「日々の暮らしからストレスを完全になくすことはなかなか難しいもの。病院や整体院、マッサージなどに通い続けても腰痛がなかなか治らないのは、そのためなのです」(富永ペインクリニック・富永喜代先生、以下同)

 そこで、痛みが長引きやすい“原因不明”の腰痛を改善すべく、『金スマ』出演で大注目の富永先生が、この特集のために特別に考案してくれた、“100円グッズ”を使った7つのトレーニングを紹介しよう。ただし、このトレーニングは3か月以上、痛みの続いている人に向けたもの。

急性腰痛や原因のわかっている腰痛は対象ではありませんので、注意してください

 では、さっそく「腰トレ」の実践へーー。

なぜ“100円グッズ”なのか? ちゃんとした理由があるんです

「100円グッズでのトレーニングを考案するにあたって、大事にしたポイントが3つあります」

 と富永先生。それは、①心地よい痛さ、②目新しさ、③クスリと笑えるおかしさ。

「なぜかと言うと、人の感じる痛みの強弱には、心理的な影響が非常に大きいからです」

 いつも感じている腰痛の痛みのレベルが10段階の2だとしても、さまざまなストレスを感じたときには、それが5になり、6になることもあるという。

「例えば、普段“ありがとう”も言わない、家事労働に理解のない夫のために食事を作ろうと台所に立つと、ひどく痛くなる。週末に折り合いの悪い親族の家に行かなければならないときには、週半ばから腰の調子が悪くなる」

「逆に、痛みのレベルが6もある腰痛だとしても、とっさに何も感じなくなる場合もあります。お孫さんやお子さんがガスコンロの火に触れようとしたり、階段から落ちそうになるのを目にしたら、6あるはずの痛みを1も感じず“危ない!”と身体が動きますよね」

 腰痛と心の動きは直結しているからこそ、クスリと笑えて、目新しく、心地よい痛さのあるトレーニングが効果を発揮するのだ。

「もちろん、各トレーニングには医学的な根拠もあります。例えば“ゴム手でパワーマッサージ”で刺激する足三里というツボからは、腰痛の原因となることの多い腰椎の第4腰髄神経、第5腰髄神経と呼ばれる神経がつながっています。この神経に働きかけることで、腰痛の改善が期待できるわけです」

 同じく“たわしでチクチク”“ボールで指伸びストレッチ”などは、足先の血流を改善させることで、下半身全体の血の巡りもよくしていく。すると、痛みを感じてこり固まってしまった腰の筋肉の老廃物が体外に排出されやすくなり、痛みが軽減される。

「しかし、こうした効能以上に重要なのは、あなたが心地よさやおかしさを感じて笑顔になることです。痛い、つらいからこそ笑いましょう。痛みの要因となっているストレスそのものを取り除くことは難しくても、身体が心地いいという感覚が脳に伝わることで、痛みがやわらぎます」

《1》たわしでチクチク

イスに座ったまま、素足になり、床に置いたたわしを軽く踏んでいく。片足ごとに1分間、たわしを踏み踏み。足の指の付け根周辺を中心に、イタ気持ちいい刺激を与える。
イスに座ったまま、素足になり、床に置いたたわしを軽く踏んでいく。片足ごとに1分間、たわしを踏み踏み。足の指の付け根周辺を中心に、イタ気持ちいい刺激を与える。

「足の指の腹をたわしで刺激します。たわしに足をそっと乗せ、チクチク。イタ気持ちいい刺激が脳に伝わることで、腰で感じている痛みが軽減されていきます。また、足の裏の血の巡りがよくなり、ほんのり温かくなっていき、冷えやしびれをとる効果も」

《2》軍手で足指間パッド

足の5本の指の間に手袋の指先部分を挟む。ブツブツ部分が指の股の間に当たるよう調整したら、足でグーを作る感じでにぎり、ムギュムギュ動かす。片足につき1分やれば十分。
足の5本の指の間に手袋の指先部分を挟む。ブツブツ部分が指の股の間に当たるよう調整したら、足でグーを作る感じでにぎり、ムギュムギュ動かす。片足につき1分やれば十分。

「若い女性の間で、足の指の股を広げる健康アイテムが流行っています。これを軍手で代用! ブツブツの突起で指の股を押します。すると、指の横側を走る血管や神経に新鮮な刺激が与えられ、腰痛の軽減につながる血流の改善を図ることができるのです」

《3》ボールで指伸びストレッチ

イスに座って、足の指でテニスボールをつかむイメージで行う。実際にボールを持ち上げる必要はなく、指の股が開き、伸びればOK。片足ごとに1分ずつ行う。
イスに座って、足の指でテニスボールをつかむイメージで行う。実際にボールを持ち上げる必要はなく、指の股が開き、伸びればOK。片足ごとに1分ずつ行う。

「現代人の生活習慣からは、足の指を動かすという動作がかなり減っています。このテニスボールをつかむ動作をすることによって、足の指の股が伸び、ぐっと開く。足の指先は腰椎の神経とつながっていますから、新鮮な刺激が腰に届き、腰痛改善の効果が期待できるのです」

《4》ゴム手でパワーマッサージ

ひざのお皿の下、向こうずねの外側にある足三里からふくらはぎにかけて、上から下へ気持ちがいい程度の力でグイグイもみ押していく。片足ごとに1分ずつ行う。
ひざのお皿の下、向こうずねの外側にある足三里からふくらはぎにかけて、上から下へ気持ちがいい程度の力でグイグイもみ押していく。片足ごとに1分ずつ行う。

「ゴム手袋を装着して、腰痛に効き目がある“足三里”というツボとふくらはぎをマッサージ。通常、女性は握力が弱くてなかなか効果的な刺激を与えられません。ですが、ゴム手袋を装着すると手が滑りにくくなり、力がしっかりと伝わります」

《5》パンストで体幹ストレッチ

パンストを結んでチューブ状にし、両手で持って、足の裏に通す。イスに座ったまま、グッと踏み込む。この状態をキープするだけでも、腰まわりの筋肉を鍛えられる。
【1】パンストを結んでチューブ状にし、両手で持って、足の裏に通す。イスに座ったまま、グッと踏み込む。この状態をキープするだけでも、腰まわりの筋肉を鍛えられる。
両手で持って、自転車のペダルをこぐように踏み込んでいく。腹筋も鍛えられるので、腰だけでなく、ダイエットにも効果的。1分間繰り返したら、反対の足へ。
【2】両手で持って、自転車のペダルをこぐように踏み込んでいく。腹筋も鍛えられるので、腰だけでなく、ダイエットにも効果的。1分間繰り返したら、反対の足へ。

「パンストをチューブに見立てての“体幹ストレッチ”を行います。一見、冗談のようですが……効果は十分! 市販のゴムチューブは負荷が強すぎて、20代向けですが、これなら60代の人でも楽しみながら続けられます。ひざへの負担も少ない弱い負荷で、習慣化することが重要です」

《6》すりこぎでヒップアップ体操

【1】足を上げて、すりこぎをひざの裏に挟み、落とさないようにする。この状態をキープするだけでOK! これだけでもヒップアップにつながるエクササイズ効果が期待できる。
【1】足を上げて、すりこぎをひざの裏に挟み、落とさないようにする。この状態をキープするだけでOK! これだけでもヒップアップにつながるエクササイズ効果が期待できる。
【2】もも上げの要領でひざを上に引き上げる。基本は片足につき1分だが、しんどくなったら左右交代。毎日繰り返すことで加齢によって弱ってきた筋力の増強にもつながる。
【2】もも上げの要領でひざを上に引き上げる。基本は片足につき1分だが、しんどくなったら左右交代。毎日繰り返すことで加齢によって弱ってきた筋力の増強にもつながる。

「すりこぎをひざ裏に挟み、足の血流をよくするエクササイズ。ひざの後ろ側には腰につながる座骨神経、膝窩動脈といった重要な神経、血管があります。ここに適度な刺激を与えることで腰痛を軽減。ひざのまわりや太ももの筋力アップも腰痛予防につながります」

《7》ビニールひもで足ツボ押し

【1】親指の付け根のふくらんだ部分と土踏まずの間を上の写真のようにビニールひもで結ぶ。ポイントは、結ぶ力加減。足に食い込ませず、はずれない程度の強さで。
【1】親指の付け根のふくらんだ部分と土踏まずの間を上の写真のようにビニールひもで結ぶ。ポイントは、結ぶ力加減。足に食い込ませず、はずれない程度の強さで。
【2】ゆるく結んだひもは、立ち上がった時、体重がかかり、ちょうどいいテンションに。あとは1分ほど足踏み。食い込ませると逆に血流を悪くすることもあるので、要注意。
【2】ゆるく結んだひもは、立ち上がった時、体重がかかり、ちょうどいいテンションに。あとは1分ほど足踏み。食い込ませると逆に血流を悪くすることもあるので、要注意。

「100円のビニールひもで足をゆるく結んで、足ツボマッサージ。中高年に多い足の疲れ、むくみの悩みを改善しながら腰痛にも効果が期待できる、まさに一石三鳥のトレーニング。また、足の裏が健康になると立ち姿も美しくなり、アンチエイジング効果も」