小中学生の子どもの教育費が家計を圧迫する……とお悩みの保護者に知ってほしいのが「就学援助制度」。『まちかど事務室』を主宰する村木栄一さん(63)は、同制度の利用を呼びかける。

 外国人保護者の場合、そもそも日本語で書かれたお知らせを読めなくて、制度そのものを知る機会がないということも起こりうる。

「川崎市や板橋区などは、複数の言語に訳した案内も用意しています。どの自治体でも、外国籍の方を含め、いろんな保護者がいらっしゃるということを前提に周知する必要があると思います」

 問題はほかにもある。

「同じ就学援助でも、自治体によって基準も違えば、支給するモノも金額も違うバラバラな制度」(村木さん)だけに、どの地域に住んでいるかによって同じように支援を必要としていても救われる子と救われない子が生じてしまう。

 村木さんは一例として「メガネの実費」を挙げる。東京都墨田区や横浜市などは支給している。

「視力の低い子が増えているので板橋区でも要求していますが、まだ認められていません。でも全体の予算からしたら大した額ではないですし、未来への投資と考えたらこんなに安いものはないですよ。

 メガネを得ることで、その子の学力がグンと上がるかもしれないし、そのことで、ほかのことにもやる気が出る可能性があるんですから」

 このように課題も多い就学援助制度だが、村木さんは裏を返せば、保護者や学校の教職員の関心が高まりさえすれば、劇的に改善できる余地がいくらでもあるということだと期待をこめる。

「日本の学校にいるすべての子をカバーできるという意味では優れた制度です。日本では、“保護者が教育費を払うのは当然”という自己責任の発想が根強いですが、子どもたちは、いずれこの社会の担い手になる。そう考えると、就学援助が広まることによる受益者は国民全体なんです」

 村木さんは現在、各地から要請を受け、『まちかど事務室』として就学援助や子どもの貧困について講演をしている。

 就学援助についての学校教職員向けの研修は、全国の自治体の約7割で行われていないというデータがある(湯田伸一著『知られざる就学援助 驚愕の市区町村格差』より)。

 次いで、学校事務職員を対象に行っている自治体などの約2割と続くが、厳密に言うと、どの教職員にも割り振られていない仕事であり、精通している人が地域の学校にいるとは限らないからこそ、村木さんにお呼びがかかるのだ。

 村木さんは「ご自身や身近で困っている方がいれば、『まちかど事務室』に相談してほしい」と言う。

「日本では頑張るのが美徳とされているので、どうしてもひとりで抱えこみがちですよね。でも、僕も大変なときは人に助けを求めますし、逆に、就学援助のことならいくらか経験を持っていますから、遠慮なく助けを求めてください」

取材・文/フリーライター・秋山千佳