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■竹田流メソッドで簡潔にまとめた1冊

 明治天皇の玄孫であり、テレビや雑誌などで幅広く活躍する竹田恒泰さん。これまで日本の精神性や歩んできた道などに関する著作活動を行ってきた氏が、自身初となるマナーに関する本を出版されました。

「マナーとは“型”のことであり、型を整えることで気持ちも引き締まり、心も整ってくるんです」

 そう語る竹田さんが受けた「旧宮家でのしつけ」という序章から始まる本書。「食事」「動作」「言葉」「敬語」「付き合い」「お金」「服装」「生き方」という8つの作法、そして巻末には神社参拝の作法まで網羅しています。

「マナーの本というのは冠婚葬祭など必要な時にしか読まないもので、“こういうときにはこうしなさい”という型のことだけが書いてあるものですが、“なぜそうなっているのか”という理由まで説明しているものは、ほとんどないんですね。

 この本では、なぜそういう型になっているのか、そして、その動作の根底に横たわる“価値観”というものまで、丁寧に説明しています。これらのマナーは私が編み出したのではなく、先人たちが積み上げてきたことであり、そう決まっているものなんです」

 子どものころ、親に「お米をひと粒でも残すと目がつぶれる」と叱られた方もいると思いますが、本書ではなぜそう言われるのかということから、正しい箸の持ち方や忌み箸、そして懐石料理でのマナーの由来など、こまやかに懇切丁寧に解説されています。

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■子どもにマナーを教えないのは不幸

 そして母親なら気になるのが「子どものしつけ」のこと。竹田さんは「礼儀作法は子どものうちから教えるのがいい」と言います。

「理屈ではなく、ダメなものはダメ、こういうものだということを教えるといいでしょう。食事のマナーが悪い人は出世しないと言われますが、だからといって急にできるようにはなりません。幼いころから正しくしつけることが、将来のためになるんです。私も子どものころにいろいろと叱られましたが、あのとき教えてもらえたことに感謝しています。

 もちろん当時は面倒くさいなと思ったこともありますが、それ以後誰かに教わる機会はありませんでしたからね。最近では電車やレストランなどで騒いでいる子どもを叱らない親が多いですが、それは学ぶ機会がないという、子どもにとって不幸なことなんです。親や社会がマナーについてうるさく言わなくなってしまった今だからこそ、できる人が目立つ。すると“この人の親はきちんと教えたんだな”といい印象を与えるものです」

 また「女性の方でしたら、特に“食事作法”と“言葉”に気をつけるといいと思います」と竹田さん。

「箸を美しく使えることや正しい敬語で話せるというのは、見る人が見ればわかるものですからね。例えばお見合いの席などで食事や言葉遣いのマナーを知らないと、一瞬で“この人は知らないんだ”と思われてしまいます。またビジネスシーンでもマナーや所作は必ず見られますよね。なので、そういう初歩的なところでつまずいてしまっては、非常にもったいないんです。

 あとは本書でも取り上げている“御所言葉”を使うのもいいと思いますよ。“おかか”や“おめしもの”“おなか”など、もともと御所で働いていた女性が作り、使っていたやわらかい言葉ですからオススメです」

 また日本はヨーロッパなどに比べて階級社会ではないため、きちんとした礼儀作法が身についた人は一目置かれるのだそう。

「よく“いい家”と言われますが、これはお金持ちの家ということではなく、日本の大事な礼儀作法などをしっかり教えている家のことを言うんです。つまり“いい家に生まれる”というのは、作法や所作がきちんとしているということ。礼儀作法がきちんとできれば、今日この瞬間から“いい家の生まれ”になれるんです。

 また恋愛のときは気にしませんが、結婚になると親の存在が見えてきますよね。マナーや所作は親のしつけの賜物。そこでしっかりしていれば“いい家の生まれ”と見られて、まっとうな人という印象を相手に与えるわけです」

 日本の伝統的な文化には“他者を尊重する”という考えが根本にあり、お互いに相手のことを重んじて、世のため人のために生きることが美徳とされ、尊敬されるんです、と竹田さん。

「もしこの本を読んで、これまで間違っていたなら、正しい知識を得る機会を得たと思ってください。そして今すぐに改めればいいんです。礼儀作法は見る人が見ればわかること。マナーは人と接するために必要なことなんです」

取材・文/水原すみれ

撮影/齋藤周造

<著者プロフィール>

たけだ・つねやす 作家・タレント。1975年、旧皇族・竹田家に生まれる。慶應義塾大学法学部法律学科卒。2006年『語られなかった皇族たちの真実』で第15回山本七平賞を受賞。著書に『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』『現代語古事記』など。全国17か所で開催している「竹田研究会」を含め、年200本以上の講演を行っている。