久慈暁子アナ、田中みな実

「フリー転身といえば、NHKのアナウンサーが民放に降りて帯番組のキャスターを務めるように、かつてはスキルを高めた30代、40代が満を辞して、というのが主流だったように思います。先日、日本テレビ退社を発表した桝太一アナも40歳ですからね。

 それだけに、27歳にしてフリーになる決断を下した彼女には余程のことが起きたのでは、と勘ぐってしまいますよ」(スポーツ紙芸能デスク)

 1月23日、自身のインスタグラムにて《今春でフジテレビを退社することになりました》と報告した久慈暁子アナ。フジの看板アナの1人に数えられた彼女は、入社から5年、27歳と若くして同局を去り、今後はフリーアナとしてタレント活動にも力を入れていくようだ。

 2017年4月の入社から3か月後には、同局の歴代“エースアナ”の代名詞になっている“○○パン”を戴冠した久慈アナ。7月に『クジパン』がスタートすると、10月には『めざましテレビ』に抜擢されるスピード出世。新人にして将来が確約されたと言ってもいいほどのエリートコースを歩む逸材だった。それもそのはずーー、

「青山学院時代にスカウトされて芸能界入りした彼女は、ファッション誌の専属モデルなどのタレント活動を経験した元芸能人。20歳の頃には、同じ奥州市出身で同学年の大谷翔平選手との対談が組まれるなど、そのタレント性は折り紙付きでした。

 “大型ルーキー”として迎えられたわけですが、それでも研修から間もない新人アナが抜擢されるのは異例のこと。フジはアナウンス力というよりは、彼女のルックスと知名度、人気にも期待したのは確か」(前出・スポーツ紙芸能デスク)

 期待に応えるように『めざまし』の他にも『めざましどようび』メインキャスターを務め、一方でバラエティー番組でも存在感を放っては着実にステップアップを重ねた久慈アナ。ところが、順風満帆にきていた彼女に“スキャンダル”が降りかかる。

ステマ疑惑と後輩アナの台頭

 昨年4月に『週刊文春』が、久慈アナを含む同局アナ7人がとある美容室と、その系列店から無料サービスを受ける代わりにSNSで“広告塔”の役割を担っていたという“ステマ(ステルスマーケティング)疑惑を報じた。これを受けて、彼女もインスタで騒動を謝罪して《気を引き締めていきたい》と前向きな姿勢を見せていたのだが、

上層部から厳重注意を受けたという彼女ですが、どうやら納得がいかなかったみたいですね。というのも、数十回も投稿を繰り返していた同僚もいたのに対して、久慈さんは1、2回ほど載せただけ。おそらくは頼まれて紹介しただけで、本人はステマの意識がなかったのかもしれません」(テレビ局編成スタッフ)

 そして“ライバル”アナの存在も退社を決断した理由になり得たとも。

同じくステマ騒動を謝罪した井上清華です。昨年3月に『めざましテレビ』のメインキャスターに就任した井上アナは、同じ青学出身のタレント出身アナ。そんな後輩に先を越されたとあっては、久慈さんのプライドに傷がついたとしても無理はない。アナに限らす、出世争いに敗れて転職する局員は多いですよ」(同・編成スタッフ)

 数千人、数万人とも言われるアナウンサー志望者から選ばれた、しかも“エース”候補として迎え入れられた久慈アナ。そんな彼女が5年で退社とあっては余程の理由だったのだろうが、この決断は「若手アナのトレンドになるかも」とは大手広告代理店営業スタッフ。

元TBSの田中みな実さんの成功例があってのこそだと思います。2009年に同局に入社した田中さんも、人気アナとして活躍していた5年目の27歳でフリーに転身した身。しかも久慈アナと同じ青学出身で、学生時代からモデル経験ある“タレントアナ”でした。彼女たちには常日頃、芸能事務所からお誘いがかかりますから」

 同様にエース候補としてTBSに入社し、“あざといキャラ”を確立すると同局のバラエティー番組に欠かせない存在となった田中。ところが2014年9月に自身のブログで突然の退社を発表。当時は理由を《広い視野で、環境で、挑戦していきたい》としていたのだが、昨年5月の『伊集院光とらじおと』(TBSラジオ)で真相を語っていた。

余力があるうちに外に出た方がいい

 在籍時には常々「帯番組をやりたい」と上司に掛け合っていたという田中だが、待てども番組改編時のキャスティングに一切名前が挙がらなかったとして、

《私は“このままずっと今の感じでぶりっ子を30歳までやって、需要がなくなってしまったらどうしよう”と思って。だったら、まだ余力があるうちに外に出て、もしかしたら外の方が帯番組をやれるチャンスがあるかもしれない》

 30歳を迎える前に、若いうちにフリーになる方がメリットがあると判断。「女子アナにはかねてより、“30歳定年”なる業界の都市伝説のようなものがありました」とは芸能ジャーナリストの佐々木博之氏。

「毎年入社してくる若手アナや、人気フリーアナに押し出されるように、30歳を過ぎるとナレーションや番組合間のニュースなどの“裏側”に回されて、画面から消えていくというものです。それを機にフリーに活路を見出すことは少なくはありません。

 ただ、引く手数多の売れっ子アナならいざ知らず、ベテランになったフリーアナに開かれた道は狭いもの。ですから30歳になる前に、できるだけ若いうちにフリーになった方が、アナウンサー以外にも活動の選択肢が多いのだと思います」

 確かに、27歳にしてフリーに転身した田中の活躍ぶりはご存知の通り。念願の帯番組のメインキャスターを任される一方で、アナウンサー業の他にも大胆なショットを収めた写真集は60万部を突破。努力する姿を隠さずに見せることで、女性からの支持を集める“美のカリスマ”として君臨。

 さらに勢いは止まらず、女優業にも進出。ドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系・2020年)での怪演が話題になると、昨年には映画『ずっと独身でいるつもり?』で主演を務めるなど、局アナ時代よりも充実した芸能生活を送っているように見える。

女子アナは通過点に過ぎない

 そんな先輩に続けとばかりに、入社から5年経った2019年3月に同じくTBSを退社した宇垣美里。以後はタレント活動をメインにコスプレ姿を披露したり、CMやドラマにも多数出演。さらにフォトエッセイやコスメ本などを出版するなど、活躍の場を多岐に広げている。

「特に宇垣さんはそれが明確に見えましたが、もとより“アナウンサーとしてずっとやっていきたい”のではなく、入社時より腰かけと言いますか、“とりあえずアナウンサーになって知名度を上げてからタレントになりたい、女優になりたい”という目的の女子アナも少なくはないと思います」(佐々木氏)

 では、彼女たちに共通する、テレビ局を退社してフリーになる決断をする「5年」の期間にはどんな意味があるのだろうか。

「一般企業においても“3年”は、これはまだ早い気がします。個人差はあれどもテレビに5年間出ていれば世間からの認知度があり、知識や経験も重ねて人脈も広げていると思います。そもそもがアナウンサーになれる優秀な人材ですからね。それでいて27歳、28歳と若さもありますから、彼女たちが転職をする一番いい時期なのでしょう。

 才色兼備のイメージが強くブランド力が高い“女性アナ”ですが、今の若い女性にとっては“なりたい職業”ではなく、“なりたい自分になるための職業”に変化しているのかもしれません。テレビ局にとっては、優秀な“人材流出”はたまったものではありませんが(苦笑)」(佐々木氏)

 テレビを見ないという世代だけに、若手アナの意識もまた変化しているのかも。