市川猿之助

 6月27日、一家心中事件を起こした市川猿之助容疑者は、自身の母・延子さんの自殺を幇助した疑いで逮捕。原宿署へ移送され、取り調べが続いている。

「彼は、自身のハラスメントを告発する記事が掲載される『女性セブン』の発売日だった5月18日に合わせて心中を決行。父の市川段四郎さんと母親に向精神薬を飲ませ、両親が意識を失うのを見届けた後に自殺を図りましたが、死にきれず。もうろうとしているところを自宅にやって来たマネージャーたちに保護されました」(ワイドショースタッフ)

猿之助を見限り始めた芸能界

 今後、この心中事件はどのような展開になるのか。弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士にこれから起こりうる流れを聞いた。

「猿之助さんの勾留期間中は、母親の自殺幇助罪について捜査されることになりますが、取り調べでの供述内容などから別の犯罪で起訴が相当と判断される可能性もあります。また、段四郎さんに対する犯罪については、検察の判断になるので確実なことは言えませんが、起訴内容がまとまるにはまだ時間がかかるでしょう。

 加えて猿之助さんには、両親への加害以外に、認知症などのご病状にあった段四郎さんに対して“保護責任者遺棄致死罪”が成立する可能性や、心中で使用された薬物が報道どおりのものであれば“麻薬及び向精神薬取締法違反”が成立する可能性もあります」

 さらに、父親に対する殺人罪まで一部で報じられたが、すでに芸能界はこの逮捕によって猿之助を見限っている。

「逮捕翌日の28日には、『NHKオンデマンド』で猿之助さんが出演していた大河ドラマ『風林火山』など9タイトルが配信停止になると発表。すでに劇場版『緊急取調室』は公開延期が発表されていますし、出演が決定していた'24年の舞台『スーパー歌舞伎セカンド 鬼滅の刃』も公演中止の可能性が浮上。猿之助さんは歌舞伎のみならず、映画やドラマでも活躍していましたから、逮捕の影響は甚大ですよ」(前出・ワイドショースタッフ)

 捜査関係者によれば、猿之助は任意聴取中に“歌舞伎界に戻るつもりはない”と漏らすなど芸能界への未練を断ち切ったと語られているが、彼が率いていた歌舞伎一門・澤瀉屋は途方に暮れている。

“リトル猿之助”と呼ばれた歌舞伎役者

「澤瀉屋のトップは市川猿翁さんですが、近年は体調が優れず、実質的には猿之助さんが一門のリーダーでした。彼は役者としてだけでなく、舞台の演出や企画なども手がけて澤瀉屋を引っ張ってきたのに、今回の逮捕ですからね。今後は澤瀉屋の公演や、所属俳優の待遇面にも影響を及ぼすでしょう」(松竹関係者、以下同)

 澤瀉屋には猿之助のいとこで、高い演技力で知られる香川照之と、その息子で将来は『猿之助』の名跡を継ぐとされる市川團子がいるが……。

「香川さんは歌舞伎歴が約10年と経験不足。團子さんは猿之助さんの代役を務めて注目されていますが、まだ10代とリーダーを務めるには若すぎます。猿之助さんの穴を埋めるだけの役者は、今の澤瀉屋にはいないんです」

 この窮状に澤瀉屋内で、ある人物の復帰が待ち望まれている。一時は『猿之助』を継ぐといわれた市川右團次だ。

左から市川團子、香川照之、市川猿翁

「大阪の日本舞踏の家に生まれた右團次さんは、11歳のときに猿翁さんが直々にスカウト。中学進学と同時に単身上京し、歌舞伎役者・市川右近として猿翁さんの元で稽古に励むと徐々に頭角を現し、20代半ばで“リトル猿之助”と称されるほどになりました」

 猿翁の芸を吸収し、舞台の主役を張れるほどの役者になった右團次は、いつからか『猿之助』を継ぐといわれるようになった。'10年に掲載された雑誌のインタビューでは右團次自身も、血縁に縛られず実力ある役者を起用する猿翁に出会えて幸運だったと語るなど、『猿之助』の継承を見越したような発言もしていた。が、'11年に開かれた澤瀉屋の襲名披露会見では……。

「結局『四代目・猿之助』の名跡は猿翁さんの甥である現・猿之助さんが継承することに。同時に香川さんと團子さんが歌舞伎界入りし、澤瀉屋のトップは猿翁さんの血縁者で固まってしまいました。以後、澤瀉屋の公演でいい役は猿之助さんが務めるようになり、右團次さんは脇に収まることが増えました」

市川右團次を直撃!

 手のひら返しともいえる経緯もあってか、'16年には上方歌舞伎の名跡である『右團次』を継ぐと同時に澤瀉屋を離脱。以降は市川團十郎ら成田屋との共演が増えるなど、澤瀉屋と距離をとっていった。

「このままでは澤瀉屋が沈むのは時間の問題。猿翁さんの芸を40年以上学んできた右團次さんが務める以外、一門の未来はないかもしれません」

 強まる市川右團次の“澤瀉屋復帰論”を本人はどのように受け止めているのか。猿之助の逮捕が報じられて間もない6月下旬、車で帰宅する右團次を直撃。

車の窓越しに声をかけるも“澤瀉屋”と聞くと表情が曇った市川右團次

 停車中の窓越しに、かつての同門・猿之助の現状や澤瀉屋復帰の意向について質問を投げかけるも、険しい顔で手を左右に振るなどのジェスチャーをするのみで、去っていった。

「右團次さんからすれば、自身を冷遇した澤瀉屋の凋落は、溜飲が下がる思いでしょうが、同時に自身を育ててくれた一門を助けたいという気持ちもあるでしょう。今まさに心が揺れ動いているかもしれません」

右團次の決断はいかに─。

正木絢生代表弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。慶應義塾大学法科大学院卒業。第二東京弁護士会所属。bayfm『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組『news イット!』(フジテレビ系)などメディア出演も多数。相談しやすい身近な弁護士。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。

 
車の窓越しに声をかけるも“澤瀉屋”と聞くと表情が曇った市川右團次
1月の初舞台で高い評価を得た二代目右近と父の右團次

 

市川猿之助とM氏のツーショット(M氏のインスタグラムより)
市川猿之助とM氏のツーショット(M氏のインスタグラムより)

 

MのSNSには頻繁に市川猿之助の姿が(Mのインスタグラムより)
Mと父親は市川猿之助舞台で親子共演することも(Mのインスタグラムより)

 

Mと父親は市川猿之助の舞台で親子共演をしていた(Mのインスタグラムより)
2012年に病気を患い、表舞台から遠ざかっていた市川猿之助の父・市川段四郎さん