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甘さと酸味のバランスに苦労した。「100回以上、試作しています」(辻さん)


「ようやく発売再開ですが、いまは売れるかどうか不安で……」

 『南アルプスの天然水&ヨーグリーナ』(以下、『ヨーグリーナ』)のブランド責任者である辻佳予子さんは、心配そうに語る。本商品は昨年4月に発売した、『南アルプスの天然水』フレーバーウォーターシリーズの第2弾。

 第1弾の『朝摘みオレンジ』は他社にも類似フレーバーのある商品だったが、今回はどこのメーカーも作っていないもの。会社としてもおおいに期待を寄せていたという。

「"朝摘み"の1・5倍の売り上げ予測を立てていましたが、あっという間に品切れ状態に。お客様にはご迷惑をおかけしてしまい、申し訳なく思っております」

 ヨーグルト味という奇抜なアイデアは、いったいどのようにして生まれたのか。

「果物にとらわれず、子どものころから親しみがあるものということで、開発現場から出てきた乳系飲料のアイデアを採用しました。苦労したのは甘さと酸味のバランスです」

 実は、商品を購入する人の多くは、30代から40代の男性だという。

「フレーバーウォーターはコクがありながらゴクゴク飲めるのが特徴。主なターゲットは男性です。ただ、今回のような乳系の味わいは、"朝食を食べる時間がない""二日酔いで食べられない"と思う男性にさらに支持されるはず。その予想が的中しました」

 どんな商品を求めているのか─。辻さんは日々、リサーチを欠かさない。

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「外部の機関にお願いする調査は、数字しか見えないもの。もっとお客様の気持ちに近づくリサーチも独自に行っています。先日、出社途中に男性が"朝摘み"を手にしているのを見かけたんです。朝だからスッキリしたものを飲みたいけど、オレンジジュースだとちょっと重いから"朝摘み"なのかな~……とか、お客様の考えていることを妄想することで、よりリアルな気持ちを酌み取るようにしています」

 メーンの開発チームは7~8人。辻さん以外は男性だが、男女の感覚の違いなどで悩む機会は少なかった。

「チームの男性のほうがお客様のことをよく知っていると思っていました。ですから、彼らのアイデアも素直に聞いて取り入れようと。例えばキャップの色。当初は紺色だったのですが、男性陣から"甘みが足りなくて酸っぱいイメージに見える"という意見があり、"男性はもう少し甘えたいのかな"と思って金色に変更しました(笑い)」

 辻さんには、たとえ部下の意見でもいいアイデアは取り入れる柔軟さがある。プライベートでも仕事に役立てようと常にアンテナを張りめぐらせている。

「仕事帰りに同僚とお酒を飲みに行って、ミーティングで言えなかった話をすることもあります。休日は意識的に普段、接することのない人たちがいる場所に出かけるようにしています。ホットヨガや洋裁の体験教室などに参加して、みんな休憩中にどんな飲料を飲んでいるのか、60代~70代の女性はどんな感じの人たちなのかチェックしたり。いろいろと学ばせてもらっています」

 常に情報収集を欠かさない辻さん。近いうち私たちをアッと驚かせる商品を手がけてくれるかもしれない。