紗栄子

 発災から1か月が過ぎるも、未だ被害の全貌が明らかになっていない能登半島地震。多くの企業や著名人が被災者のための支援金寄付を公表する中、自ら現地に赴いて支援活動を続けているのは、モデルでタレントの紗栄子だ。

 地震の発生5日目にスタッフとともに支援物資を届けたことをSNSで報告。本人YouTubeでは、被害状況を聞き取りながら、被災者を励ます紗栄子の様子が流された。涙する避難住民の身体をさすって寄り添い、乳児やペットを抱き上げ、お年寄りから握手やハグを求められれば笑顔で応じる。慈愛に満ちた姿が伝えられたが、この献身的な奉仕活動に賞賛が集まる一方、“唐突なPR”に違和感を覚える声もある。

“紗栄子売れ”で品切れに

 紗栄子のYouTube「Sae Channel」では、プラダルイ・ヴィトンなどお気に入りのブランド品紹介や美容について語る動画が多く、実業家としてセレブなイメージのある紗栄子だが、その傍らで支援活動も開始。2019年に災害ボランティア団体「Think The DAY」を設立し、有事に備えた支援金を募るほか、オリジナルの災害バッグやチャリティーグッズの販売も行う。

 今回の現地入りもその活動の一環で、紗栄子はチャリティグッズのパーカーを着用して参加。自らが広告塔となることで宣伝効果は抜群だったようで、送料別・税込み8800円とお高めながら、インスタには「即購入しました!」「2着買いました!」「(品切れ中で)再販希望です!」などファンから多くの声が寄せられた。

 しかし4年前のThink The DAY設立以降、その活動についてYouTubeチャンネルで言及することはほとんどなかった紗栄子。唯一、2021年5月にオリジナル防災リュックの中身紹介動画をアップしたのみだ。

 そのほかは芸能人らしい華やかな生活を投稿しており、近年の災害発生時を振り返ると、2022年福島県沖地震の直後には自分の厄年を憂える“ゆるトーク動画”、昨年5月の奥能登地震の当日にはお気に入りの高級ブランドスニーカーの紹介動画を上げており、災害についてのコメントはなかった。

「収益化」の予防線

 モデルとしてのカリスマ性を保つためには、華やかな生活を継続的にアピールする必要があるのだろうが、今回の急な“救援活動報告”に至ったのはなぜだろうか。

 活動PRを控えていた理由には、過去の苦い経験もあるのだろう。支援団体を設立する前から募金活動を始めていた紗栄子だが、そのセレブなイメージゆえにバッシングを浴びることも多かった。2010年、地元宮崎での家畜伝染病「口蹄疫」の流行時には、個人で物資を届けたり炊き出しを行ったが、それをインスタにアップしたことで「売名だ」と炎上。

 また、2016年の九州台風被害の際には、熊本県と大分県の義援金窓口にそれぞれ500万円を寄付し、その振り込み用紙の画像を公表したことで「偽善」と誹謗中傷を受けることに。当時の気持ちを「今思い出しても胸が苦しくなるくらい」「とても傷つきました」と明かしている。

 しかしその後Think The DAYのホームページで、社会のバッシング体質の変化について『「偽善」や「売名」などの言葉に怯え、発信することに引け目を感じていた社会の風潮が、(中略)なくなってきたことを強く感じます』と記している紗栄子。そしてひどいバッシングを受けて傷ついた経験は

《SNSを活用をする私にとって、情報発信する際の注意点を知る大きなきっかけともなりました》(原文ママ)

Think The DAYの能登地震支援チャリティロゴフーディーは今回の活動でも着用(紗栄子インスタグラムより)

 と前向きに受け止める。

 こういったタイミングが重なり、一見唐突ともとれる動画での活動報告に踏み切ったのだろうか。今回の支援動画は、このところ再生回数ひと桁止まり(10万回未満)も多かった「Sae Channel」で、あっという間に43万回再生を突破。概要欄にはしっかり「この動画は収益化しておりません」との注釈が記されている。

 かつては「お金大好き」というイメージもあったため、「収益目的じゃないの?」と言われないようにとの配慮だろうか。今後は華やかなモデルのイメージと、見えないところで人を支える活動のPRをどのように両立していくのか、紗栄子のセルフプロデュース力に注目だ。