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 日本人の3人に1人がかかっているとされ、国民病ともいわれる花粉症。特にスギ花粉が飛ぶ春先は、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどに悩まされる人も多いのでは。

 今年も2月上旬から、九州や関東の一部で飛散が始まる見込みだ。

気づいていない人が実は多い

「花粉症はくしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみや充血、涙が主な症状とされています。そのほか、下痢や便秘などの胃腸症状、ぜんそくなどを引き起こしたり、身体がだるい、イライラするといった全身症状を伴うことがあります。その全身症状の1つに皮膚症状があります」

 そう話すのは、花粉による皮膚炎の第一人者である横関皮膚科クリニック院長の横関博雄先生だ。

 花粉症の代表的な症状である鼻と目の症状は、いずれも入ってきた花粉を取り除こうとすることで生まれるアレルギー反応だ。

 私たちの身体には異物が侵入してくると、追い出そうとするシステムが備わっていて、それが花粉に対して働くと、花粉症の症状が出る。

 鼻で起こるとくしゃみで追い出したり、鼻水で洗い流したり、鼻づまりで中に入りにくくして、異物から身を守ろうとするわけだ。

「スギ花粉症にかかると、ほぼすべての人が、この鼻水や鼻づまり、目の充血など、鼻と目に症状が出てきます。一方、皮膚症状は一部の人にしか出ません。

 やっかいなのは、鼻水などの症状がまったくないのに皮膚症状だけがあったりすることです。そうなると本人は、花粉症による肌荒れだと気づかないことも多くあります」(横関先生、以下同)

 くしゃみも鼻水もなければ、まさかこの肌荒れが花粉によるものだとは思いもしないだろう。だからこそ、一般的な花粉症の症状がなくても、花粉が飛ぶ2月ごろになると、なぜか肌が荒れてくるという人は、花粉症を疑ったほうがいいのだ。

 横関先生によると、花粉の飛散量が減ってくると皮膚症状は改善してくるそうなので、「花粉が飛散する時季を過ぎたら肌荒れが治まった」という人も、肌荒れの原因が花粉症である可能性が高いといえる。

その肌荒れ、花粉が原因かも?セルフチェックリスト
□目の周りがかゆくなる
□ほおや目の周り、首などが赤くなる
□じんましんのような発疹が出る
□花粉が飛ぶ季節になると、症状が出る
□花粉の飛散が収まると、肌荒れも治まる
 1つでも当てはまるなら花粉による肌荒れの可能性あり!

普段の化粧落としが原因かも

 私たちの皮膚には、外部からのウイルスや細菌などをバリアする働きがある。そのためバリア機能がしっかり働いていれば、花粉が接触しても大きな刺激にはならない。

 ところが、このバリア機能が壊れていると、花粉が肌の表皮に入り込みやすくなって、アレルギー反応が起こりやすくなり、皮膚症状が出やすくなってしまうと考えられている。

 では花粉症による「皮膚症状」とは、具体的にどういう症状なのだろうか。

 横関先生によると、一般的に多いのが、目の周りやほお、首など顔の露出部分に、赤みの強い斑ができることだという。水疱などのブツブツではなく、一見じんましんのような赤い斑ができるのが特徴だ。

 発症しやすい時季は、スギ花粉が飛ぶ春先や、秋花粉といわれるブタクサの花粉が飛散しやすい11月や12月が中心で、他の季節には発症しないことが多い。

「患者さんは中高年女性もいますが、特に若い女性に多く、男性は少ないです。若い女性が多い理由ははっきりわかりませんが、必要以上に洗顔をしたり、一生懸命お化粧を落としたりして、かえって肌のバリア機能を壊してしまっている可能性があります」

 つまり、化粧が残っているとかぶれるからと、何度も洗顔をしたり、メイク落としを念入りにしすぎたりすると、肌を守っているつもりが、逆に肌を弱くさせてしまっているということ。

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 特にメイクをしっかりとした日には、ゴシゴシと落としがちなので気をつけたいが、このことは若い女性に限った話ではないといえそうだ。

 横関先生のもとには、花粉症ではなく、「化粧品にかぶれたのでは」と来院するケースもあるという。ところが実際には、皮膚のバリア機能が壊れてしまい、それが原因で肌荒れになっていることもあるそう。

 ただ、美容液やアイライナー、ヘアカラー(毛染め染毛剤)によるかぶれは、目の周りが赤くなるなど、花粉症による肌荒れと区別がつきにくい。そのため診察では血液検査やパッチテストなどを行い、原因を特定している。

ついた花粉はすぐ落とすべし

 花粉による肌荒れの治療や対策は、基本的にはスギ花粉症の治療と同じだ。花粉症の治療は、薬によって症状をコントロールする対症療法が中心で、主なものに抗ヒスタミン薬の服用がある。

 鼻や目の症状を起こすもととなるヒスタミンをブロックして、アレルギー症状を抑える薬だ。外用薬としては、ステロイド外用薬がある。皮膚に赤みや腫れなどの炎症を起こしている場合に使う薬だ。

 抗ヒスタミン薬もステロイド外用薬も市販されているので、薬局などで薬剤師さんに相談しながら自分に合ったものを購入するのもいいが、皮膚科に行って医師に処方してもらうのもおすすめ。

 横関先生のもとにも、花粉が飛散する量が多ければ多いほど、来院する患者さんは多くやって来るという。

 肌荒れ対策のポイントとしては、花粉をできるだけ家に持ち込まないこと。そして外出から帰ってきたら、可能な限り花粉を取り除くことの2つ。

 具体的には帰宅したら、まずうがいと洗顔をして花粉を洗い流す。洗顔後はタオルで拭いてそのままにはせず、化粧水で肌に水分を与え、乳液やクリームで油分を補おう。

 忙しいと、つい手抜きしがちだが、この基本のスキンケアが、皮膚のバリア機能を維持するには欠かせない。

 注意したいのは洗顔時にこすり洗いをしたり、タオルでゴシゴシ拭いたりと肌を摩擦すること。肌のバリア機能を低下させるのでNGだ。

 外出時は、帽子、マスク、マフラーなどで、花粉が直接皮膚に接触することを予防することも忘れずに。花粉症対策用のメガネは、目に花粉が侵入するのをある程度減少させる効果があるので、利用してもいいだろう。

 洋服については、ナイロンなどの化学繊維はウール製の衣類に比べて花粉がつきにくいので、外出時はこうした素材の服を選ぶのもおすすめ。困っている人はぜひ試してほしい。

花粉による肌荒れかなと思ったら

1)抗ヒスタミン薬を飲む

 皮膚科を受診して処方された薬を服用。あるいは、市販薬の服用でも。目や鼻の症状の薬と同じものでOK。

2)帰宅したらすぐ洗顔

 花粉を室内に持ち込まないように、外出から戻ったらすぐにうがいと洗顔を。その後のスキンケアも忘れずに。

3)帽子などでブロック

 直接肌に花粉がつかないよう、帽子やマスク、マフラーなどで肌の露出をなるべくなくす。

花粉による食物アレルギーにも注意!

 肌荒れと同じく、花粉症の珍しい症状のひとつに「花粉・食物アレルギー症候群」がある。花粉症の患者が食物アレルギーを併発するケースで、花粉症発症者のおよそ10人に1人いるそうだ。

 国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルゲン研究室長の福冨友馬先生によると、花粉アレルギーの原因物質と似た構造の物質が、果物や野菜類の中に含まれているという。

 症状は、口の中がヒリヒリする、のどがかゆい、唇が腫れるなどで、リンゴ、ナシなどバラ科の果物、柑橘系の果物、きゅうりやメロンなどのウリ科の野菜や果物、大豆など豆科の食物を食べた際に、こうした症状を起こす。

 花粉が飛ぶ時季に特に悪化する、食後の口周りの異常は花粉・食物アレルギー症候群かもしれない。

「症状が出たら原因と思われる食べ物をとらないこと。生活に支障がなければ病院に行く必要はありませんが、我慢できないほどの痛みなどがあれば、迷わず専門医に相談を」と福冨先生は呼びかける。

教えてくれたのは……横関博雄先生●横関皮膚科クリニック院長。東京医科歯科大学医学部名誉教授、日本皮膚科学会認定専門医

取材・文/江頭紀子