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 日本最大の摂食障害回復施設『なのはなファミリー』(岡山県勝田郡)。入所する女性が地獄の日々を語ってくれた。

 滋賀県出身の込山千尋さん(仮名=28)の場合は、恋人と別れて対人関係が壊れたことが、摂食障害への引き金になった。

「高2のとき、別れた彼がストーカーみたいになって、周囲の友人に“私が悪い”と言いふらされて……」

 悪質なつきまといが、込山さんの居場所を奪った。「何となく食べたくないな」から始まり、1年の拒食期間。医師は入院を促した。

 しかし、成績のいい兄のように親にほめられたかった。学校を休んではいけないという思いが強く、何とか体重を増やそうとする。その結果、今度は過食へ……。

「やせた分だけ体重を戻したかったけど、食欲が止まらなくなってしまいました。一気に太り、足もむくんで……。体重は最低で23キロ、最大で50キロ。人間関係できついことがあると、一気にどちらかにスイッチが入りました」

 高校卒業後、2年間の“引きこもり”を経て、専門学校に入学した。

「食がコントロールできずに学校に行けない時もあり、友達も離れました。そのころ知り合った恋人と同棲しましたが、今度は彼に依存してしまった。彼が外出するとすごく不安になり、メチャクチャ食べたり突然、泣き出したり……」

 自分を取り戻せる施設があることを知ったが、“行きたい、でも費用が作れない”。費用を工面し、背中を押してくれたのは恋人だった。体重や対人関係にまとわりついていた底知れぬ恐怖感は、2~3か月で霧散したという。

「みんなと協力してひとつのものを作り上げたり、周囲の優しさに触れたりすると、不安や強迫観念がなくなった」

 今年3月、込山さんは施設を卒業する予定。戻る場所はある。恋人のもとだ。

「彼と一緒にやっていきたい。今までは自分のためばかりだったけど、これからは周りの人にどうしたら喜んでもらえるか、楽しんでもらえるか考えて、大切に生きたいです」