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「投資、始めてみたいとはずっと思っているんだけど……」

「そもそも仕組みがややこしすぎて、よくわからない!」

来年から新制度がスタート!老後資金や家計の足しに活用すべき?

 そんな、投資未経験の超初心者にぴったりなのが『NISA』

 18歳以上であれば誰でも少額で投資が始められ、何よりも国が国民の資産形成と投資推進のために作った制度だから、わかりやすく初心者にやさしい。

 金融庁の調査では、今年6月末の時点でのNISA口座開設数は約1940万を突破。特に30~50代の利用が目立つという。

 2024年1月からは、現行の制度をより使いやすく改正した『新NISA』がスタートする。だからこそ、始めるには今がタイミング!

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 あれこれ難しいことは抜きにして結局、何をどうするべき? ファイナンシャルプランナー・長尾義弘さんに、日本でいちばんやさしい新NISAの解説をお願いした。

「NISAとは、少額、非課税で始められる投資制度のことです。投資といっても、初心者はどう始めて何を買えばいいか判断が難しいですよね。現在、日本では投資信託だけでも約6000の銘柄があります。

 しかしNISAのつみたて投資枠では金融庁が、初めから低リスクで運用が安定している約200種類の銘柄を厳選してくれています。だから、初心者でも銘柄が選びやすいのが特徴なんです」(長尾さん、以下同)

 初心者が始めやすい理由はそれだけではない。

 通常、株や投資信託の売買で得た利益や配当益には約20%の税金がかかる。例えば、年間10万円の利益が出たとしても、そのうち約2万円は税金で消えてしまう。

 しかし、来年から始まる新NISAでは、年間あたり最大360万円までの投資で得た利益には税金がかからない。

 つまり、多数の投資銘柄から投資しやすいものを国があらかじめ選んでくれて、そのうえ非課税なのが新NISAというわけだ。これならずいぶんと投資への敷居も低くなる。

口座開設は手数料無料のネット証券がお得

 新NISAを始めるうえでまず必要なのがNISA口座。最近ではテレビCMも盛んだが、どこで口座を開けばいいのだろうか?

「初心者がやりがちな失敗が、いつも行き慣れた銀行でNISA口座を開いてしまうこと。口座開設は断然ネット証券がおすすめです」

 基本的に株や投資信託の売買には手数料が発生するが、SBI証券や楽天証券などネット証券の一部はNISA口座での売買手数料を無料としている。

 それに比べて銀行や大手証券の多くではこれまでどおり数%の手数料が必要なため、取引のたびに数百円~数千円の費用がかかる。また取扱銘柄数も、ネット証券に比べて銀行は圧倒的に少ないのだ。

「手数料も高く、投資商品も少なく、何ひとついいことがない。初心者だからといって、NISA以外の投資をすすめられたりする可能性もあるので、銀行などには近づかないようにしましょう(笑)」

初心者はリスクの低い投資信託がおすすめ

 ところで、現行のNISAと、来年からの新NISAではどのような違いがあるのだろう。

「これまでの一般NISAは最大で120万円しか使えなかった非課税投資枠が合計360万円まで増えたり、限定されていた非課税保有期間が撤廃されたりと、いいことずくめ。

 さらに、新NISAでは『つみたて投資枠』と『成長投資枠』の2つを併用できるようになったことにも注目です」

現行NISA

 新NISAのつみたて投資枠は、現行の『つみたてNISA』を引き継いだもので、投資信託を対象とする。これまで年間投資枠は40万円までとされていたが、新制度では120万円に増額される。

 一方、成長投資枠は現行の『一般NISA』を引き継いでおり、一般株式への投資も可能。こちらもこれまで120万円だった年間投資枠が、240万円に増額されることに。

 しかも、これまでつみたてNISAと一般NISAは併用できなかったが、新NISAでは両方利用できる。これも大きな違いのひとつだ。

「初心者は株よりも比較的リスクの低い投資信託から始めるのがおすすめ。まずは、新NISAのつみたて投資枠を使ってみましょう」

新NISA

 国が投資信託銘柄を厳選しているとはいえ、それでもその数は200近くもある。いったい何を選べばよいのか。

「初心者は、まずオール・カントリー一択。これを毎月積み立てるだけで十分です」

 オール・カントリーとは『eMAXIS Slim 全世界株式』の通称名で、その名のとおり全世界の企業の株式を対象とした投資信託だ。

「40か国以上、2800以上の複数の銘柄で構成されており、その中には誰もが知るアメリカの大手企業『アマゾン』『マイクロソフト』『アップル』なども含まれています」

 長尾さんがオール・カントリーをすすめる理由は3つ。

・先進国、新興国を中心とした複数国に分散投資しているのでリスクが低い。

・世界全体のGDPはここ60年ずっと伸び続けているため、今後も必然的に全世界式市場が右肩上がりとなる可能性が高い。

・信託報酬が安い。

 このうち信託報酬とは、投資信託を管理・運用するために支払わなければならない経費で、保有額のおよそ0.5~2.5%であることがほとんど。当然低いほどコスパがよく、オール・カントリーは0.05775%に設定されている。

 投資初心者では売買手数料とともに、信託報酬の負担をできるだけ抑えることが基本だ。

すぐに売却せず長期展望を持って運用を

 ちなみにこのオール・カントリーは、3年で約19.7%(10月末時点)のプラスの利回りとなっている。つまり、3年前に100万円分投資していたとしたら、現在はおよそ119万円になっている計算だ。

 しかしここ半年だけで見ると、約4.19%のマイナスに。ウクライナや中東情勢などが影響していると思われるが、いくら低リスクとはいえ、投資に「絶対」はないということは新NISAも同様。

「NISAの基本は、“長期・積立・分散”の3つです。つまり、長い期間で毎月少しずつ資産を積み立てていき、さらに投資を分散することでリスクに備えます。数か月、数年間のあいだに、上がった下がったと一喜一憂しないことが大事です」

資金が減ったからといって一喜一憂せず、長い目で見るのが大事 ※写真はイメージです

 とはいえ、せっかく積み立てた資金がマイナスになっては気が気でないことも確か。

「金融庁では、2014年にNISA制度がスタートしてから定期的に利用者の調査を行っています。それによると、制度開始当初は、約2割の方が1年程度で投資をやめてしまっているんです。つまり短期のマイナスに耐え切れず、せっかく投資した分を売ってしまっているんですね。

 確かに、リーマン・ショックや新型コロナなどで、これまでも一時的に株価が急落したことはありました。それでも長期的なスパンで見れば、ゆるやかに右肩上がりになっていることを理解しておきましょう」

 30~40代の子育て世代は、学資保険の代わりに新NISAを活用するのも手だ。

「今の学資保険は、元本割れの商品もあり、ほとんど増えません。だったらその分の資金を、子どもの大学受験のときまでNISAで運用しておくほうが、メリットが大きいと思います」

 50~60代以上では、老後資金の積み立てや退職金の運用先としても活用できる。

「新NISAでは、1人当たり1800万円の非課税保有限度額が新たに設けられます。利点は、限度額を使い切ったとしても、売却すればまたその分の枠が復活すること。

 例えば500万円分売却してしまえば、また翌年にまるまる500万円分の枠が復活するんです。これだけの限度保有額であれば、退職金も上手に運用できるはず。銀行なんかで下手に退職金運用プランを契約しちゃったら、損しますよ(笑)」

 NISAを始めたら、例えば子どもの大学進学のタイミング、介護が必要となったタイミングなど、大きな資金を必要とするときまで決して売却しないことが重要だ。

「長期の積立なので、個別株と違い、なるべく低い価格で買い、もっとも高い価格で売るなどの考え方は必要ありません。チャートの推移をいちいち気にせず、10年、20年放っておける人のほうが向いていますね(笑)」

退職金などを活用して老後資金作りをするのもひとつの手 ※写真はイメージです

 “億り人”“FIRE”などの言葉がひとり歩きするように、初心者は投資に対してどうしても「一獲千金」のイメージを抱きがち。

 新NISAに関してはそのようなハイリターンは期待できない代わりに、ローリスクで着実な投資が期待できそうだ。

 物価高が進み、賃金は上がらず、年金制度への不安も募るなか、自分の身を守るひとつの手段として始めてみてはいかがだろう。

教えてくれたのは……長尾義弘●ファイナンシャルプランナー(AFP)。出版社勤務を経て、『NEO企画』を設立。著書に『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)など

(取材・文/植木淳子)