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 日本初の女性実業家をモデルにした朝ドラ『あさが来た』。どんな困難にも屈せず、明るく前を向き、そして開拓していくヒロインに、多くの女性が元気をもらっている。そこで女性学研究家の田嶋陽子さんに話を聞いた。

「『あさが来た』は“田嶋流女性学”を証明するような事象がいっぱいなんです。例えば、この間、あさ(波瑠)は刺されたでしょ? 死の瀬戸際で、走馬灯のようによみがえってきた人はおじいさん(林与一)とお舅さん(近藤正臣)だった。おじいさんは、本当に彼女をそっくり受け入れていましたよね。

 “女だからダメ”ではなく、自立心を伝授した。そしてお舅さんは、彼女の炭鉱や銀行への挑戦を最初は渋っても、全部信用してやらせたでしょ? そのあとはやっと夫(玉木宏)が“俺が助けなきゃ”になったけど(笑い)」

 そのラッキーをあさ自身が引き寄せていると語る。

「何に出会っても屈せずに、夢を折らない。夢を持ち続け、その場を精いっぱい生きて成長していけば、夢を助けてくれる人が自然に出てくるってことかな」

 物事を成し遂げた女性先駆者たちは、やっぱり男性の協力を得ているとも。

「“男を打ち負かそう”なんて思っているのはバカで。だって、その人の夢や目標は、目の前の男を打ち負かすことではないはずですから。それに、働くことって楽しいじゃない? “へえ、私、こんなことできたんだ”“こんな失敗しちゃった。じゃあ、明日は頑張ろう”みたいな自分を成長させる楽しみ」

 最近は、社会のいろんなところで働いている女性の顔が見えるようになってきた。

「男女雇用機会均等法(1986年)以降、いろんな女性の意識、頑張り、そして活躍によってここまで来たんだと思います。でも日本のGDP(国内総生産)は世界3位なのに、日本女性の社会的地位は世界101位(※)なの。日本の働く女性の数は、男性に比べて65%。 あと少なくとも9~10%の女性がフルタイムで働いて、税金をきちんと払ったら年金問題も解決すると諸外国から指摘されているんですよ」

 しかし、現実には託児所や保育園の問題がある。

「だから、子どもがいる人は仕事を続けられず、辞めちゃう。それに相変わらず法改正がされず、専業主婦は103万円以上働くと税金を取られるから、結局はパートにとどまる」

 シングルマザーの問題もある。

「もちろん結婚するのも、子どもを産むも産まないも女性の自由。でも、産むなら女性も経済力があったほうがいい。そして、産んでお金がなくなった場合には、きちんと援助するシステムを行政がつくらないと」

 安倍首相の“女性活躍推進”もお手並み拝見と話す。

「でも“'20年までに女性管理職の比率を30%程度にすることを目指す”も事実上、断念して“'20年度末までに国家公務員の本省課長級に占める女性の割合を7%とする”に今冬、変わってしまった。

 まだまだ女性トップが活躍しにくい社会ではあるけれど、ドイツのメルケル首相やアメリカ大統領候補のヒラリーさんに続くような“日本初の女性総理大臣”が早く出てくるといいですよね」