薬剤師がアセトアミノフェン「カロナール」について解説します

 新型コロナウイルス感染症などで、発熱や痛みがあるときに医師が処方してくれる解熱鎮痛薬の「カロナール」の不足が問題になっています。発売元の製薬企業は、すべての注文に対応することが難しくなっていることを受け、出荷量を調整するため厚生労働省と検討を始めたそうです。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 もし今、高熱が出たら飲む薬はなく、ガマンするしかないのでしょうか。3回目、4回目の新型コロナワクチンを接種しようと思っている人は、接種部位が痛くなったときに飲む薬がなかったら、痛みに耐えるしかないのでしょうか。

 結論からいうと、カロナールの代わりに使える薬はありますから、心配しなくても大丈夫です。

「カロナール」は商品名

 カロナールが不足しているというニュースを見聞きして、「コロナに感染したり、ワクチンを接種したりしたときに熱や痛みが出たら、ほかの薬は使えるの?」「もし、代わりの薬がなかったら、ひたすらガマンするしかないの?」。そんなふうに不安になった人がいるかもしれません。

 でも、どうか安心してください。繰り返しになりますが、カロナールには代わりになる薬があります。

 少しややこしいかもしれませんが、「カロナール」は解熱鎮痛作用がある「アセトアミノフェン」という薬の成分につけられた商品名です。

 食品で例えると、わかりやすいかもしれません。

「ミネラルウォーター」には、「い・ろ・は・す」「天然水」「クリスタルガイザー」「ウィルキンソン」など、メーカーによってさまざまな商品が販売されていますよね。それと同じように、「アセトアミノフェン」という薬の成分に対して、複数の製薬会社がさまざまな商品名をつけて販売しているのです 。

 それが以下の表になります。

東洋経済オンライン

 これを見ていただけるとわかりますが、カロナール以外にも同じ成分の薬はいくつかあります。

 薬局では、患者さんの治療に必要な薬を確保するため、カロナールが入荷しづらくなった場合には、ほかの製薬会社から同じ成分の薬を取り寄せるなどの対処をしています。ですから、薬が足りなくて手に入らないということは、ほとんどないのです。

 新型コロナの第7波の影響で、最近は医療機関の発熱外来がたいへん混雑し、熱が出るなど具合が悪くなったときに予約がとれず、受診できないことが問題になっています。

 いざというときのために、医療機関で処方してもらうカロナールと同じ成分であるアセトアミノフェンを、薬局やドラッグストアなどで買って自宅に備えておこうと考える人もいるのではないでしょうか。

 また、3回目、4回目の新型コロナワクチン接種後の発熱や接種部位の痛みに備えたいという人もいるかもしれません。

 そこで、ドラッグストアや薬局で処方箋なしで購入できるアセトアミノフェンを成分とする市販薬にはどのようなものがあるか、ご紹介します。

■成分名がアセトアミノフェンの一般用医療薬(市販薬)
・タイレノールA  製造販売:東亜薬品/販売:ジョンソン・エンド・ジョンソン
・ノーシンアセトアミノフェン錠  (製薬会社)アクラス
・ラックル  (製薬会社)日本臓器製薬
(出所)JAPICのデータベースより 東洋経済作成

非ステロイド性抗炎症薬も使える

 なお、ワクチン接種後の発熱や痛みについては、アセトアミノフェンを成分とする市販薬以外に、イブプロフェン (商品名:リングルアイビー、ノーシンエフ200など)や、ロキソプロフェン(商品名:ロキソニンS、ユニペインLなど)などの「非ステロイド性抗炎症薬」という種類の解熱鎮痛薬も使用できると、厚生労働省のウェブサイトに書かれています。

非ステロイド性抗炎症薬はアセトアミノフェンと違ったメカニズムで、痛みや発熱を抑えます。頭痛や生理痛で使ったことがある人もいるかもしれません。

選択肢が広がったことはうれしい一方、種類が多くてどれを選べばいいかわからないということもあるでしょう。その場合には、遠慮なく薬局やドラッグストアの薬剤師に声をかけてください。

また、治療中の病気があって薬を飲んでいる人などは、薬の飲み合わせの問題で服用を避けたほうがいいケースもあります。不安なことや心配なことがあったら、少し面倒かもしれませんが自己判断で服用する前に主治医や薬剤師に相談しましょう。


高垣 育(たかがき いく)Iku Takagaki
薬剤師ライター、国際中医専門員
2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。毎週100人ほどの患者さんと対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。