育児と介護の同時進行を余儀なくされる“ダブルケア”に悩む女性が増えている。中には、仕事や看護、社会活動にも従事し、3重、4重の負担を抱える人もいる。当事者に、その現実を聞き、解決策を探った―

 ダブルケアの視点を持った子育て支援・介護従事者を増やそうと『ダブルケアサポーター養成講座』が16日、横浜市で初めて開かれた。この講座は、横浜国立大学大学院の相馬直子准教授、英国ブリストル大学の山下順子、そしてNPO法人「シャーロックホームズ」(横浜市)の東恵子理事長が中心となって開催。

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津村さん(仮名)は夫や職場も協力的。「完全にひとりなら参っていた。協力者を見つけ乗り切って」

 参加した津村沙耶さん(仮名・44)は、今まさにダブルケア真っただ中。9歳、5歳、3歳の子育てと、同居する義父母の介護に追われている。

「義父は前頭側頭型認知症で、人格が激しく変わってしまうことが特徴のひとつ。子どもに激高することがあるので、“怒っているわけじゃないんだよ”と、子どもをケアするのが大変でした」

 デイサービスを受けていた義父は今年6月に介護施設に入所したが、津村さんの分刻みの1日は変わらない。朝6時起床、家事、待機児童の関係で別々の保育園へ通う下の子2人を送り届け職場へ。帰宅後はそれぞれの保育園に迎えに行き、食事、風呂、洗濯に寝かしつけ……ひと息つけるのは深夜0時過ぎだ。それでもへこたれない。

「いちばん苦しかったのは、三男がお腹にいて義母が大腿骨骨折で入院した際でした。大きなお腹でベビーカーを片手で押し、片手に荷物。5歳の子に義父の手を引かせて病院に出かけました。あのときはテンテコマイでした」

 自分の時間がとれず、心身ともに大きなストレスを感じたはず。津村さんは、

「私は困っていることを周りに言っちゃうタイプなんです。たまたま町内会の当番が回ってきたとき、自分はダブルケア当事者だと周りに伝えたんです。それから民生委員が気にかけてくれたり、ヘルパー経験があるママ友に救われたりと出会いと情報に恵まれるようになってきました。自分がつぶれちゃったら元も子もないですから、どうかひとりで抱え込まないでほしいです」

 孤立を避け周囲にカミングアウトすることは、ダブルケアの重要な対処法のようで、前出の相馬准教授は、

「誰に支えられたかと問うと“誰も助けてくれなかった”と回答した人が約1割。当事者を孤独から脱却させるには、夫や友人のほかヘルパーなどの訪問看護者らがキーパーソンでしょう。聞き手やアドバイザーになってくれるだけで負担が一気に軽くなることがあります」

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16日開催の『ダブルケアサポーター養成講座』で行われたグループワークの様子

 前出の東理事長は、

「理想は地域密着の仕組みをつくること。地域ごとに子育て、介護、それ以外への従事者がダブルケアを認識し、明日にでも実践的な取り組みを始めるよう促したい」

 決してひとりじゃない。その思いがダブルケアの負担を軽減してくれる。