小林久美子被告がマッチングアプリに登録していた自撮り画像

 滋賀県愛荘町のアパートで同居していた男性に暴行し、十分な食事を与えずに衰弱死させたとして、傷害致死などに問われていた小林久美子被告(57)。この裁判員裁判の判決が3月24日、大津地裁(畑山靖裁判長)であり、被告には懲役24年の刑が言い渡された。

 起訴状によると、小林被告は同居する息子の蒼斗被告(仮名・21、以下同)とともに2019年6月から10月にかけて無職の岡田達也さん(当時25)に暴行を加えたほか、食事制限して衰弱させ、敗血症性ショックで死亡させたなどとされている。

 57歳の女と25歳の男、32歳の歳の差がある2人に何があったのかーー。裁判では凄惨な“虐待”が次々と明るみになった。

小林被告は、娘の夢子(仮名・34)と奥さんがいる岡田さんが不倫関係に陥ったことから、岡田さんとの交流が始まったといいます。夢子さんと蒼斗被告とアパートで同居を開始し、その直後から岡田さんへの虐待が始まった」(社会部記者)

 岡田さんは身長174センチで、亡くなった当時の体重は36.8kgしかなかった。

 裁判で明らかにされた岡田さんへの暴行は、目を覆いたくなるような内容だった。

裁判が行われた大津地裁

《岡田さんにゴキブリの足を食べさせた》《食事制限をし、3日に1度食べられるものは腐った味噌汁かけご飯だった》《小林被告の号令で公開スパーリングが始まり岡田さんは無抵抗に殴られる》《岡田さんの体には古いものも新しいものも含めて骨折や火傷の跡が10数箇所あった》

 公判に現れた小林被告は腰まで伸びた白髪のロングヘアにむくんだ顔、猫背で丸まった姿は、実年齢の57歳をはるかに超える印象で、まるで老婆。この老婆こそが複数の男たちを暴力で支配していった女だというんだから驚きだ。

 事件前、小林被告と一時期、同棲していた坂野さん(仮名・30代)が匿名を条件に週刊女性の取材に答えてくれた。(編集部注※坂野氏の特定を防ぐために一部事実を変更しています)

「絶対に30代ちゃうやろ」

 小林被告はマッチングアプリを利用し「吉川あいり」や「福田あいり」と名乗り、年齢を30代と偽って登録していた。坂野さんと出会った頃の小林被告の年齢は40代後半。

 坂野さんが初めて小林被告と会った日のことを振り返る。

岡田達也さんが監禁され、死亡した現場アパート

「会うまでに写メのやりとりをしていて、どの写真もギャル風味で微妙に顔の一部を隠していたから、さばを読んでいるんだろうなというのは想像していました。電話で話した時の声はガサガサで明らかに30代ではありませんでしたから。自分は年齢にこだわりはなかったので別にいいやと思っていました。

 それでも実際に現れた“あーちゃん”は正直汚かった。目は二重にするために変なアイプチをしている上に、つけまつげでゴテゴテで」

 小林被告は交際相手や知り合った相手に“あーちゃん”と呼ばれることを好み、実子でさえも久美子という本名は知らなかった。

「でも優しくてマメで、その日のうちに肉体関係を持ったんですけど、それも上手だった。それで心を許してしまったというか、持っていかれましたね」(坂野さん、以下同)

 肉体関係を持った坂野さんは、小林被告の住むアパートで同棲することに。

「行ってみたら小学生の男の子となんだか心に闇を抱えているような若い男女がいて、その2人はやせ細っていて暗い感じがしました。あーちゃんに聞くと、小学生は息子の蒼斗だと紹介してくれました。すごくかわいがっていて僕よりも蒼斗を優先する感じでした。2人の男女は知り合いの子どもを預かっていると紹介されましたが、実はあーちゃんの子どもだったと、後に知りました。だけど、3人とも実子なのに蒼斗以外の2人へはまったく愛情を感じなかった

気絶するまで殴り合いをさせた

 坂野さんが見たという2人の男女とは、小林被告の次女・らら(仮名・28、以下同)と次男・コウタ(仮名・29、以下同)だった。2人もまた虐待を受けていた。坂野さんの告白は続く。

「あーちゃんと蒼斗には寝る場所があるのに、ららとコウタには寝る場所もなく、玄関の横の場所にずっと座らされていた。あーちゃんの号令で2人で殴り合いをさせ、どちらかが気絶するまで終わらない地獄のような遊びもありました。申し訳ない話なんですけど自分も何度かコウタのことを殴ったことがありました。あーちゃんから“金を盗まれた”とか“コウタがあんたの悪口言うとったで”とか聞かされて、自分も気が短いんでカッとなって。でも彼らは反撃してこないんですよ。衰弱しているから。あーちゃんは蒼斗と自分だけにご飯を食べさせて2人には与えないんです」

小林被告の暴力支配をめぐる人物相関図

 坂野さんは自分が見た光景から、死亡した岡田さんが置かれていた状況が容易に想像できたという。

「ららとコウタにも食事制限をしていて、たまに腐った味噌汁を与えるくらい。それでもお腹が空いているから食べるんですけど、それを見てあーちゃんが“人間じゃないな”と言うんです。コウタはまだしも、ららは女の子だし、かわいそうになって。あーちゃんに“やめたれや”と言ったんです。そこから態度が急変して“私はヤクザの娘や、おまえの家族もろとも潰したる”って脅されるようになりました。さらに蒼斗を泣かせたとイチャモンをつけられるようになって、知らない強面の男が出入りするようになって自分も殴られたりするようになったんです」

 成人男性であれば、身長150センチ弱の小林被告に負けるとは思えないが、坂野さんは「恐怖しかなかった」と当時を振り返る。

「あの場にいたら確実に死んでいた」

「実在するヤクザの名前を使って脅してくる。妙にリアルだから信じてしまったんですね。こっちも実際知らない男に殴られて頭がボーッとしてるし、日中もGPSをつけられてすべて監視のもとにあり、逃げられないと思いつめてしまった。また、実家も知られているし家族に危害が及ぶのが怖かった

 坂野さんはあとから同居してきた謎の男と小林被告に暴行を振るわれるようになり、小林被告の実子のららとコウタと同じ立場になる。

「ご飯を食べさせてもらえず、あーちゃんたちが出かけた隙に落ちていたスナック菓子を食べたり。それが見つかると木刀でボコられる。“臭い”“汚い”と言われるんですけど風呂に入ったら怒られるし、でも目を盗んで1週間に1回程度シャワーを浴びるとそれがバレてまたボコられる。火で熱した鉄の棒を押し付けられて火傷が膿んでしまっていて、その傷口から悪臭がするんです。でも正直、この頃の記憶はあまりないです。今でも似たアパートを見ると恐怖で足がすくみますね」

 坂野さんは2ヶ月程度で脱走することができたというが、

「あのままあの場にいたら確実に死んでいた」

 と振り返る。

アパートの小林久美子宅前にはゴミが散乱していた。近隣住民によると普段からゴミを放置していたという

あーちゃんの人生は嘘だらけ

 小林被告は岡田さんを衰弱死させた事件の裁判員裁判の前に、別の3人の男性への傷害容疑で起訴され、昨年の10月から裁判が行われていた。岡田さんに対する暴行といずれも手口は同様で、男性らを衰弱させ監禁、暴行していた。うちひとりの被害者は救急搬送時に体重が32kgしかなく、現在でも脳に障害が残っているという。

証人として現れた人物は誰も小林被告の本名を知らなかったし、年齢も知らなかった。実の子どもにも“あいり”と名乗っていた。

 また、実子の人数も把握している人はいなかった。小林被告には複数の婚姻歴があり、6人の子どもを産んでいます。うち1人は自殺していて、もう1人は夫側に引き取られたので小林被告との関係はほぼない。今回、小林被告と共謀し逮捕された蒼斗以外の実子は、いずれも小林被告から虐待を受けているんです」(司法記者)

 岡田さんへの暴行容疑で逮捕起訴された蒼斗被告に対しては法廷内で涙を見せた小林被告。

「11月に行われた被告人尋問の席上で、蒼斗被告の父親からもらった養育費を使い込んだことを問われた小林被告は涙を見せ、“蒼くんに悪いことをした”と言ったんです。散々ひどい暴行をした被害者たちへは見せなかった涙を見せた。あの涙は本物のような気がしました」(司法記者)

 前出の坂野さんも、

「なぜ蒼斗だけかわいがっていたのか。蒼斗の父親はあーちゃんを恐れて失踪中と聞いていました。何回か裁判を通してわかったのは、あーちゃんの人生は嘘だらけだなと。自分でも自分のことがよくわかっていないんだと思います」

 小林被告が控訴しなければ、懲役24年の刑が確定となる。


 
小林久美子被告がマッチングアプリに登録していた自撮り画像

 

岡田達也さんが監禁され、死亡した現場アパート

 

アパートの小林久美子宅前にはゴミが散乱していた。近隣住民によると普段からゴミを放置していたという

 

小林被告の暴力支配をめぐる人物相関図