1996年の『アイスの実』、チョコ味・ミルク味が懐かしい!

 気温も高くなり、そろそろヒンヤリと冷たいアイスが恋しくなる時期。数多くの商品が並ぶ中、ロングセラーでありながら次々と新しいファンを獲得しているアイスがある。今年で発売から37年目を迎える「アイスの実」だ。

 子どもの頃はボックスだったような、ひとつの箱にいろいろな味の粒が入っていたような。フルーツだけでなくミルク味なんてのもあったようなーー。いつの間にか進化を遂げていたアイスの実。気になる質問を、発売元である江崎グリコのブランド担当者にぶつけてみた。

一気に“方向転換”のワケ

「アイスの実が誕生したのは、1986年。その時代は、ひと口タイプのスナック菓子やチョコレートなどが流行していて、アイスでもひと口で食べられるものがあったら楽しいのではないかというところから考案されたんです」
 
 そう話すのは、江崎グリコ アイスクリームマーケティング部の神頭渉さん。37年もの間、残り続けるロングセラーだが、発売当初は『アイスの実』という名前ではなかったという。

「最初は『キャンデーボール』という名前だったんです。発売から3年間はその名前で、1989年から『アイスの実』というブランド名になりました。容量は一粒7mlで、子どもの口でもスッと入り、なおかつ喉に詰まる心配のない大きさ。その大きさは発売以来、変わっていません」

 現在は袋のパウチ状で売っている『アイスの実』だが、30代以降の人の中には、箱に入った『アイスの実』が懐かしいと思う人もいるだろう。

「箱からパウチ状に変わったのは2009年。それまではずっと箱型で、最初は横型の箱でした。それが2001年くらいから縦型の箱に変わり、2009年に箱をやめてパウチ状での販売になりました」

 形状が変わったのには、こんな理由が。

「アイスの実の1粒形状を活かし、手軽にポイポイ食べてもらうために、開けてすぐ食べられるよう縦型の箱からパウチに変更しました。さらにパウチは直接アイスの実を口に入れられるので、手を汚さずに食べられるという利点があります。

 ちなみにパウチ状の開け方は2つあるんですよ。1つは一粒ずつ出すことができるプチオープン。もう1つがワイドオープンと言って、袋の開け口を大きく開けることができ、1度にたくさん取り出せる。こちらはみんなで食べるとき、容器に出して食べるときにオススメです」

 時代とともにパッケージを変えてきた『アイスの実』だが、もう1点、大きく変わったことが。それは味の種類。今は「ぶどう」「もも」など、単体の味で売られているが、発売当初はひとつの商品にさまざまな味がミックスされて売られていた。

「昔は4種類の味が入っているものがメインの商品でした。パウチになってからも4年ほどは、ミックスされたものが売っていたんです。そこから2013年に一新し、“一袋に一つの味”というものに切り替えました」

 それには消費者のこんな声が影響している。

「いろいろな味が入っていると、味を選べる楽しさがある一方で、4種類の味の中で1種類くらいはあまり好きじゃない味があるというお客様もいることがわかったんです。それだと好きではない味が残ってしまい、『アイスの実』を買わないという人も出てきてしまう。それなら自分の好きな味だけを思いっきり楽しんでもらいたいと、一袋に一つの味というように方向転換していきました」

「ミルク味」復活を望む声も

 人気商品にもそんな声があったとは。ちなみにいちばん最初に単体で売り出された味は「ぶどう」「もも」「オレンジ」の3種類だったという。 

 箱の時代には「ミルク味」が入っていたのも懐かしい。あのさっぱりとした、なんとも言えないミルクの味――。SNSでは今なお、その「ミルク味」の復活を望む声が聞こえてくる。

1989年『アイスの実』、まだこの頃は箱型だった

「ミルク味はここ10年以上販売していません。“ミルク味を食べたいです”というお声はもちろんお聞きしていますし、SNS上でも拝見しています。

 2008年くらいまではミルク味も入っていたのですが、そこからはフルーツに特化して、“フルーツアイス”という地位を確立していこうと。そのフルーツ路線に寄せていく中で、ミルク味がなくなってしまったという経緯があります。

 一方で、最近でもショコラやアーモンドミルク、カフェオレといったクリーム系も出しているので、ミルク味の復活が今後、まったくないかといわれると、ゼロではありません。かと言って、絶対出せますかと言われると、やはりそこはハッキリと言えないのですが(笑)」

 現在はその季節の旬のフルーツをメインにフレーバーが入れ替わっているが、ファンからはこんな声も。

「“あのフレーバーはもうないんですか!?”というご意見もいただき、ずっと同じフレーバーがいいのか、変えたほうがいいのか……ブランド担当者としても悩ましいところです(笑)。

 フレーバーは毎年どの月に変わるかハッキリとは決まっていないのですが、約3か月ごと、昨年は3月・6月・9月・12月にフレーバーを入れ替えました」

オススメの食べ方は「冷蔵庫から出して○分」

 2008年頃には、なんと1粒に2つの味をミックスした商品が売られていたことも。これまでたくさんのフレーバーが発売されてきたが、考案されたすべての味が商品化されるとは限らない。そこで、神頭さんが提案したものの商品化が叶わなかったフレーバーがあるか聞いてみると、

「スイカ味ですね。ただ当時は、スイカ味を求めているお客様がどのくらいいるのかとか、他のフレーバーに勝る点があるのかとか、色々な観点から考えていくとまだ商品化が難しく……。ただ個人的にはまだ密かに、発売してみたいと思っています(笑)」

 残念ながら商品化は叶っていないというが、ぜひ「スイカ味」も食べてみたい! 新フレーバーの開発にあたっては、その時々のトレンドを取り入れながら、「納得していただける商品を提案している」と神頭さん。

 もちろん、味だけでなくその形にもこだわりがあるそうで、手で持てるように、外は少し固めに、中は口どけ滑らかになるよう、2層構造になっているという。その丸い形はどう作られているのか気になるところだが、それについては“企業秘密”だとか。

「工場の製造ラインも、誰でも見ることができるものではないんです。アイスをまん丸にするのは実はとても難しくて。弊社ならではの技術となっています」

 最後にオススメの食べ方も教えてくれた。

「冷凍庫から出してすぐももちろん美味しいのですが、冷蔵庫から出して少し置いてから食べていただくのをオススメします。時間を置くことによって中のジェラート部分が溶けて、口の中でジュワッと、とろけるんです。社内では“7分がベスト”という結論に至ってます(笑)。また、丸くて可愛い特性を生かして、ドリンクに入れてアレンジしてくださっているお客様もいます。アイスの実のホームページでさまざまなアレンジレシピを紹介していますので、ぜひお試しください!」

 また、5月30日からは “キング・オブ・マンゴー”ことアルフォンソマンゴーの果汁・果肉を15%も使った「濃いマンゴー味」といった新フレーバーが発売される。

「1986年の発売以降、長く愛され続けているロングセラー商品ですが、一粒の満足感を追求し、技術進化を続けています。いつでもどこでも必要な時に一瞬で食べられるのがアイスの実。 “手軽に気分をリフレッシュしたい!”と感じた時の必需品として、毎日頑張る人たちの強い味方であり続けていきたいです」

 時代とともに変化してきた「アイスの実」。今後も“国民的アイス”として、売り場に残り続けることを願いたい。