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撮影/伊藤和幸


北野武監督の最新作は『龍三と七人の子分たち』(4月25日〈土〉全国ロードショー)。引退した元ヤクザ・高橋龍三(藤竜也)は、金もなければ居場所もない。息子の家で肩身の狭い思いをしながら暮らしていたが、ある日、"オレオレ詐欺"に引っかかってしまう。"若い者に勝手なまねはさせられねぇ"と、若頭のマサ(近藤正臣)ら、昔の仲間を大召集。先が長くないことをいいことに(!?)、現役チンピラたちの邪魔をしまくり。やりたい放題の、ジジイだらけの大暴れが始まった……


―2人とも北野作品への出演は初めて。オファーがあったときはどう感じた?

 うれしかった。仕事をしてみたい監督だったからね。

近藤 僕もうれしかった。興味あったから。とにかく撮影が短いの。いい加減に撮ってるんじゃなくて、キチっとわかってるから、すぐ終わっちゃう。

 なんだか知らないけど、ジジイばかりを8人も集めてね。

近藤 若いイイ男も出てねえし、きれいな女も出てねえし、裸もねえし、どうするのって感じだろ? けど、安心感があるんだよ。

 現場はキャストも含めてみんな、北野作品に対する期待感がある。"北野さんだったら何かあるんだろう"っていうワクワク感。お祭りっぽい感じがね。

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2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会 配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野


―出演俳優の平均年齢は72歳。こんなにも高齢者が一堂に会する現場ってないのでは?

 ないね。

近藤 そんな気持ち悪い現場、なぁ? 待ってる間、いろんな話するんだけど、結局は"年金もなぁ""耳が聞こえなくなってきた""いろいろ大変だよ"とか。もう言ってみりゃ、温泉入ってる年寄りみたいな会話だよ。

―2人の共演は、23年前の連ドラ『裏刑事』(テレビ朝日)以来。うれしかった?

 別にホモじゃないからね(笑い)。

近藤 今回、藤さんが"やめろよ"って俺を制止するシーンがあるんだけどさ。抵抗しても、全然動けないの 藤さんの体幹がしっかりしてるから。うれしくて、感動したよ。どういう生活してるんだろうな、この人は。

 清く正しくですよ(笑い)。

近藤 外国の俳優さんみたいだよね。こんなレトロなコート着て、帽子かぶって、ヒゲ生やしてさ。わりとしゃべらないし。カッコつけすぎてるんじゃないの?

 いやぁ……。

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2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会 配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野


―では、今回の共演で、藤さんが近藤さんに感動したことは?

 近藤さんって独特で、昔からアイドル的な人気があるじゃないですか。年寄りにアイドルって言うのも失礼だけど"近藤正臣節"みたいな。モノマネもたくさんされてるしね。

近藤 ハハハ(笑い)。

 そういう不思議な、僕にはない俳優としての味、色気っていうのかな? 青春時代と同じ香りを漂わせているのは、ひとつの芸だと感心しましたよ。

ダンディーな2人に"壁ドン"をリクエスト

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「男同士なんて気持ち悪いよ」と嫌がる近藤に対し、「やってみる?」と言ってくれた藤。

「俺はこっちに来りゃいいのかい?」「どうなの?」などの末、いただきました。調子に乗って"目線合わせてくださ~い"とさらにお願いすると、近藤は「だーかーらー、気持ち悪いよ」

―年を重ねてよかったことは?

 なんかある?

近藤 俺はたくさんあるよ。何かができなくなって嫌になるんじゃなくて、違うものが見えてきた。例えば、老眼鏡を買うとか、梅のつぼみに気づくとか。ジジくさいだろ? でも、ほんの小さな変化がとってもおもしろくなってきたの。こうなるならジジくさいのもいいもんだぜって思った。

 本当のことを言えば、切ないよ。若いときと今じゃ、桜の開花の意味が少し違ってきてる。そりゃ、当然ですよ。

近藤 来年見られるか、わからないからね。

 でも、俳優は年を取ったら、年を取ったなりの役柄がある。

近藤 本当にそう思いますよ。定年退職したら何もないっていう生活じゃないからね。

 まあ、2人とも恵まれてるジジイだよね。

近藤 うん。恵まれてるよ。