SNSで話題になった「防災ボトル」 撮影/山田智絵

 最大震度7を観測した能登半島地震。1か月以上が経過した今も災害関連死が引き起こされるなど、予断を許さない状況が続いている。

携帯する防災グッズで「もしも」に備える

 震災を受け、緊急時に必要なものをまとめた非常用の持ち出し袋や、自宅にストックしておく災害食などを見直す動きが広まるなか、SNSでは、外出中に被災した際に役立つアイテムを購入して作る「防災ボトル」や「防災ポーチ」が話題に。

「能登半島地震は元日に発生したので、自宅や実家で家族と一緒に過ごしていたときに被災したという人も多かったようです。

 ですが、災害に遭うのは自宅にいるときだけとは限らない。防災ボトルは持ち歩くことでいざというときに役立つアイテムをまとめたものです」

 と教えてくれたのは、防災介助士インストラクターの冨樫正義さんだ。

 防災ボトルは、100円ショップで買えるドリンクボトルに防災グッズを入れたもの。外出先での災害発生時に自宅や安全な場所に、無事にたどり着くためのアイテムを詰め込むといいという。

外出中に被災した際に役立つアイテムを購入して作る「防災ボトル」 撮影/山田智絵

「例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、首都圏で公共交通機関が止まり、およそ515万人が“帰宅難民”になりました。

 多くの人が徒歩で自宅や一時避難場所に向かうことになったわけですが、防災ボトルには災害時に長距離を移動しなければならないときに役立つものや、空港や駅、一時避難場所でひと晩過ごさなければならない際に必要な、最低限のものを入れておくのがいいでしょう」

 防災のプロ監修のもと、防災ボトルに入れるべきアイテムをご紹介しよう。

ホイッスルはマスト非常食も入れておく

 防災ボトルを作るにあたり、普段から持ち歩いているものはあえて入れる必要はないと冨樫さん。

「いつも絆創膏(ばんそうこう)や常備薬を持ち歩いているという人は、同じアイテムを防災ボトルに入れる必要はないです。意識しないと持ち歩かない防災グッズを入れていきましょう」

 また、防災ボトルの入れ物に使うドリンクボトルには避難所に行くことになった際、中身を取り出して給水をしてもらうことができるといった利点や、プラスチックのため水害に遭ったり雨が降ってきても中身が濡れにくいなどの利点がある。

「普段から荷物が多かったり、カバンが小さいという人はボトルではなくポーチに詰めるのがおすすめ。ストレスにならずに持ち歩けることが大切です」

 マストで入れておきたいのは「ホイッスル」だ。

「家屋の倒壊や土砂崩れに巻き込まれた際に、自分の居場所を伝えるために非常に重要です。同じく、腕などに巻ける反射バンドも、救助を待つ際に救急隊の方などに見つけてもらいやすくなります」

 夜中に停電してしまった街中を歩かないといけない場面でも、反射バンドをつけておけば、車との接触事故などを防ぐことができる。

 また、意外にも役立つのが「簡易レインコート」。これも100均で購入できる。

「帰宅難民が発生して多くの人が一斉に歩く場合、雨が降っても人が多くて傘が差せない可能性が高いです。衣服が濡れてしまうと、体温が下がり体力も低下するので、そうした際に役立ちます」

「携帯用コンパクトレインコート」着用イメージ。薄いビニールでできているので耐久性がなく使い捨てだが、一時的に雨を防げる 撮影/山田智絵

 スマートフォンで代用ができそうだが、充電が減ってしまうため、非常用の「小型のライト」も入れておくのがよい。また、賞味期限が長く、劣化しにくい「ようかん」や「(あめ)」などの非常食も入れておこう。

エチケット袋」は、気持ちが悪くなったときに使う以外にも、ケガの手当てで使用して血液がついてしまった汚物などを入れる衛生管理の目的で使うこともできる。

「市販のエチケット袋には、ポリ袋が同梱してある場合も多い。止血をする際に、ビニール手袋の代わりにして使うこともできます。災害時には今あるものを、いかに工夫して使うかが重要です

透明で中身がひと目でわかるポーチで作るのもおすすめ。ポーチも100均で購入できる 撮影/山田智絵

季節の変わり目に中身を見直す

 防災ボトルやポーチも、避難リュックのように一定期間で見直すのが大切だ。

「冬場は使い捨てカイロやマスクを入れる、夏場は冷却シートを入れるなど、持ち歩くからこそ定期的に見直しをするのが大事です」

 また、この防災ボトルは職場やパート先のロッカーなどに常備をしておくのも有効だ。

「ただ、勤め先にはいざというときのために非常食や毛布などが準備されているはず。なので、これを機にどういったものが準備してあるのか勤め先に確認しつつ、準備がされていないアイテムを一緒に入れて、自分流にカスタマイズするのがいいと思います」

 100円ショップのグッズで作れる防災ボトルやポーチ。いざというときのために、ぜひ準備しておきたい。

100均で買える防災グッズ

・ホイッスル

 災害に巻き込まれた際、自分の居場所を伝える

・小型のライト

 停電時や夜道で役立つ。電池の残量を定期的に確認

100均で買える防災グッズ「ホイッスル」と「小型のライト」撮影/山田智絵

・反射バンド

 ホイッスルと同じく自分の居場所をわかりやすくするアイテム

・アルコールシート

 手洗いができないときや、ケガの手当てに使用できる

100均で買える防災グッズ「反射バンド」と「アルコールシート」撮影/山田智絵

・絆創膏

 ケガをしたときや、長時間の徒歩で靴ズレをした際に使用

・ようかん

 非常食には常温で長期間保存がきくものがおすすめ

100均で買える防災グッズ「絆創膏」と「ようかん、飴」撮影/山田智絵

・エチケット袋

 嘔吐物を素早く固めるタイプだとニオイも広がらない

・携帯用コンパクトレインコート

 手のひらサイズで持ち運びやすい

100均で買える防災グッズ「エチケット袋」と「携帯用コンパクトレインコート」撮影/山田智絵

+プラスで持ちたい!おすすめの防災グッズ

・コンパクトタオル

 ラムネ粒くらいの大きさの袋に入っている圧縮タオル。水につけることで、大きくなり、ケガの手当てや使い捨てのお手拭きとして使用できる。

プラスで持ちたい!おすすめの防災グッズ「コンパクトタオル」撮影/山田智絵

・携帯トイレ

 災害時には断水のおそれもあるため、水を使わなくてもよい携帯トイレがあると安心。水分と反応して固まる凝固剤が入ったタイプがおすすめ。

プラスで持ちたい!おすすめの防災グッズ「携帯トイレ」撮影/山田智絵

お話を伺ったのは……冨樫正義さん●防災介助士インストラクター。サービス介助士、防災介助士、認知症介助士などを認定・運営する団体「公益財団法人 日本ケアフィット共育機構」のインストラクターとして、年間50社以上の企業対象研修を担当