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 今年4月から電力自由化がスタートする。原発事故を機に自然の力を利用した再生可能エネルギーへ期待が高まりつつある。だが、そんな発電施設の近隣に想像を絶するような苦痛を強いられている住人がいることはあまり知られていない。いったい何が起こっているのか。被害者の声を聞いた。

「私は太陽光パネルの設置には、大賛成でした。福島の原発事故が起こってから、これからの日本には再生可能エネルギーが必要だと考えていましたから。工事中に飲み物を差し入れたこともあったよ。いちばん協力したのに、こんな結果になるなんて……」

 兵庫県姫路市内。住宅街の一角に広がる約5000枚の太陽光パネルを眺めながら、近くに住む建設会社経営者の被害男性(65)は言葉の端々に悔しさをにじませる。

 一帯は以前、農業用のため池を埋め立てた空き地だった。近隣住人の憩いの場として親しまれていたが、今では周辺住人に不快感をもたらす争いの場になってしまった。

発電施設開発企業「JAG国際エナジー」(本社・東京)がその場所に太陽光パネルを設置するための住民説明会を開いたのは、2013年の秋から冬にかけてだった。問題のないプロジェクトという説明は、住民に受け入れられた。翌春、設置がスタートしたが、すぐさま問題のタネが発芽した。

「僕の家の近くから建設を始めたから、6月ごろには家の中に光が入ってまぶしいな、と感じるようになったね」

 被害男性宅からもっとも近い太陽光パネルは、ほんの10メートル先。自身も建築の仕事に従事し、「クレームがあったらすぐに直す。大きな企業だから、ちゃんとやってくれるはず」という思いから、光が差し込む写真を撮り見せれば、相手も対応してくれると考えていた。だが、期待は裏切られた。

「普通、住民が何か言ったら、1回工事をやめましょうってなる。それが一切ない」

 被害状況は自治会で協議され、JAG国際エナジーに申し入れ書を送付した。住民説明会で配布された資料には「近隣にお住まいのご家庭にご迷惑をおかけすることはないものと考えております」と、しっかりつづられていたにもかかわらず迷惑は発生した。

「相手は“入射角と反射角を研究室で調査しています”と回答しただけで、音さたなし。住民説明会の資料もいい加減。騒音も電磁波も反射光も火災もないって説明したけど、嘘ばっかりですよ。実際、こうなっているのですから」

 前自治会長の佐々木孝志さん(72)は、「いい加減な企業ですね」とばっさり。「これまでの設置場所は、人里離れた場所が多い。私らの地区は千戸ぐらいありますし、民家に隣接した場所で大丈夫なのかと心配していた」

 杞憂は現実になってしまった。必要以上の光の侵入が、被害男性の家族を襲う。

「真冬の今は、外気温0度でも、部屋の中は13度くらいまで上がります。暑さより、まぶしさが問題ですね」(被害男性)

 こう訴えるが、命が危ういほどの被害を受けるのは夏。室内の温度を測定すると、昨年8月は40度を超えた日が20日間、52.2度を記録した日もあったという。

「夏は毎日、本当につらい。窓を全開にして、扇風機で空気が環流するようにしていますけどたいして変わりません。皮膚が焼けるような感覚です」

 そんな暑さの中にいれば、当然、身体は変調をきたす。

「朝ごはんを食べ終えて、僕が居間でコーヒーを飲んでいたんです。そしたら妻が、気分が悪いっていうんです。顔面蒼白でね。ベッドに移動しようとしたら、しゃがみこんで立ち上がれなくなってしまった。急いで抱き起こしたら顔じゅう冷や汗。すぐに病院に連れて行ったところ、熱中症だって言われてね」

 翌日、今度は自分が倒れた。診断は妻と同じ熱中症。

「あなたたち夫婦は2人して家にいて、どうしたんですか。しっかりしてくださいって医者に怒られましたよ」