森永卓郎

「畑仕事は家計も助ける。予測不能なこれからの社会では、トカイナカ(都会と田舎の中間)に住んで、マイクロ農業と仕事を“兼業”することがセーフティーネットになります」

 と主張しているのは、経済アナリストの森永卓郎さん(66)。

 マイクロ農業とは、本格的な農業には及ばずとも家庭菜園より少しだけ本格的な農業のこと。

「食料品の値上げが続く中、畑仕事は節約につながることも魅力。うちの畑はビニールハウスがないので冬場は野菜を買いますが、それ以外は自給。肉や魚は買いますが、食費は半減。私の感覚では、畑が5坪あれば家族で食べる量は十分作れる。食費が減るのに加え、さらにその分の消費税を払わなくて済むメリットもあるんです」

 現在はテレビ・ラジオで活躍する傍ら、埼玉県所沢市の自宅近くで60坪の畑を耕している。

 森永さんが農業に興味を持ち、畑を始めたのは2018年のこと。群馬県昭和村の畑でプロのサポートを得ながら体験農業の形で始めた。コロナ禍で群馬に行けなくなった3年前からは、自宅近くの畑を借りて自ら野菜作りを続けている。

スーパーで買える種類のほとんどを作る

「最初は蒔いた種の半分くらいの量しか収穫できませんでしたが徐々に上達。去年は難しいのを承知で、作ってみたかったスイカに挑戦したところ60個収穫でき、周囲からも大絶賛でした」

 現在収穫できるのはトマト、ミニトマト、きゅうり、なすなど、25種類ほど。スーパーで買える種類のほとんどを作ることができるという。

 機械を使わずに管理できる限界を超えた面積があるため、農作業は常に忙しい。畑に通うのは農閑期を除いて毎日。夏場は朝晩行っている。

「鍬一本で畑を耕し、石灰や堆肥を入れて、苗を植えて種を蒔く。そうした作業をすべて人力で行っているので、筋トレの代わりになります。私はライザップのCMに出ていますが、農作業で1回畑に行くとライザップ2回分の運動量になります(笑)。農閑期はジムに行かないと筋肉が落ちるんです」

 夏場の高温、台風、水不足、虫、病気、鳥、動物など畑仕事の敵はたくさんで、失敗の原因がわからないこともたくさんある。

「去年はカラスにスイカをずいぶんやられました。今年はガードを固めたこともあり、カラスにはやられませんでした。その代わりに猛暑が続いて10個以上のスイカが爆発してしまいました。ただ、そういった困難を乗り越えて収穫できたときの喜びは大きい」

 採れたての野菜を食べ慣れるとスーパーで売っている野菜では物足りなくなるという。

「同じミニトマトでも味の濃さや鮮度が全然違います。ミニトマトは、千葉の生産農業法人から取り寄せた苗がお気に入り。とても糖度が高くて、店で買うミニトマトとは桁違いに美味しいんです。夏場は毎日バケツ一杯ほどを収穫していました」

 実はもともと野菜嫌いだったというが、自分で作り始めてからは食べるようになったそう。

「自然と野菜中心の生活になって健康にもいい。これから畑を始めたいなら、こまめな水やりを考えて、絶対に自宅の近くがいい。大都市でやると高い地代がかかるので、トカイナカ暮らしが一番です」

(取材・文/野中真規子)

 

埼玉県所沢市にある約60坪の畑で農作業。自宅から近くの場所で毎朝のように通う森永卓郎さん

 

トマトやきゅうり、なす、大根などさまざまな野菜を育てていて、家計の助けになると話す森永卓郎さん

 

森永卓郎さんがつくる農作物