20150526 hakase (4)
撮影/高梨俊浩

 クライズラー&カンパニーは’87年、、ヴァイオリンの葉加瀬太郎、ベース&プログラミングの竹下欣伸、ピアノ、キーボード&オルガンの斉藤恒芳が東京芸術大学在学中に結成される。’90年にメジャーデビュー。

 クラシックの名曲をエレクトロニック・サウンドでポップにアレンジした"クラシカル・クロスオーバー"というジャンルを切り開き、旋風を巻き起こす。人気絶頂の’96年に解散した。

葉加瀬「解散後、初めてそろって食事をしたときには、ぎこちなさや、テレくささ。懐かしさがありました。いざ、スタジオに入ってしまうと、昔の感覚に戻るのに時間がかからなかったですね。うれしくて笑っちゃうくらいに、音楽性、人間性を含めて変わっていなかった(笑い)」

 クラシックの名曲を大胆にアレンジした作品や、セリーヌ・ディオンと共演したオリジナル曲『To Love You More』など、数々の傑作を生んだ彼ら。

 19年前の解散後、"大学時代から目立つ存在で、とにかく人前で弾くことが好きな人"というヴァイオリンの葉加瀬は、ソロ活動をスタート。数々の印象的なメロディーを生みだしてきた。

 "本能の人"ベースの竹下は、MISIAや平原綾香などのレコーディングやツアーに参加しながらサウンドプロデューサーとしても活躍。"理性的な人"ピアノの斉藤は、宝塚歌劇団宙組公演『激情』で文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど、幅広いジャンルの音楽プロデュース、アレンジ、楽曲提供を行ってきた。

 昨年、約1年かけて制作したニューアルバム『NEW WORLD』で再会するまで、まったく連絡をとることがなかったという3人。あらためて、メンバーの変化を感じたところは?

竹下「ちょっと太りましたよね(笑い)」

葉加瀬「でも、ものすごく(ダイエット)頑張っているでしょ」

斉藤「よかった(笑い)」

葉加瀬「それぞれが少しだけ大人になって、人の意見を聞くようになりましたね。20代のころは、自分の思いにまっすぐすぎて、"オレは! オレは!"という感じだった。いまは、お互いを信頼、信用して任せることができる」

竹下「曲を作ったり、譜面を書いたりする制作の作業は斉藤と僕が主にやっています。これからツアーがスタートして楽しみなのが、ステージの上で葉加瀬の背中を見ながら、彼がお客さんや僕らをどれだけ楽しませてくれるんだろうということ」

葉加瀬「僕のように、わりと激しく、ビートにのりながらヴァイオリンを弾く人って、なかなかいないんです。その原点がクライズラーで、ステップや、フォーメーションもある。20代でやっていたことに、さらにスキルを与えたら、もっと光り輝くんじゃないかと思って楽しみです」

 5月21日から始まる全国ツアーのファイナルには、19年前の解散ステージとなった武道館も決定している。

葉加瀬「3人とも同じだったんですが、解散コンサートのときの記憶が剥がれ落ちているんです」

竹下「(記憶が飛んでいるのは)すごく複雑な気持ちでいた、非日常の1日だったからだと思います。今度の武道館は、地に足をつけて楽しみたい」

斉藤「当時、コンサートに行き慣れていない方から、僕らのステージを見てコンサートの楽しみ方を知ったという手紙をたくさんいただきました」

葉加瀬「仲よしのママと来る同年代の女性ファンの方が多かった。僕がソロになってからは、お子さんを連れて3世代で。今度の武道館も家族で来てくださったらうれしいですね」

 新たな伝説のステージが生まれることを期待していると伝えると、

葉加瀬「解散から19年たって、まだ生きていて、音楽を続けている2人と一緒に旅ができる。最後に武道館のステージにも立てるって、ご褒美ですよ。修学旅行みたいに、はしゃぎすぎないようにしないと。移動の新幹線で、席を向かい合わせにして座るのはやめようね(笑い)。すぐにイヤホンして、エネルギーを充電しましょう」