大谷翔平選手、水原一平氏

 日本時間3月26日、ドジャースの大谷翔平選手(29)が自身の通訳を務めてきた水原一平氏(39)の違法賭博関与に関する会見を行った。

 水原氏はこれまで、450万ドル(約6億7500万円)もの大金を、大谷選手の口座からブックメーカーに送金していたとして、既にドジャースから解雇。会見で大谷は自身の違法賭博への関与を否定した。

 声明の一部にも、それは明確に主張されている。

「僕は一平さんがギャンブルの依存症だということは知らなかったですし、そのミーティングの時には知りませんでした。僕は彼の借金返済にも、もちろんそのとき同意してませんし、ブックメーカーに対して許可したこともないです」

 大谷はこれ以降の対応は弁護士に任せ、自身も警察への全面的な協力をするとも話している。

 ところがこの会見を経て、ネット上には「大谷が知らなかったなんてことはないだろ」というような論調が散見されるようになった。

大谷選手に向けられるネットユーザーの冷ややかな視線

 会見の内容は日本でもテレビ中継されるなど、異様な注目度だ。

 これまで自分の実績や愛犬、妻の真美子さんについてなど、いわゆるポジティブな側面から着目されるばかりであった大谷選手にとっては、これは初めての経験だったことだろう。

 インターネット上の各SNSでも、会見中継の話題で持ちきりである。

《会見で「明らかにならなかったこと」は、「水原がどうやって大谷の口座にアクセスできたのか」だわな。「これで大谷は潔白」などと踊れるヤツは、リテラシーが低すぎる》

《大谷側が完全潔白となるストーリーを練りに練ったなー、という会見。今後は水原側がストーリーから外れたこと言っても、詐欺師の妄言として扱う、ということなんだろう》

 というように、今の時点で大谷選手を疑惑の対象から外すのは時期尚早との見方も。

 なぜこのような反応が生じるのか。スポーツ紙記者は、原因は「水原氏の最初の報道にある」と見る。

「そもそもこの件は、米スポーツ専門チャンネル『ESPN』が水原氏にインタビューを行ったことで世間の知るところとなりました。この際、大谷選手が借金を肩代わりすることに合意した、と発言しています。

 ところが後に大谷選手の広報担当者が水原氏の発言を全面的に否定しており、大谷選手はあくまで窃盗の被害者とするスタンスを明確にしました。

 水原氏はこれに異を唱えるどころか、『ESPN』の再度のインタビューでは先の説明を前言撤回しています。さらに問題発覚後から大谷選手が会見をするまでに時間があったこと、銀行口座をなぜ水原氏が操作することができたのか、会見では記者からの質問は禁止にされていたなど、腑に落ちない部分が一部のネットユーザーには違和感を与えたのだと思います」

ギャンブル依存症の発言と、現役野球選手の発言。どっちを信じるか

 水原氏のインタビュー対応が“一度目と二度目で異なる”という点について、疑念を抱く人たちの気持ちも分からなくない。

「大谷側から圧力を掛けられているのでは」といぶかしむ人も多いだろう。

 しかしながら冷静に考えれば、大谷選手が違法賭博に関与しているという証拠は今の時点で一切出ていない。一方でここまで散々報じられた通り、水原氏はギャンブル依存症であることを解雇前に告白している。

 前述の記者はこう付け加える。

「野球のためにひたすらストイックに生活する大谷選手と、実際に違法賭博に手を出して身を持ち崩した水原氏。どちらの発言に信ぴょう性があるのか、という話になります。さらに現状、大谷選手は被害者であると主張。

 両者の立場の違いは重視すべきだし、そもそも借金するほどギャンブルにハマってしまう人は、近しい人にも嘘はつくものです。ギャンブル依存症のセルフチェックなどでは、“ギャンブルで嘘をつくことはあるか”という質問がよくありますしね」

 現に大谷は会見で、自身の口座から水原氏がお金を流用し、周囲には嘘の説明をしていたとも話している。『ESPN』への水原氏の最初の説明を、ここでも否定する形となったわけだ。

 大谷はこれから、試合のことだけでなく、水原氏の違法賭博関与について警察への協力という形でも時間を割かれることになる。

 水原氏の招いた事態はこれからも影響は続きそうだ。まずは反省し、ギャンブル依存症の治療に邁進してもらいたい。

取材・文/松本ミゾレ