をしっかり摂取し、野菜や果物からビタミンやミネラルをとることが大事。食事で摂取しにくい亜鉛やビタミンB₆などは、サプリメントを利用してもよい。

睡眠

 日中に髪の毛が受けたダメージは、寝ている間に成長ホルモンや免疫細胞が修復してくれる。ホルモンの分泌を活発にするには、早寝早起きを心がけて、できるだけ質の高い睡眠をとるようにする。

お手入れ

 シャンプーは頭皮がすっきりして、ボリューム感が出るものを選ぶ。白髪を染めるときは、白髪染めを毎回使うのではなく、白髪染めとヘアマニキュアを交互に使用して髪の負担を減らす。

教えてくれたのは●浜中聡子(はまなか・さとこ)先生●クレアージュ エイジングケアクリニック総院長。医学博士。日本抗加齢医学会専門医。女性の髪悩みに特化した「女性頭髪専門外来」を開設し、治療に取り組む。女性の発毛治療歴14年。著書多数。

取材・文/松澤ゆかり