現在の20代、実は平均すると“交際相手ナシ”の男女が約7割。そのうえ約4割が「恋人はいらない」そうだ。その一方で、20代の9割は結婚を望んでおり、なかでも恋愛結婚を望んでいるという。恋愛はしたくないが、結婚それも恋愛結婚がしたいという“矛盾”が起きている――。
20151008 ushikubosan (12)
牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)●マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。1968年東京生まれ。日大芸術学部映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。その後、独立し2001年に起業。「草食系男子」「年の差婚」などを世に広める

『ホンマでっか!? TV』(フジ系)や『ワイド! スクランブル』(テレ朝系)など、さまざまなメディアでお馴染みのマーケティングライター・牛窪恵さん。彼女が取材・執筆した『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー携書)が話題を呼んでいる。

 今回のインタビューでは、過去80年代~90年代半ばまでのあいだにヒットした恋愛ドラマを読み解きながら恋愛や性、そして結婚が、時代によって如何に変遷してきたのかを分析する。

――性と恋愛と結婚観の変遷。牛窪さんは本のなかで、50年代後半〜70年代において、性と恋愛と結婚は連動して切り離せないもの、つまり「三位一体」だったと指摘されています。ところが、80年代以降、性と結婚の分離が進み、「自由恋愛」の気運が高まってきたと。恋愛観の変化はドラマにも反映されているのですか?

牛窪:明石家さんまさんと大竹しのぶさんの共演でも有名な『男女7人夏(秋)物語』(TBS系)。12日に、TBSの特別番組で29年ぶりに当時の主要キャストが再集結することで話題ですね。

 夏物語が1986年に、秋物語が1987年に放送されましたが、ここでは数名の男女が集まって、同じコミュニティ内でセックスしたり、別れたりを繰り返すという、「自由恋愛」が描かれていますよね。

 当時はそれが新しかったわけですけど、SNSなどで常に行動を監視し合ういまの若者たちは、グループの和を乱すのではないかと危惧して、同じコミュニティでは恋愛をしない傾向にあります。

――たしかに、いまの若い世代はSNSの発達などもあって、常に周りの空気を敏感に読んで行動するのが当たり前。誰が「いいね!」を押したか、あるいは「リツイート」しているかなどを意識している若い人たちは実際に多いですね。

牛窪:ええ。そして、80年代以降のドラマにおいて注目すべきキーワードは「告白」です。夏物語の一番有名な場面は、降りしきる雨のなか、ゴミ捨て場にて、さんまさんが大竹しのぶさんに「好きやねや!」と告白するシーンなんですよね。

 あるいは、1991年に放送された『101回目のプロポーズ』(フジ系)でも、武田鉄矢さんが「ボクは死にましぇーん」とトラックの前に立ちはだかり、命がけで告白をしていますが、「告白」というのは交際において、決定的なイベントだったんです。

20151008 ushikubomegumi

――ドラマを見たことがなくても、そのセリフだけは知っているという方も多いですよね。

牛窪:そうですね。それほどまでに、「告白」というは重要なシーンだったんですよね。だけど、いまの若者たちは告白したがらないんです。“フラれるリスクを負ってまで告白をしたいとは思わない”という20代が、男性では3人に1人、女性では2人に1人いるといわれています。

 最近のドラマを見ていても、たしかに印象に残る告白シーンは激減していますよね。

――ドラマが自由恋愛を描くという流れは、その後も続くのですか?

牛窪:いえ、それが1993年の『高校教師』(TBS系)辺りから、“第1次純愛ブーム”が起こるんです。続いて『愛していると言ってくれ』(TBS系)、このあたりは「実らぬ恋」がテーマ。『高校教師』も、生徒と先生との、許されない禁断の愛です。自由恋愛により、性が開放的になってくると、“禁断”というのは、なかなか起きなくなってきますよね。そうしたなかにおいて、“禁断”を犯してまで貫きたい純愛というものに憧れる人も多かったのではないでしょうか。

 ちなみに、バブル崩壊後には『ビューティフルライフ』(TBS系)、そして『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)などが“第2次純愛ブーム”としてヒットします。これは、どちらか一方が不治の病にかかって亡くなるというパターンです。そこに性的な要素は介在していないのが特徴ですね~。

――80年代以降に起こった、性の開放と自由恋愛。では、結婚観はどうだったのでしょうか?

牛窪:1994年には『29歳のクリスマス』(フジ系)というドラマが放送されました。ここでタイトルにもなっている29歳というのは、この頃、女性が会社から「まだ結婚しないの?」と肩叩きに遭うような年齢だったんですね。「29歳までには絶対に結婚して辞める(寿退社)」というのが、当時の女性たちの目標でした。

 いまの51〜56歳くらいの女性たちのなかには、入社して3〜4年後、寿退社を暗黙のうちに求められたという経験をお持ちの方も多いと思います。00年代に入り、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』などの影響もあって、未婚のキャリアウーマンはかっこいいという認識も広がりましたけどね。

――この未婚率、特にいつ頃から上昇したのですか?

牛窪:90年代後半〜00年代半ばですね。高学歴で就職活動を勝ち抜き、男性と肩を並べて働く「バリキャリ」(バリバリ働くキャリアウーマンの略)という言葉がバブル崩壊後に流行りましたけど、このバリキャリが急増したことに比例して、未婚率も一気に上昇しましたよね。

 ただ、最近では、先祖返りとでもいいましょうか、29歳までに結婚して、32歳辺りまでに1人目を産んで……と考える女性がまた増えてきたような印象を受けています。

*続きは、『ロングバケーション』から『モテキ』までのドラマを見ていきます。10月11日公開予定の後編でお楽しみください

(取材/編集部 構成・文/岸沙織)