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 会社員の給料、事業や投資で得た利益など、さまざまな所得にかかってくるのが所得税、そして住民税だ。なけなしのお金に税がかけられるのは、本当につらいもの。なんとか税金を減らしたい……。

税負担を減らす「控除」というしくみ

「税負担をやわらげるしくみはあります。それが“控除”と呼ばれるものです。養っている家族がいる、障害があるなどの事情がある場合は、税額を計算するときに、所得から一定の金額が差し引かれます。

 税金がかかる大もとの所得が減ることで、その分、税金も少なくなるのです」

 そう教えてくれるのは、税理士の服部大さん。代表的な控除としては、例えば、配偶者控除、扶養控除、障害者控除などがある。

 これらの控除を受ける手続きはさほど難しくない。例えば会社員であれば、会社から毎年11月ごろに渡される用紙に必要事項を記入して、勤め先に提出するだけで納めすぎた税金が戻ってくる。

 自営業者も、確定申告する際に必要事項を記入するだけでこうした基本的な控除を受けることができるのは、ご存じのとおり。

「実は、所得税や住民税をめぐる控除は他にもいろいろあるんです。ただ、こうしたプラスアルファの控除をもれなく受けて少しでも税を減らすには、“自分で”受けられる控除が他にもないか調べ、確定申告しなくてはなりません」(服部さん、以下同)

 会社員であろうと自営業者であろうと、年末調整や確定申告を“例年どおり”で済ませていると、せっかくの控除を受けるチャンスを逃してしまうかも。

 受けられる控除が増えれば、所得税はもちろん、住民税や健康保険料などの負担も減るのだから、あてはまるものがないかしっかりチェックしよう。

年金生活者も取り戻せる!

 年金生活者も人ごとではない。一般的な年金は65歳未満で年額108万円以上、65歳以上は158万円以上なら、税がかかる。配偶者控除などの基本的な控除はすでに引かれているが、会社員と同様、プラスアルファの控除を受けるには確定申告が必要なのだ。

 例えば、1年間で払った医療費や薬代、介護サービス費が多かった場合の医療費控除はその代表例。

 同居している家族の分はもちろん、別居している親やひとり暮らしをしている子についても、仕送りをして生計を同じくしていれば、その医療費も合わせて申告できるので要チェックだ。

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 また今年の元日に発生した能登半島地震の惨状を見て、「何か役に立てないか」と2000円を超える寄付をした人も、控除を受けられる可能性がある。

「ただし、今年の寄付については来年の申告になりますから、受領証などを来年まで保管しておいてください」

 社会保険料についても注意が必要だ。年金から天引きされている社会保険料については、すでに控除が適用されて、税金が安くなっている。ただし、口座振替や窓口で払っている分については、確定申告をしないと控除が受けられない。

 特に口座振替をしていると、払ったことじたいを忘れがちなので通帳で確認しておこう。

 こうした控除は、払う金額が年によって違う、控除を受けられることを知らない、といった理由からうっかり申告し忘れることが多いので注意したい。

 また、年金生活者で、9月ごろに「扶養親族等申告書」が送られてきたのに、返送していない人も注意が必要だ。

 これは、年金から所得税が引かれる予定の人に送られてくるものだが、よくわからないからとうっかり出し忘れたままだと、多めに税金を引かれてしまうので要注意。

年金収入が少ない人も住民税減の可能性

「年金やパート収入が少なく、所得税が引かれていない場合は、還付する税がないので、確定申告するメリットが薄れてしまいます。ただし、収入によっては住民税のみかかる人も。

 所得税はなく住民税のみ引かれている人で、まだ受けていない控除があるなら確定申告をしましょう。住民税が下がる可能性が高いので、面倒でも一度確認を」

 こういったプラスアルファの控除をあなたが受けられるかどうかは、会社や役所は教えてくれない。自分でやるしかないのだ。親が年金生活者だという人は、親に確認してみてほしい。

「去年も控除が受けられたはずなのに、よく考えたら扶養親族等申告書の提出や確定申告をしなかった……という人もあきらめないでください。税を取り戻すための期限は5年。5年前までさかのぼれますので、取り戻せるお金はしっかり取り戻しましょう」

確定申告で取り戻せるお金はコレだ!

自分や家族の医療費、介護費をたくさん払った人(医療費控除

・医療費のほか、治療のための薬代、通院交通費、介護保険のサービス費などが対象。

・明細書(医療を受けた人、支払先、金額、日付などの一覧)を作り、申告の際に提出。

注意点
・年間合計額が、10万円または総所得の5%のうち、少ないほうを超えていることが条件。
・別居家族の分も生計が同じならOK。生命保険や高額療養費制度でもらったお金があれば差し引く。

被災地などに寄付をした人(寄附金控除

・対象は、義援金のうち、特定の団体(日本赤十字社など)への寄付。

・ふるさと納税も対象。

・寄付先から受け取った受領証など、必要書類を添付して申告。

注意点
・2000円超の寄付が対象。
・控除の対象となるか、前もって寄付 先に確認を。

保険料を窓口などで払った人(社会保険料控除

・窓口での現金払いや口座振替で納めた社会保険料(国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料など)が対象。

注意点
・配偶者や生計を同じくする親族の社会保険料を負担した場合は合算。
・口座振替をしているものがないか、通帳をチェックする。

「扶養親族等申告書」を返送していない人(配偶者控除など)

・扶養親族等申告書は所得税が源泉徴収される予定の年金生活者に9月以降に届く。

・期日までに返送しなかった人は、確定申告して控除を受ける。

注意点
・扶養親族等申告書は配偶者や扶養親族がいなくても自分が障害者や寡婦などの場合は控除が受けられる。
・申告書を提出した人でも、その後、申告内容に変更があれば確定申告を。

※ネットで確定申告(e-Tax)した場合は提出不要の書類もある。
※控除を受けるにはさまざまな条件があるので、国税庁のサイトや所轄の税務署の相談コーナーなどで確認を。

教えてくれた人……服部大さん●税理士。雑誌などで税や“手続きで戻ってくるお金”について多数解説

取材・文/鷺島鈴香