外交関係樹立150周年記念式典に和服姿で花を添え、スピーチも(写真:AFP/アフロ)

「日本から移住された方々とそのご子孫が、その後、幾多の困難や悲しみを乗り越え、誠実に勤勉にお互いに助け合いながら、日々を過ごしてこられたことを、そして、ペルー社会から信頼を得ながら、ペルー社会に貢献してこられたことを、あらためて心に刻み、これからもしっかりと心にとどめてまいります。

(中略)このたびの滞在中に、ペルーの魅力や素晴らしさをより深く知りたいと思います。また、日本とペルーの友好関係が一層深まりますことを願い、私の挨拶といたします」

佳子さまのご挨拶

リマ市内のろう学校を視察し、現地の子どもたちと交流(写真:AFP/アフロ)

 秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまは、外交関係樹立150周年の機会にペルー政府から招待を受け、2023年11月1日から10日間の日程で同国を公式に訪問した。首都・リマの日秘文化会館で行われたペルー日系人協会主催の「外交関係樹立150周年記念式典」で、冒頭のように挨拶し、最後に「ムーチャス・グラシアス」とスペイン語で締めくくると、会場から大きな拍手が湧き起こった。佳子さまは光沢のある淡いベージュ色の振り袖に緑の帯という上品な装いで、日系団体の人々らと一緒に節目の年を祝った。

 記念式典では、沖縄からペルーに移住した日系1世で104歳の新垣カマドさんとも懇談。車イスに座った新垣さんの手を握りながら、「お元気でいらっしゃいますか」などと優しく声をかけた。外務省トーレタグレ宮で開催された記念式典では外務副大臣の歓迎の言葉に続き、佳子さまが挨拶した。

 両親や、姉の小室眞子さんもペルーを公式に訪問したことに触れながら佳子さまは、「家にはペルーの本やアルパカのぬいぐるみがあり、ペルーの音楽を楽しむ機会も多くありました」「私もペルーに親しみを感じ、いつか訪れたいと願っておりましたので、今回、訪問がかない、大変うれしく思います」と、笑顔でおことばを述べた。

空中都市に訪問した佳子さま

世界遺産のマチュピチュ遺跡を訪問。このとき着ていたパーカが日本の若い女性に注目されて人気アイテムに(写真:AFP/アフロ)

 佳子さまは、ペルー南部にある世界文化遺産、インカ帝国時代のマチュピチュ遺跡も訪問。アンデス山脈の標高約2400メートルの場所にあり、「空中都市」などと呼ばれている。

「本当にすごく壮大な景色で、あの……写真では拝見したことはあったんですけれども、やはりこの場に立ってみると、おおおー、という感じがすごくします。本当に何かこう、素敵な空気を感じます」

 ガイドの案内で見学したが、遺跡を見渡す高台に立った佳子さまは、とても素直に遺跡を訪れた感動を口にした。この日は、和服から一変し、ベージュ色のパーカに黒のゆったりとしたパンツ姿だった。

 ペルーの歴史や、文化を堪能した佳子さまだが、同国初の女性大統領であるボルアルテ大統領を表敬訪問し、日本人ペルー移住百周年記念碑に献花するなど精力的に務めを果たして無事、すべての日程を終えた。

 佳子さまは'19年9月15日から25日までオーストリアとハンガリーを公式訪問しており、今回は、彼女にとって2度目の外国公式訪問となった。同年11月、誕生日を前にした記者会見で秋篠宮さまは次のように述べている。

「オーストリアとハンガリーに今年、下の娘が行きましたけれども、それが彼女にとっては初めての公式の訪問になり、本人にとって良い経験になったと私は思います。行く前にはずいぶん時間をかけて、その地域の専門の人から話を聞き、また本を読んで下調べをずいぶんやっていたという印象があります。(中略)もともとがまじめな性格なのかもしれないですね、よくやっているなという印象を、私は持っています。引き続き、そういう一つひとつを大事にするという気持ちを持っていってほしいなと思います」

真面目な努力家

 この連載を進めるにあたり私は、さまざまな関係者への取材を続けているが、「佳子さまはとてもまじめな人」「コツコツと努力を積み重ねるタイプ」という話を何度も耳にしている。彼女は、可愛らしくて華やかで、多くの国民から親しまれている印象が強い。ともすれば、彼女の装いや髪形、身の回りの品、あるいはファッションセンスまでが注目されがちだ。

 それはそれで大事なことではあるけれど、父親の発言のように外国訪問の前には「地域の専門の人から話を聞き、また本を読んで下調べをずいぶんやっていた」という、「まじめな努力家」という側面にも、もっと目を向けていいのではないかと思う。この連載ではできる限り、知られざる佳子さまの魅力や素晴らしさを取り上げ、紹介できればと思っている。

 実はペルー訪問でも、彼女の性格を物語るこんなエピソードがあったという。佳子さまは、聴覚に障がいのある子どもたちが通うリマ市唯一の公立ろう学校「ベートーベン初等特別支援学校」を訪問した。このとき、彼女はペルーで使われている手話を使って挨拶をしたり、子どもたちと交流を深めた。

 報道によると、この日のためにペルー手話の動画を日本に取り寄せ、自宅などでペルー手話を勉強したという。こうした努力が実を結んだのであろう。鮮やかな赤いワンピース姿の佳子さまは、終始、子どもたちと弾けるような笑顔で接していた。私にとっても、今回の訪問の中でいちばん印象深い場面だった。

 '23年11月27日、誕生日を前にした会見で、記者から佳子さまのペルー公式訪問などについて、質問された秋篠宮さまは、こう答えている。

「先日ペルーを公式に訪問して、彼女にとっては2回目になるのですかね、公式訪問で。行くときに飛行機のトラブルなどがありましたけれども、予定していたものはすべて向こうで行うことができ、大変有意義に過ごしたと思います。

 そして、ペルーもそうですし、それから、手話を使った公的な行事ということもお話にありましたけども、日本国内での公的な仕事、そういうものも併せて非常に一所懸命取り組んでいると私は思っています。(中略)引き続き一つひとつ、声をかけていただいた仕事に対して真摯に取り組んでいってもらいたいと思っております」

「非常に一所懸命取り組んでいる」と、ペルー訪問などの活動は父親から高い評価を受けた。今年もまた、海外で、そして国内で、佳子さまは「まじめに一所懸命」、仕事に取り組むことだろう。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など