中居正広

 7月1日の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)にデビュー25周年のKinKi Kidsが登場し、ジャニーズファンは大歓喜。

「SNSでは“神回”と絶賛する声もありましたね。ただ、世帯視聴率は7・8%と伸び悩みました。実は、『金スマ』は今年に入ってから2ケタを記録したことは一度もなく、5%を切ることも珍しくない。かつては20%をたたき出すこともあった人気番組ですが、このところ低迷が続いています」(テレビ誌ライター)

番組スタッフが刷新されて……

『金スマ』は'01年にスタートし、中居が司会者としての地位を確立した番組でもある。芸能人の波瀾万丈の人生を振り返ったり、ベストセラー本の検証をするなどさまざまな企画を扱ってきた。ところが、

最近ちょっと企画の傾向が変わってきたんですよ。芸人の所属事務所特集や人気タレントとの対談といった、バラエティーではありがちな企画が多くなりました。以前はシニア層を意識したタレントやテーマを選び、レギュラーパネラーには大竹しのぶさんや假屋崎省吾さんが起用されていたのですが、現在は不定期での出演となっています。ターゲットを若い世代に変えたようですね」(同・テレビ誌ライター)

SMA特集では、M-1王者の錦鯉ほか32名が出演(公式ツイッターより)

 昨今のテレビ業界では、広告収入に直結するといわれる49歳以下の“コア視聴率”を重視する傾向にある。全世代的にテレビ離れが進む中で、『金スマ』も番組内容の再検討に追われているという。

'20年の秋ごろから、総合演出とチーフプロデューサーをはじめとした番組スタッフを刷新しています。翌年の'21年には放送開始から20周年を迎え、大幅リニューアルを敢行。『ひとり農業』『社交ダンス』以外のレギュラー企画が消え、スタジオセットも一新しました」(同・テレビ誌ライター)

“若いスタッフの立場が弱い”現場

『金スマ』も新しい試みに挑戦しているわけだが、その効果は出ていないようだ。

 4月に放送した『SMA芸人大集合SP!』はコア視聴率が2・2%。6月に放送した『ものまねSHOW3時間SP』も2・4%を記録するなど、コア視聴率が2~3%台を推移しているのが現状だ。

若者の間で知名度の高い俳優やアーティストを起用していますが、そもそも今の若い人は“狭く深く”興味を掘り下げる人が多く、自分の好きなジャンルのタレント以外には興味がないんです。“推し”の登場する回を見てくれたとしても、前後回の放送も見てくれるとは考えにくいですね。人気の芸能人を起用しておけば見てもらえるだろうという勘違いが、視聴者と制作サイドの間にズレを生じさせているんです」(制作会社関係者)

 若い視聴者の嗜好を把握できていないのは、『金スマ』制作現場の環境にも問題があるという。

若いスタッフの立場が弱いままで、上司に意見を言いにくい環境だと聞きます。ひと回りもふた回りも年の離れた大人を中心に、“今の若者たちが面白いと思っていること”を考えているので、その結果、求めていたコア視聴率も大して伸びず、従来の視聴者も番組を見なくなるという負のスパイラルに陥っているのだと思います」(同・制作会社関係者)

『金スマ』のイメージ刷新がうまく進まないのはなぜか。エンタメ事情に詳しいライターの永見薫さんに話を聞いた。

間口が広いようで狭い

長寿番組ですから、視聴者にとっての“『金スマ』らしさ”はすでにできあがっています。番組のコンセプトを“刷新します”と宣言したところで視聴者は簡単には受け入れられないし、何も言わずにスッと変えられても違和感が残るでしょう。リニューアルするのであれば、番組を終了して、中居さんをMCに据えた新番組を作るのが一番なんですが……長年積み上げた知名度があるので、簡単には踏み切れないでしょう

 テレビを持っていない若者が増えるなか、“若い視聴者を獲得する”と難題に挑んだが、方針がブレて、番組内容が中途半端になった。

「芸人さんや人気俳優の特集は、確かにそのタレントのファンにとっては興味を引かれる内容なのかもしれませんが、それ以外の視聴者への間口を狭めてしまう。また、毎回テーマがバラバラなので固定的なファンを獲得するのも難しい。誰にでも親和性のある共通項などがないので、間口が広いようで狭いんですね」(永見さん)

『金スマ』に慣れ親しんできた従来のファン離れも止まらない。

「軸が定まっていないため、『金スマ』が何をしたいのか視聴者に伝わらないという状況になってしまっています。金曜夜のテレビ番組に求められていたのは視聴後の安らぎや心の充足感。以前の『金スマ』には、リセットして週末を過ごせるような面白さがあったのですが……」(永見さん)

『金スマ』が本当に大事にするべきなのは、Z世代ではないのかも。

永見 薫(ながみ・かおる)                         2014年より地域情報誌にてライター活動を開始。以降インタビュー記事やコラムを中心に執筆。主な寄稿先は「東洋経済オンライン」「SUUMOジャーナル」「さんたつby散歩の達人」「ダ・ヴィンチWeb」「文春オンライン」など