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「去年から僕を認識してくれた人にとっては驚かれたり、ちょっとした裏切りのような印象を受けるかもしれないですね」

 ドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』『ダークスーツ』『医師たちの恋愛事情』……。誰がどう見ても、ストレートな“イイ男”を演じ、世の女性をキュンキュンさせてきた。そんな斎藤工の最新主演映画『虎影』が公開を迎える。

「みんなに“うん●映画”って言われるんですけどね(笑い)」

 ……!! 肉厚な唇から、衝撃のフレーズ。そう。本作はカブリモノあり、脱ぎあり、お下劣ギャグあり、もう何でもあり! クスクス笑えて、ソード(剣)アクションに魅了され、家族愛にホロリ。サブカル感プンプンで、おバカなんだけど……カッコいい!

「昔から僕を知っている人や親しい人間から見たら、僕の本質が詰まっていると感じると思います。僕に近い人ほど、いわゆる、パブリックイメージみたいなものに違和感を感じているので。特に、両親の評価はそうですね」

 5月から始まった日清食品『カップヌードルライト』のCMでは、野菜を頭からかぶった姿を披露。“やっとお前らしい出方をして、安心した”と喜ばれたそう。

「そういう意味では『虎影』はそっち寄り。一時的に艶っぽいものを求められている“こっぱずかしい私”とはちょっと違う、真に迫った部分での表現ができている作品だと思っています」

◆西村監督からの苦言 そしてブレイク

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 本作の監督は8月公開の実写版『進撃の巨人』で特殊造型プロデューサーを務めている西村喜廣。無名時代の斎藤を多くの作品に起用するなど、付き合いはもう10年以上(’09年『吸血少女対少女フランケン』ほか)。出演オファーは直接、メールで届いたという。

「ずるいのはね、僕が監督の作品のファンだとわかっていることなんですよ(笑い)。そして、例えば、園子温さんなんかは、昔から“早すぎた”と言われていたんですが、時代がついてきて、今、積極的に映画を撮る監督になっている。僕はひとりの映画ファンとして、西村さんも時代が追いついてきていい時期に来ていると思っていて。これは参加すべきだと瞬時に思いました」

 撮影が行われたのは昨年の3月。まだ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』の撮影に入る前のこと。それよりもかなり前に、西村監督から“こっちの世界にばかりいてはダメだ。主婦に支持してもらえる俳優になれ”とアドバイスされていたという。その後のブレイクはご存知のとおり。

「いわゆる、まだマイナーで、その状況にそれなりに満足していた時期に、西村さんに苦言を呈していただきました。他人に身をゆだねることをしていかないと、役者としての可動域は広がっていかない。ニーズがないと意味がないので。ここ数年は、西村さんのそばじゃないところでの表現が1周して、恩返しになったらいいなと思いながら過ごしてきました。今回、いいタイミングでこの映画が公開になるなと思っています」

とニッコリ。これぞ、斎藤工の恩返し! 西村監督の話をするときは本当にうれしそうで、信頼と愛情をいかんなく感じる。

 また本作では初めての父親役を演じている。人質に取られた息子と妻。困り果てながらも奔走する姿は笑っちゃうほどキュート。将来は、きっといい父親になりそう。

「ありがとうございます(笑い)。『ダイ・ハード』と『走れメロス』をまぜたような話なんです。子どもって優先順位を覆すんです。経験はありませんが、自分以上に優先するものがあることの強さです。それには、すごく興味あります。でも、今ではないかなと思っています。もし、そういうことになったら報告します(笑い)」

 


撮影/廣瀬靖士 ヘアメーク/赤塚修二(MAKE-UP ROOM)スタイリング/井元文子(CREATIVE GUILD)