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 松浦祐史さん(30)が日本赤十字社和歌山医療センターで初期研修医を務めていたころに実施した調査をまとめた『キラキラネームとER受診時間の関係』という論文が話題になっている。

 今回の調査結果の背景として考えられることは何だろうか? 京都文教大学総合社会学部で教鞭をとり、『名づけの世相史「個性的な名前」をフィールドワーク』(京都文教大学刊)の著者でもある小林康正教授は子育てが両親だけのものとなってしまっている点と指摘する。

「この論文の結果と直接関係があるかは断言できませんが、基本的にはキラキラネームの出現と地域社会の喪失とは、関係があると思います」

 地域社会が保たれていて、親戚から近所の人までゆるやかでも協力しあって子どもを育てる社会では、こうした協力者のことも考えて命名されたという。

 しかし、周囲に子育て経験豊富な人材がいない成育環境では、そういう配慮をする必要性は薄まる。

 反面、頼れる人材がいないためにちょっとの不調でも慌ててしまい、それがキラキラネーム児の両親によるERの深夜受診増につながっているとも考えられる。

 あるいは反対に、「深夜受診の経済的・精神的負担をいとわず、子どもの安全を最優先した」ととらえることもできる。

 この場合では、キラキラネーム児の親のほうが、非キラキラネーム児の親よりも子どもを守る気持ちが強いといえるかもしれない。

「調査では年齢との関係が明らかではありません。年齢が低いほど時間外診療を受ける可能性が高いとも考えられますから。またここ10年、さらに名前のキラキラネーム化に拍車がかかっており、その影響もあるかもしれません。ただ、それでもキラキラネームを定義して、こうしたかたちで相関を調べた研究はありません。その意味では、とても画期的な研究だったと思います。おもしろい研究だと思いますね」(小林教授)