鍼灸師の資格も持ち、東洋医学を積極的に治療に取り入れている歯学博士の中城基雄先生。この10年、中城先生の医院に訪れた口臭に悩む患者さんは3000人。たくさんのお口のなかを覗いてきた先生は「舌にはその人のさまざまな情報が隠されている」と言う

舌の状態を見れば、すべてわかる

20150927koshushita

 舌のうえにつく白、黄色、紫がかった苔にあたる舌苔(ぜったい)。これを大きく分類すると、中庸型、胃熱(いねつ)型、痰飲(たんいん)型、腎虚(じんきょ)型、お血型、水滞型の6タイプがあります。

 それぞれ舌苔の色が違うのですが、例えば、胃熱型は舌が赤く、東洋医学では熱が関係すると考えられている。身体に熱を抱え込んでいるために、のぼせなどの症状も見られ、また性格も熱しやすいために短気や癇癪持ちが多いです。身体の中は常に燃えているために、口臭は焦げ臭いのが特徴。クールダウンさせる漢方を服用することで、口臭やのぼせなどの症状が抑えられるのですが、結果的には怒りっぽい性格も和らぐために、周囲の見る目も変われば夫婦仲までよくなるというわけです。

 また、高齢者になると、全身の水分量が低下し、唾液も減少することから、ドライマウスになりがちです。舌も乾燥してひび割れ、面積もひからびたように縮んでしまうために味がわかりにくくなってしまうのです。その結果、食事は濃い味ばかりを好むようになって、メタボや糖尿病などを引き起こす原因となるのです。

 このように、舌にはその人の過去の履歴、現在、そして未来が刻まれているため、舌を見れば、その人のことがわかってしまうのです。そこで、毎朝、自分の舌を鏡でチェックする“あかんべー習慣”を身につけましょう。舌を観察することで、自分の体質を知ることができるので、体調をコントロールしやすくなります。口臭の変化は自分の身体の変化を表していて、病気の予兆もわかるのです。

 では、実際に6タイプに分類される舌苔の特徴をそれぞれ見ていきましょう。

あなたの舌はどのタイプ?

▼1中庸型:ベストバランスな正常タイプで、舌苔の色は「淡紅薄白苔」

 赤からず、白からず、白く薄い苔が正常で、消化機能も正常、元気旺盛です。唾液の分泌も旺盛で、粘つきもせず、不快感をともなう口臭は発生しにくい体質です。

▼2胃熱型:カッカッ熱化タイプで、舌苔の色は「赤」

 赤ら顔で、手のひらも鼻尖も眉間も赤く、声が大きくて短気なのが特徴。舌が赤いほど、口臭レベルも上昇しがちで、歯槽膿漏にかかりやすく、しょっちゅう口内炎ができます。口の中が乾き、のどの奥もしみたりします。胃熱を引き下げる食材、ハトムギ(ハトムギ茶)、そば、きゅうり、牡蠣、しじみなどで食養生しましょう。

▼3痰飲型:ネバネバ湿化タイプで、舌苔の色は「黄色」

 ゲップが多く、倦怠感、鼻水、関節痛、痰がらみ、のどのつかえ感が見られます。暴飲暴食をしたり、二日酔いの朝にも見られる舌苔です。口臭の中でも重度になりやすい傾向があるので注意が必要になります。痰を排出する食材、メロン、スイカ、セロリ、白菜、ウーロン茶、緑茶などで食養生しましょう。

▼4腎虚型:カラカラ乾燥タイプで、下にひび割れが多い「烈紋」

 のぼせ、ほてり、不眠、まぶたのけいれん、ひざ痛、腰痛が見られます。唾液の分泌が低下することで舌が干し椎茸のようになり、細菌感染や歯周病菌が増殖、口臭が発生します。潤いを与える食材、うなぎ、小魚、のり、わかめ、ひじき、ほうれん草、玄米、ピーナツ、プルーンなどで食養生しましょう。

▼5お血型:ドロドロ血液タイプで、舌苔の色は「紫」

 青あざ、血腫、クモ状血管、目のクマが出やすい。抹消循環不全になりやすく、歯肉の色もどす黒く変化してきます。血行不良により歯周病菌が増殖しやすく、口臭も発生しやすくなります。サラサラ血液効果の食材、さんま、いわし、さば、玉ねぎ、長ねぎ、にんにく、らっきょうで食養生しましょう。

▼6水滞型:ギザギザ浮腫タイプで、舌のフチがギザギザしている

 慢性疲労、むくみ、下痢、頭重、鼻水、悪心、嘔吐などの症状が見られます。疲労により身体の動きの機能が低下し、血液のめぐりが悪くなって冷え症になりやすいのが特徴。声にも力がなく覇気が感じられません。湿を追い出す食材、しそ、パセリ、ニラ、くるみ、栗、みそ、酢、納豆、生姜で食養生しましょう。


中城基雄(なかじょう・もとお)先生 ●歯学博士・鍼灸師。中城歯科医院院長で、鍼灸師、食品保健指導士などの資格を持ち、口臭専門医院として知られている。東洋医学の知識を用いて、歯科医療だけではなく「個人の体質」に注目し、口臭を発生原因から探る根本的な治療法を生み出したことから、全国から口臭に悩む患者が訪れる。