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 今年3月、日本全国の『隠れメタボ』が推計914万人にものぼるという衝撃のデータを厚生労働省の研究班が発表。この研究では、メタボの人数と同じくらい、隠れメタボが存在しているという。

 しかも、隠れメタボもメタボと同じく、命を脅かす重大な病気のリスクが大きいというのだ。メタボは健康な人に比べて心臓病になるリスクが1.45倍高く、隠れメタボも1.23倍高いと発表している。

 でも、この聞き流せない隠れメタボとは、いったい何? 健康科学に詳しい『東京慈恵会医科大学』の和田高士教授に聞いてみた。

「隠れメタボとは、肥満でなくても、高血圧、高血糖、脂質異常などの異常が2項目以上存在する状態のことです」

 現在のメタボの診断基準は肥満が前提だが、なんと、やせていてもメタボにあたる可能性があるということだ。

「今まで内臓脂肪型の肥満に注目が集まっていましたが、それ以外にもメタボの原因があるということです」

 今回の研究は、1997年~2012年の15年間に『国立長寿医療研究センター』が実施した40歳~79歳の男女約4000人の研究調査データを解析。海外発のデータだと日本人は違うんじゃない? と思うが、今回の研究はバッチリ日本人が対象。

 しかも、対象年齢も週刊女性読者世代、自分と照らし合わせて考えてみよう。現在のメタボ健診の基準値は、腹囲が女性の場合90cm以上、男性の場合85cm以上かつ、血圧、血糖値、脂質の異常が2項目以上ある場合にメタボと診断。

 しかし、今回は腹囲が基準未満で体格指数(BMI)が25未満でも、高血圧、高血糖、脂質異常のうち、異常が2項目以上ある人が、男性が10%、女性が13.6%存在したという。

 メタボというと中年オヤジのイメージだが、隠れメタボは女性が男性の1.4倍。全国の人数を推計すると、男性が380万人、女性は534万人。女性はダイエットに敏感で食事に気を遣っているのに、男性よりも154万人も多いとは驚きだ。

 このまま対策を行わなければ、隠れメタボの患者数は10年後には1014万人、20年後には1042万人に増えるとも予想されている。研究班は来年3月までには、隠れメタボの診断基準や生活習慣の改善の指導法をまとめるというけど、1年も待ってられない。ということで、和田先生に対策も聞いてみた。

 そもそも、おデブの代名詞のように言われる『メタボ』だが、本当の意味は《内蔵肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患を招きやすい病態》(厚労省HPより)とのこと。命にかかわる重大な病気を引き起こすトリガーなのだ。

「メタボと関係が深いのは、肥満だけではなく、遺伝と加齢なども起因しています」

 遺伝の可能性が高い人というのは?

「親や兄弟姉妹に高血圧、高血糖、脂質異常症、動脈硬化症の人がいたら注意してください」

 心臓病や脳卒中にかかった人がいないかどうかもチェック。遺伝的な要因は、遺伝子検査でも知ることができるという。さらに、加齢にも注意という。

「40歳を過ぎると男女ともに血圧、空腹時血糖、中性脂肪の数値が上昇していきます」

 肥満は年齢とともに多いと思いきや、そうでもない。

「男性の肥満者は50歳以降減少、女性は横ばいになっています」

 加齢による高血圧の原因というのは、血管の弾力が失われることだとか。

「加齢に伴い、コレステロールが血管内腔にたまりやすくなり、血管を硬くします。血液を送るのに高い圧力が必要となり、高血圧を引き起こします」

 高血糖と加齢は、インスリンの分泌が問題になる。

「加齢によって、血糖値を下げるインスリンの分泌が少なくなります。食後に血糖代謝が悪くなり、血糖値が上昇傾向にあるのです」

 脂質異常は、加齢とともに身体活動量が減少し、脂質の消費が減るからだと考えられている。また、加齢に続く危険因子は、なんと“やせ”だとも。

「女性も男性も、死亡リスクは肥満よりもやせのほうが多いことをご存じですか?」

 厚労省の大規模調査によると、『BMI』が標準値の人と比べると、太っていてもやせていても死亡率は高い。しかも、肥満よりも“やせ”の値のほうが死亡率は高いのだ。

 BMIとは体格を表した指標で、「22」が標準値。この調査では標準の死亡率を1.0として肥満とやせを比較。女性の場合、肥満は1.37だったが、やせは1.61。男性も同様で、肥満は1.37、やせは1.78と、やせのほうが高くなっている。

「60歳以上で、やせ型の人は要注意です」

 やせていれば安心どころか、むしろ危険ということ。

 最近は「モデルBMI」「美容BMI」などといわれ、女性が美しい体形を目指すならBMI「19」というのが注目されているが、近年は低体重は不健康であることがわかり、イタリアではBMI「18」未満のモデルはファッションショーに出演禁止になっている。

 早く死にたくなければ「美容BMI」未満にならないように注意したほうがいい。ただ、これまでの「メタボ対策はダイエット」という常識が覆された今、これからは何をすればいいの?

「まずは健康診断を受けて、自分の数値を知ることから始めましょう。専業主婦など、職場の健康診断がない人は、自主的に健康診断を受けましょう」

 肥満でなくても高血圧、高血糖、脂質異常の2項目以上の異常が見つかったら、あなたも隠れメタボ。異常があれば、まずは医師の診断を受けることが先決だが、生活の中でもできる対策はあるという。

「対策のひとつは減塩。高血圧予防になります。禁煙も脂質異常の対策になります」