この2週間ぐらいで3人の友達がパタッとFacebookから消えた。忽然と消えた。

 一人は漫画家の江川達也さん。一日数回更新することもあった。内容は多種にわたる。今日会った人のことや、自分が主催している地形散歩クラブの集まりのページに、テレビ出演で移動中の新幹線の駅弁だったり、共演者の話、オリンピック開催に反対なことや、最近話題のデザイナー佐野研二郎さんのことも数多く取り上げていた。意見がはっきりしていて頭の良い人だと文章を読んでそう思った。

 もちろん、個々の意見は賛否両論。賛成する人も反対する人もいる。

 ボクは「なるほどなあとこういう考え方もあるんだよな」と学ぶことも多かった。真髄をつき、こころの奥に隠していたことを言い当てられたような、そんな気持ちになることもあった。まあ、「こんなのが好きなんだよね~」なんてラフな話も結構あるけど。楽しみにしていたので、3日も更新されないと心配だった。

 連続ドラマが、急に打ち切りになったような……。

 残りのふたりのうち、ひとりは、仕事場で出会った友人だったが、Facebookを始めて数か月で、友達がもうすぐ3000人に届くんじゃないかという人だった。内容は、食事のことが多かったが、気がついたら、最近まったく見なくなった。やめたのか?とぐらいに思っていた。その友人は2週間たった今でもFacebookに帰ってこない。

 でも江川さんは、3日で戻ってきた。何らかの理由でアカウントが一時的に停止されていたのだ。

 そう思うと、Facebookというものは、その囲みの空間を借りているだけであって、自分で投稿した文章も写真も、自分のものではないのだなあ。

 それは、今回、みんなの話を聞いて、感じたことだ。

 江川さんも、主催していたグループ「地形散歩クラブ」は消えてしまって、いままでのすべての思い出をどうにかしてほしいと、メンバーから懇願されたらしい。復活したいまでも、消えたままという。

 江川さんも、もう一人の友人も、明確なアカウント停止の理由はわからない。

 3日で戻ってこられるのか? 1週間なのか? 永久に停止なのか?

 その期間や利用頻度の制限は、詳細を公表することはできないそうだ。

「急にボクのFacebookが消えてしまったのですが、どうしてですか?」――そう聞いてみたくても、問い合わせの電話番号もアドレスも言われてみれば、見当たらない。やっと「ヘルプセンター」にたどり着いて、「アカウント停止が間違いだと思われる場合は、申し立てを送信することができます」ことがわかったが、とてもわかりにくい。

 Facebook側からはしっかりと管理されていて、見張られている。

 警告を複数回、無視して禁止した行為が続いた場合、人物や団体に成りすました場合、規約に違反したコンテンツを投稿した場合、アカウントは停止される。

 さらに、こんな理由もある。

 1日に送信するメッセージが多すぎる、写真に実際写っていない人がタグ付けされているなど……。違うタグがついていることをFacebookは認識できるんだな、とちょっと驚いた。

 こんなに人間臭い作業をFacebookはどうやってるのか?

 自動的に利用規制違反を監視するシステムもあるにしても、この微妙なさじ加減をどう行っているかちょっと興味がある。

「急に消えて、再度戻ってきたFacebook、今後どう使っていきますか?」と江川さんに聞いてみた。

「以前と同じように使っていこうと考えています。どういうときに停止にあうかも楽しみです。それもまた世間に報告していきたいです」

 また、「自分でSNSを作らなければいけないと痛感した」とも語っていた。

 FacebookをはじめとするSNSで、さらに問題なのが、肖像権や著作権の問題だ。

 そんな堅苦しい話でなくても、みんなで撮った写真を無断でアップしてしまった。後ろに自分が映り込んでしまった写真を載せられた。ひどい顔の写真を無断で載せられた。昨日話していた内緒のはずの話を載せられた。なんて話は山とある。

 最近ではみんなで撮る写真などでは撮るときに、「アップするから嫌な人は写らないで」なんて声をかけるのがエチケットだし、SNSの写真で「今、ハワイ!」なんて家族写真を載せちゃうと、留守なのがわかっちゃうので、防犯上、帰ってきてからアップするのは当然と聞いた。

 人物の顔が認識できる写真を無断でネット上に上げてしまい、訴訟を起こされて、35万円の慰謝料の支払いを命じられた事例もある。

 その投稿によりその人の嗜好や趣味が周囲にばれてしまったり、その人の社会での生活に支障がでたりする場合は慰謝料を請求される場合もあるとのことだ。

 こんなケースにならないためには、最善の注意、気配りをしていればだいたいが防げる。

「投稿したものは見る人たちにどう読まれるか?」

 そんなことをじっくり考えて投稿しないと、記事は一人歩きしてしまう。

 思わぬところで人を傷つけてしまう。

 まだまだ新しいメディアだから試行錯誤だけれど、書くほうも見るほうも責任がかかってくるのは当然だ。

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※Facebookの「ヘルプセンター」、「アカウントの停止」について。「ヘルプセンター」にはPCの場合、Facebook画面上部右側の▼から「ヘルプ」を選択、スマホの場合、画面下部右側の「その他」から「ヘルプとサポート」を選択する。

〈筆者プロフィール〉

神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari