佳子さま(28)

「下の子も最近少しずつ、つかまり立ちから一人で立って歩く、まだ歩くまではいかないんでしょうかね、そういうことができるようになって、また、表情もわりと豊かになってきたような気がいたします」

「私はおのおのの持っている個性をできるだけ自由に伸ばせるような環境であればいいというふうに思っています」

秋篠宮さま・紀子さま、それぞれの思い

4歳の眞子さん、1歳になる直前の佳子さまを中心に微笑ましい日常の秋篠宮ご一家(1995年11月)

 1995年11月末、秋篠宮さまの誕生日会見が行われたが、そのとき秋篠宮家の次女、佳子さまは生後11か月。記者たちから「眞子さま、佳子さまの最近のご成長ぶりと、ご両親としての教育方針をお聞かせください」と尋ねられた父親、秋篠宮さまの答えだ。

 母、紀子さまの話は子どもたちと接する機会が父親よりも多いためなのか、より具体的な内容となっている。

「上の娘の眞子は(略)妹を迎えたときはとてもうれしいと同時に、ちょっと少し戸惑いも感じられるようなことが見られましたが、今はとても妹思いで食事とか洋服のお手伝いをしたり、また一緒に楽しく、ぬいぐるみや絵本で遊んでおります。

 佳子のほうはだいぶ自分の気持ちを外に出すことが多くなってまいりまして、例えば、きれいな音楽を聴くとうれしくなって手をたたいたり、身体を動かしたりすることが多く見られるようになりました」

 誕生日用に公開された映像には、自宅の庭と思われる場所で過ごすご一家の様子が紹介されている。淡いピンク色のベビー服を着た佳子さまと可愛らしいアップリケのようなものがついた深い緑色のセーター、スカート姿の当時4歳の眞子さんが映し出されていた。階段を一人で上り、滑り台の一番上に立った眞子さんは、父親に抱かれた佳子さまの頭をまるで「いい子、いい子」と言っているかのように、愛おしく何度もなでた。そんな娘たちを母、紀子さまが優しく見守っている。

 ベンチに腰かけた父親が膝の上に佳子さまをのせた。隣には眞子さんが座っている。眞子さんは、滑り台を滑り下りては、また、走って階段まで行き、上っては滑る、という動作を繰り返した。そして、一人で上ることのできない佳子さまは、滑り台の支柱につかまり立ちしていた。ほのぼのとした明るいご家族の情景に私は、しばし見入ってしまった。

佳子さまの育ちは国民の大きな関心事

2月9日、福岡市の百貨店で開催された「日本伝統工芸展」へ。輪島塗の漆器をじっくりとご覧に

 佳子さまがどのようなしつけや教育を受け、天皇陛下を支える内親王として立派に育っていくのかは国民にとって大きな関心事である。毎年の秋篠宮さまの誕生日会見で、ご夫妻は記者たちからの質問に答える形でこうした国民からの要望に応え、佳子さまたちの成長の様子を広く、多くの人たちに紹介している。'98年の誕生日会見では次のような佳子さまの微笑ましいエピソードを語った。

「よく私が料理をしておりますと、そばに近づいてまいりまして、自分のエプロンを持ってきまして『手伝いたい』というふうに話しながら、台所で料理を作りましたり、また、きれいにお部屋をすることが好きなようでございまして、そういう日常生活の中のいろいろなことに、今、関心が向いているような感じが……」

 と、紀子さまは話しながら秋篠宮さまを見る。すると、その話題に触発されたのか「そうですねえ、この前も……」と、秋篠宮さまが応じ、次のように続けた。

「私と家内の同じ部屋、書斎なんですけれど、突如、赤い頭巾をかぶってやってきまして、何か一生懸命、いろんなところを、なんか、拭いたりしてくれましたけどね」と楽しそうに話すと、記者たちから「ハハハ」という大きな笑い声が起きた。少し間を置いてから笑顔の秋篠宮さまが「かわいかったねえ、フフフ」と、しみじみ振り返り、そして、また笑った。

 会見の映像を見ながら私も、赤い頭巾をかぶった幼い佳子さまが懸命に部屋を掃除している姿を想像しながら、思わず笑ってしまった。

皇族としてのご自覚

学習院幼稚園の入園式に出席された佳子さま(1999年4月)

 '99年春、4歳となった佳子さまは東京都豊島区目白にある学習院幼稚園に入園した。4月11日、あいにくの雨の中で入園式が行われ、佳子さまはご両親と一緒に傘をさして出席した。佳子さまは紺色の上着、スカート、それに同じく紺の帽子という幼稚園の制服姿。

 茶色のスーツの秋篠宮さまとオフホワイトのスーツを着た紀子さまが娘を気遣う。佳子さまは少し恥ずかしそうな様子だった。式が終わって雨もあがり佳子さまは、両親と手をつないで歩いた。記者たちから「おめでとうございます」「入園式はいかがでしたか」と、声をかけられた秋篠宮さまたちは、報道陣に会釈をして幼稚園を後にした。

 この年の11月末、34歳になる直前に行われた誕生日会見で記者たちから「(子どもたちに)皇族としてのご自覚を持っていただくために心がけていらっしゃることはございますでしょうか」と、尋ねられた秋篠宮さまは次のように答えている。

「私の子どもたちが遊びでもいいですし(略)出かけたり、何かしようとするときに、やはり私たち親だけでなく幾人かの人が動いたり、そのために何かしてくれるということがあるわけですね(略)。動いてくれたり、何かしてくれたりする人に、できるだけ迷惑がかからないようにするということは、私はいつも両親から言われていましたし、私もそういうようなことは、子どもたちにはわりと頻繁に言うことがあります(略)。例えば、約束した時間を守るとかですね」

 秋篠宮さまが佳子さまたちに「約束した時間はきちんと守るように」と、教えているが、こうしたしつけは秋篠宮さまが小さいころから、ご両親である上皇ご夫妻から常に言われ続けてきた、というところがとても興味深い。'98年秋の記者会見で、秋篠宮さまはこのような発言をしている。

「皇室というものが日本に存在しているということは、やはり、日本国民が、皇室というものがあってよかったと思ってくださる人が、国民の支持があるからこそ存在しているのではないかと、私は思っております(略)。国民がですね、皇室にどういうことを期待しているか(略)、そういうことをですね、やはり、常に頭の中、念頭に置きながら、私たちがですね、するべき仕事、務めを果たしていく必要があるのではないかと思います」

 秋篠宮さまのこの言葉を踏まえると、今年の佳子さまは、多くの国民が佳子さまに何を期待しているのか、そのことを常に考えながら20代最後の日々の務めを、しっかりと果たしていく。そういうことになろうか。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など