セレブが多く住むタワーマンション ※写真はイメージです

 今月24日、東京・港区に開業する複合施設「麻布台ヒルズ」。エリアの目玉は、超高級マンションだ。最上階のペントハウスの価格は非公開だが、およそ200億円で売約済みという。どんな富豪が買ったのか想像もつかないが、そんな一般人には雲の上の存在である富裕層を多く見てきたのが、東京国税局で相続税調査を担当していた、小林義崇さんだ。

「亡くなった方がどのように富を築いたのか、隠し財産はないかなど、仕事内容や家族の預金にいたるまで、あらゆる個人情報を集めるのが仕事でした。調査対象の1億円以上の資産を持った富裕層が、最も多く住んでいるのが東京。プライベートを知るにつれ、大きな発見や学びがありました」(小林さん、以下同)

“慎ましく、まじめな暮らしぶり”

 小林さんが富裕層の実態に興味を持ったのは、自身の生い立ちとも関係がある。

「母子家庭で育ち、高校・大学と合わせて1000万円の奨学金の返済を抱えていました。お金の苦労というのを、子どものころから身をもって知っていて……。富裕層のことを知れば、お金に悩まされない人生のヒントがあると思い、入局後、相続調査部門への配属を希望したんです」

 そんな小林さんが驚いたのは、富裕層の“慎ましく、まじめな暮らしぶり”。持ち家に住み、服装や持ち物は地味め。子どもへの教育には糸目をつけないが、派手な趣味で散財はしない。シニア世代になっても仕事を趣味とし、リタイアせず生涯現役で働く。

「富裕層は家族が多くて仲がいい。相続ももめないように生前から人間関係やお金の気配りが行き届いていることが多い。お金と家族という守るべきものがはっきりしているのが共通点といえます

 次ページから、小林さんが気づいた億万長者たちの習慣にフォーカス。参考にして、金運上げよう!

(1)コンセントを使わせてもらえず…

 お金持ちはケチが多いと昔からいわれているが、本当のようで……。

「富裕層は驚くほど倹約家。電話代、電気代などの光熱費はもちろん、ティッシュ1枚までムダには使いません」

 一般人だって、この物価高で節約はしている。しかし、お金持ちの倹約ぶりはそれ以上に徹底しているというのだ。

「国税局職員時代、夫から数億円の遺産を相続した妻からたびたび電話相談を受けました。電話がかかってくるたびに折り返すように言われ、当時新人だった私は、数億の資産があるのに、電話代をケチるのか!とグチっていました。しかし、富裕層はケチれるところはとことんケチる。妻にもその意識を持たせて倹約させているからこそお金が貯まるんだ、と先輩に言われて納得しました」

 相手にかけ直してもらってまで電話代を節約……とはなかなか思いつかないが、お金持ちはおかまいなしにグイグイ攻めるのだ。 

「さらに驚いたのは、相続税調査で自宅を訪問したときのこと。預金通帳や手帳などを調査するためにコピー機を持参するのですが、なんと、コンセントを使わせてもらえなかったのです。仕方なく近くのコンビニまで行ってコピーをとりましたが、電気代を1円たりともムダに使わないという倹約ぶりには脱帽です

お金持ちの習慣 イラスト/ますみかん

  “死に金”は1円たりとも使わないというのが、お金持ちのセオリーだという。一般人もお金持ちのように、もっとケチケチと倹約してもいいのかも?

(2)1億円持っていても家計簿は細かくつける

「中途半端に収入が多い小金持ちほど、お金の管理ができていません。“これくらいなら使っても大丈夫”という気の緩みからか、家計の管理をテキトーにしている人が多いように感じます。億単位の金融資産がある人ほど、普段の食費や光熱費など、1円単位で家計簿を細かくつけています」

 妻や子どもが金銭管理をしていることも多く、家族ぐるみで資産を守っているそうだ。

「臨時収入など、一時的にお金が手に入ったときは、ついつい使いたくなりますが、富裕層は思いがけない収入があっても、決して生活レベルを上げません。一度生活レベルを上げてしまうと、下げることが難しく、資産がいくらあっても使い果たしてしまう」

 富裕層は、生活費などの支出も抑えているという。

「総務省の家計調査をみると、収入が上がるにつれて、食費、住居費、水道光熱費の割合が下がっている。つまり、収入が2倍になったからといって、食費を2倍にはしない。億単位の年商がある経営者でも、お昼は家から持ってきた弁当という人もいます」

 富裕層はなぜ、支出を抑えられるのか。

ムダな見栄を張らないからです。例えばですが、真の富裕層は裕福な暮らしをしているとSNSでアピールすることはないし、そういった投稿に嫉妬することもない。他人と比べないで、本当に自分に必要なものを見極めているからだと思います」

(3)モノが少なく整理整頓 心の余裕が億を生む!?

 お金持ちの家というと、キラキラのゴージャスな家具が並び、宮殿のような内装や部屋の造りを思い浮かべる。

広い土地や家屋を持つ富裕層は多かったですが、室内は華美な装飾はなく、驚くほど質素。日本家屋が多く、隅々まで手入れが行き届いていました。家具は質にこだわった高級品かもしれませんが、決して派手ではありません」

東京国税局では、東京、神奈川、千葉、山梨の1都3県を管轄。元愛人などのタレコミで隠し財産が発覚することも

 また、とにかくモノが少ないのが富裕層の家の特徴だ。

「一般家庭よりむしろスッキリとした印象です。モノが少なく整然としています」

 そして、持ち物が整理整頓されているという。

「通帳や税金の納付書の控えなどを見せてもらうことがあるのですが、富裕層の人はどこに何がしまってあるのかきちんとわかっています

 モノがちらかっていて、いつも捜し物ばかり、というトホホな一般人は多いのでは? お金持ちほど整理整頓が上手ということは、家の中のモノを整理することが億万長者への一歩かも。

(4)“いいモノ”を長~く愛用してムダ買いをなくす!

 お金持ちは安いものは買わない。少々高くてもいいものを買って長く使い、結果的にムダな出費を抑えているそう。

「高いものといっても流行りのブランド品などをむやみに買いあさることはしません。自分に必要ないいものを見極め、長く使っているようです」

 これは、小林さんが富裕層から学んだことの中でも、特に役立っているそうだ。

「国税局職員時代、富裕層から刺激を受けて、思いきって5万円以上もするビジネス用の革のカバンを買ったことがあります。それから10年間使い続けていますが、いい感じにエージングされて、買ったときよりも高級感があるくらいです」

お金持ちの習慣 イラスト/ますみかん

 革に保湿クリームを塗って手入れは欠かさないという。

富裕層は、趣味が靴磨きということが少なくありません。少々高額でも品質のいいものを長く使うのが富裕層スタイル。“大事に使おう”という意識が芽生えて、ムダな買い物をしなくなります

(5)収入アップにつながる趣味を持っている!

 お金持ちは、なんと、趣味からもお金を生みだすという

「富裕層のコレクションといえば、高級車や腕時計を思い浮かべますよね? 車や腕時計が本当に好きで集めている場合もありますが、実は投資目的で購入しているのです」

 また、お金持ちのスポーツといえばゴルフ、これも実は投資の1つだとか。

「名門のゴルフ倶楽部には富裕層が集まる。いわば、人間関係の投資です。ゴルフコースでは密談ができるのも人気の理由かもしれません」

 一般人はそんな高級な趣味は持てなーい、とガッカリ。

「他にはアートが趣味という人も多い。私も富裕層をまねて絵画などのアートを何点か買いました。まだ無名のアーティストのものですが、支援にもなり、将来価値が上がるかも。アートは頑張れば手に届くものや、権利を分散して持てる仕組みもありますので、始めやすいと思います

 また一番多いのは「仕事が趣味」という人だそう。

世界の超富裕層の趣味を調査すると、1位がビジネスでした。仕事のための自己投資も収入アップにつながるので、お金を使ってもそれ以上の利益が期待できます」

(6)資格を取って生涯現役 定年のない仕事で儲ける

「厚生労働省の調査によると、日本の職業別平均年収のトップは医師、2位はパイロット、大学教授と続き、いわゆるエリートばかり。しかし、税務調査を行っていると、富裕層は、中小企業経営者、不動産オーナー、個人事業主が圧倒的に多かったのです」

 地域に密着したマッサージ師、工務店の職人など、一見すると富裕層のイメージとは結びつかない職業も。

富裕層の家が多い高級住宅街で働くあるマッサージ師は、週に2~3日しか働かないのに、年金を合わせた年収が1千万円以上でした。開業している立地にもよりますが、富裕層を顧客に持てれば、自分も富裕層の仲間入りができることがあるというわけです」

お金持ちの習慣 イラスト/ますみかん

 定年がなく、生涯働けることがポイントだ。

「収入が良い一流企業に勤めていても、定年後は年金と貯金を取り崩して生活するしかなく、残す資産は1億円に満たないことがほとんど。個人事業主や会社経営者の廃業年齢は70代が多く、会社員よりも10年、15年長く働いていることがわかります。80歳を超えて仕事を続けている人もそれなりの割合でいますし、生涯現役で働ける仕事に就いているのは富裕層の共通点といえますね

 高収入の仕事で、できるだけ長く働くのが億万長者への道のりなのだ。

(7)人間関係にはケチらず投資 ペットで心身の安定を

 どケチな富裕層も、お金に糸目をつけないことがある。それは、人間関係の構築だ。

 普段は質素な手作り弁当でも、人間関係を構築するために高級レストランで食事をする、ということは珍しくない。

 家族との関係性でいうと、富裕層は大型犬を飼っていることが多いという。

お子さんが自立した50代、60代の夫婦が、コミュニケーションと日々の潤いのためにペットを飼っているケースが多い。特に大型犬を飼っている人が多く、他の調査員も大型犬をよく見たと言っていたので富裕層の共通点といえますが、なぜ大型犬なのかはナゾのままです(笑)。大型犬は屋内で飼いやすい小型犬より費用も世話の手間もかかりますが、だからこそ飼い犬のためにもまだ働くぞ、と活力にあふれている印象でした」

 米国心臓学会の研究によると、ペットを飼うとストレス軽減にも役立つという結果が出ている。ムダなお金は使わない代わりに、自身のストレスを減らし、働く意欲を湧かせてくれるペットを飼うというのも、上手なお金の使い方なのかもしれない。

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まるで昼ドラ!女たちのドロ沼遺産争奪戦

「亡くなる直前に妻と離婚し、なんとお手伝いさんと再婚した男性。妻とお手伝いさんとの壮絶な遺産相続バトルが勃発しました。法の隙間を狙い、絵画や掛け軸など高価な調度品を、盗み出すようにお互いが奪い合っていたそうです。まさに、リアル昼ドラ!」(小林さん)

要塞のような高い塀!インターフォン故障で立ち往生

「相続税調査で伺ったお宅が、防犯目的なのかコンクリートの高~い壁に覆われていました。さらに、インターフォンが壊れていて、家の人が出てきません。塀は立派なのにインターフォンが壊れているなんて……。要塞のような鉄壁な守りなので、家の様子がうかがえず、オロオロしてしまいました」

小林義崇さん
小林義崇(こばやし・よしたか)東京国税局で、相続税調査や所得税の確定申告対応などを行い、退局後、フリーライターに。著書に元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者(ダイヤモンド社)など。

取材・文・イラスト/ますみかん