「戦争する国になっちゃうのは怖い。やりたいなら安倍さんが行けばいい」(東京・練馬区=19歳)

「日本には平和のリーダーという日本の役割がある。2度とつらい思いはしたくない。最後の戦後にしなきゃ」(東京・小平市=73歳)

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「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)」主催の国会前抗議でスピーチをする若い女性


 毎週金曜の夜、国会正門前で行われている『安全保障関連法制』(以下、安保法制)の抗議行動に参加した女性たちの声だ。会の主催は学生。たくさんの人々が週末ごとに駆けつけている。国会前では反対する市民の座り込みが続き、デモや集会も全国各地で開催。誰もが口にするのは、日本が戦争をする国になってしまうという危機感、安倍政権への強い不信感だ。

 安保法制とは、『国際平和支援法』という1本の新しい法律と、『武力攻撃事態法』など今ある法律10本の改正案を合わせた総称。国会の憲法審査会で、参考人の憲法学者3人が全員そろって「憲法違反」として以来、冒頭のような反対の声が広がってきている。

 昨年7月1日に閣議決定された集団的自衛権は、日本が直接攻撃されていないにもかかわらず、海外で、日本と密接な他国と一緒に戦う権利を使うことにした、というもの。5月14日に閣議決定された安保法制にも盛り込まれている。だが、安倍晋三首相は断言した。

「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にありえない」「戦争法案などという無責任なレッテル貼りはまったくの誤り」であると。

 本当だろうか?

3人の憲法学者が違憲と断言・安保法制の危なすぎる中身

「日本が攻撃されてもいないのに、政府判断で、世界じゅうで自衛隊の武力行使を可能にする法案は憲法違反と言わざるをえません」

 と名古屋学院大学の飯島滋明准教授(憲法学・平和学)はきっぱり言い切る。同様に、憲法学者の多くが違憲と主張しているが、政府は1959年の砂川事件最高裁判決(砂川判決)を持ち出して反論。合憲と訴えている。

「戦争放棄を誓った憲法に照らし合わせると、集団的自衛権は認められないという議論が戦後、歴代内閣で長い時間をかけて積み重ねられてきました。’01年のアフガン戦争や’03年のイラク戦争のとき、自衛隊は海外に派遣されましたが、危険になったら撤退するというのが政府の立場でした。ところが安倍政権は『積極的平和主義』のもと、従来の憲法解釈を勝手に変えたのです」(飯島准教授)

 安保法制によって何がどう変わるのか。全体像と想定される事態は、表のとおり。

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「自衛隊を限りなく軍隊に近づける。それが安倍首相の狙いです。そのためには現在かけられている憲法上の制約をはずす必要がある。これによって安保法制の中にさまざまな"事態"が並ぶことになりました」

 そう明かすのは、防衛政策に詳しい東京新聞論説兼編集委員の半田滋さんだ。安保法制の問題点を次のように指摘する。

「集団的自衛権というのは、他国を武力で守るために自衛隊が先制攻撃をすること。憲法をどう読んでも許されません。そこで他国への攻撃であっても、日本の存立が脅かされるような恐れがあれば、日本の存立の危機に陥る事態であると言い換えた。これが『存立危機事態』です。あたかも個別的自衛権をやるのと変わらないかのように、ものごとを小さく見せるために編み出した言葉と言えます」

 ①密接な関係にある他国が武力攻撃されたことで日本の存立が脅かされ、②国民を守るためにほかに適当な手段がなく、③必要最小限度の実力行使にとどまる。この『武力行使の新3要件』にあたると時の政府が判断すれば、自衛隊は海外で他国のために武力行使ができるとしている。

 加えて『重要影響事態』になると、自衛隊は世界じゅうに出かけて行き、外国軍への武器や弾薬の提供、輸送などを行う。要するに後方支援、兵站と呼ばれる軍事行為だ。

 半田さんが続ける。

「『国際平和支援法』も自衛隊がやる後方支援という意味では、『重要影響事態法』と中身はまったく同じ。この2本立てにすることで日本の危機であれ、世界の危機であれ、自衛隊を軍隊らしく派遣して"切れ目のない対応"ができる。そうすれば自衛隊は海外で外国の軍隊、はっきり言えば、米軍のお手伝いが可能になるというわけです」

 相手から攻撃を受けたときに必要最低限度の反撃をする、いわゆる専守防衛に徹してきた自衛隊にとって、海外派遣の拡大に伴い隊員のリスクは当然高まる。安倍首相は安全性の確保に努めても「リスクは残る」と認めつつ、その程度や具体的内容には触れていない。

 こうした姿勢を「悪徳商法のやり口そのまま」と批判するのは、憲法問題に詳しい伊藤真弁護士。

「いっさい戦争に巻き込まれることはないと大きなことを言ったり、中身がまさに戦争法なのに『平和安全法制』なんていう間違ったレッテルを貼ったりする。物事にはメリット、デメリットの両方があるのに、リスクをきちんと説明しようとしないのは不誠実。そのことに国民も気づくべきです」