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 国内外で数多くの映画化オファーを受けながら、そのスケールの大きさゆえに映像化が叶わなかった夢枕獏のベストセラー小説『神々の山嶺』。

 世界最高峰のエヴェレストに実際に登り、邦画初となる標高5200メートル級で撮影を行った映画『エヴェレスト 神々の山嶺』(3月12日全国ロードショー)として完成した。

 阿部寛が演じたのは、岡田准一演じる山岳カメラマンの深町がネパールのカトマンドゥで偶然見つけた、孤高の天才クライマー・羽生。羽生の謎めいた過去を調べるうちに、次第に興味を持っていく深町。

 そして、日本に残した人がいながら単独エヴェレスト登頂に挑戦する羽生を見届けることになる。

 過酷な撮影だからこそ、食事は充実していたそう。常に食材を運んでくれるスタッフがおり、野菜や魚、梅干しと日本食を60人くらいのスタッフとともにワイワイ楽しんだ。

「原作の夢枕獏さんが来てくれたんです。ソバ打ちができる仲間を何人か連れて。現地で手に入れる予定だった量の粉が入手できなくて、ひとり3本くらいしか食べることができなかったけど、異様にうまかったですね。山の上のソバは(笑い)」

 今作を“生きる力を目覚めさせてくれる映画”と語る。

「大自然の中にいると、人間が60人いても、ほんの1点。生と死と孤独の世界から戻ってきたとき、日ごろ生活している暮らしがなんて幸せなんだろうと、生きていることへの実感が湧いてくると思う。

 今作の羽生や(昨年末の主演ドラマ)『下町ロケット』もそうかもしれないけど、夢や情熱に向かってまっすぐに進んでいく人の姿、その後ろ姿から感じてもらえたらと思う」

 数々のヒット作に主演、出演し、いまやエンターテイメント業界を引っ張る存在となった。阿部自身は“神に愛されている”と感じているのだろうか?

「ふとしたことで“神がかっている”と感じることはあります。だから、いろいろなことを大切にしながら過ごさないといけないと、この年になって思うようになりましたね。いつセリフを覚えられなくなるんだろうとかって、ちょっと年齢を感じるようにもなりましたが、まだまだやったことのない役が10のうち9は残っているんじゃないか、そう思っています」

撮影/佐藤靖彦