辻クリニック・辻直樹院長●獨協医科大学卒業後、救命救急センター、スポーツ整形外科を経て'10年より現職。
辻クリニック・辻直樹院長●獨協医科大学卒業後、救命救急センター、スポーツ整形外科を経て'10年より現職。

■世界各国で臨床実験が行われている

「活性酸素はすべてが悪ではなく、善玉と悪玉があり、水素が選択的に悪玉活性酸素を除去することがわかりました。それからというもの、効果発現の作用基準を探るため、世界各国で臨床実験が行われています。

 水素は悪玉活性酸素と結びつくことで水へと変わります。ただの水ですから、身体には無害なもの。どのような病気に効果があるかわかれば、さまざまな治療にも使用でき、有効だと考えられているのです」

 こう語るのは、’11年より水素を使った治療を積極的に行う東京・『辻クリニック』院長の辻直樹院長。各研究機関でどのような病気に効果があるのか調べられてきたといいます。

「脳であれば、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、脳梗塞の後遺症などに。循環器系では、心筋梗塞、動脈硬化、バージャー病など。ほかにも、関節症やリウマチ、糖尿病、肥満や肝炎、ダイエットやアトピー性皮膚炎……。さまざまな病気改善に向けて作用するという論文が世界中で発表されています。

昨年、慶應大学でもラットを使った水素治療の研究結果が発表されました。心肺停止後に水素を吸入させたところ、脳障害が改善できるという効果がわかったのです。救命現場で利用できる新たな治療法として、期待されています」

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身体の中、細胞の中、脳の中……。どんなところでも入っていける抗酸化物質は水素だけ。副作用はないけれど、とりすぎても、自然に外へ抜け出てしまうので安心
身体の中、細胞の中、脳の中……。どんなところでも入っていける抗酸化物質は水素だけ。副作用はないけれど、とりすぎても、自然に外へ抜け出てしまうので安心

■「副作用がない」のが水素の魅力

 水素の注目度が高い一因として、薬などで懸念される副作用がないと言える点があります。というのも、

「私たちが放屁するガスの成分や、赤ちゃんのゲップの中には水素ガスが含まれているんです。これは、人間の消化器官の中に、腸に水素を発生させる菌がいるから。つまり、水素はもともと身体のなかにあるものなので、たくさん身体に取り入れても副作用がありません。また、身体の中へ取り込んでも、悪玉活性酸素と反応しなかった場合は、身体の外へと抜け出てしまいます。ですから、誰であっても安心して水素を摂取することができるのです」

 水素は地球上でいちばん小さな物質。私たちが個体だと思っているものでも、水素から見れば自分よりも大きな物質の組み合わせのため、目には見えないすき間をすり抜けることができます。人間の身体もそう。水素は薬などとは違って、皮膚はもちろん血管の壁や骨、細胞膜などもすり抜けて、どこへでも入り込むことができるのです。また、

「抗酸化物質はビタミンCやカテキン、リコピンやコエンザイムQ10などさまざまなものがあります。これらが細胞へ働きかける場合、油の膜と水の膜によって、苦手な場所では溶けてしまう。でも、水素の場合はどこへでも入り込めてしまうのです」

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■すべての病気がただちに治るわけではない

 どこへでも入り込める水素だけれど、研究が始められた当初は、ウイークポイントにもなりました。

「身体中のどこへでも行けてしまうので、悪玉活性酸素がたまっているところへ行き、除去してしまいます。ですから、自分が効果を望む場所へすぐに水素が到達できるとは限りません」

 例えば、肩こりを治したくて水素サプリメントを飲んだとしても、いちばん悪玉活性酸素がたまっているのが胃腸であれば、水素は肩ではなく胃腸の悪玉活性酸素と先に反応してしまうということ。そこで辻クリニックでは、患部近くに投与するために、水素点滴や水素注射、水素軟膏など、症状によって治療方法を使い分けています。また、体内では悪玉活性酸素にすぐ結びついてしまうため、何度も投与する必要があります。

「水素を飲めばすべての病気がただちに治る、というわけではありません。何十年もかけて高血圧になったり、脂肪が蓄積されているのですから、1度や2度で治るわけではありません。水素で悪玉活性酸素を取り除くことで、サビのない、身体本来の機能や抗酸化力が少しずつ戻ってきます。継続して治療を行うことで、治癒力が高まり、病気に対抗することができるようになるのです」