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 4月に入って全国で、寺社などの文化財に油などの液体がまかれる被害の報告が相次いだ。逮捕状が出ているのはニューヨーク在住の日本人産婦人科の医師で教祖様。東日本大震災の2時間前に神の啓示を受けて、日本の社寺などに棲む悪霊を清める儀式のため、ハーブ油をまいているらしい。今回は千葉県にある香取神社の柱や拝殿に油をまいた疑いで逮捕状が出ている。成田山新勝寺の総門、釈迦堂、三重塔、一切経堂などが被害にあった。

 成田山新勝寺は24時間参拝可能な年間1000万人以上も参拝者が訪れる真言宗智山派の大本山。車椅子でも参拝できるようにエレベーターもある。

 油のかかってしまった建物を見てまわる。大半が建造物の正面ではなく裏側の人目につかないような場所で行われている。油をかけるのだから、大勢の人の目から隠れた場所を選んで自分なりの儀式をこっそりしたのだろう。こっそりと。

 一方、全国でそのような事件は16都道府県48寺社にわたる。その半分以上は模倣犯の仕業のようだ。模倣犯、愉快犯というのはマスコミなどで報じられた事件を真似て、もしくは犯人への対抗意識から、あえて同じ手口で犯罪をおかすこと。信号待ちである人が空を見上げると隣の人も、さらに隣の人も連鎖して、みんなが空を見上げてしまう。それが模倣だ。

 模倣犯は犯罪を真似る、またそれを真似る人が出てくる。捕まっていない犯人をみて意外に簡単にできると思ってしまうのかもしれない。

 普通の人は犯罪の模倣はしない。当たり前のことだ。

 模倣犯は心に闇を持ちストレスのはけ口を犯罪という、やってはならないことで求めることがあるのだ。人生をかけてもいい“真似”なわけがない。代償は大きい。

〈プロフィール〉

神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari